アイドルはどこに消えた!
私が昨日に提案したアイドルコンテスト、それが認定されて開催される事が決定したが、いつの間にか名称が変わり、Tシャツ水着コンテストになっていた。
投票されて選ばれた女の子達が水着に白いTシャツで舞台に上がり、優勝者には水がぶっかけられるという、スケベ丸出しの内容だ!
「何よこれ!どうして健康的な十代の祭典が、いかがわしいブルセラ風味になっているのよ!」
「ブルセラは無いだろう。どうしてそこに家畜の病気が出て来るんだ?」
私はすぐさまツッコミを入れて来た、しかし、この企画をエロいものに変えた本人、この企画の顧問となってもいる男を睨んだ。
「ショーン!ブルセラは、ええと、私が勝手に作った造語よ!ええ、そう、十代の子供の制服で良くある形、ブレザーやセーラー服の短縮形。そんな年齢の女の子が大好きないかがわしい奴らをブルセラ親父と呼ぶのよ!」
私の作った造語どころか、前世の記憶でのブルセラについての知識を披露しただけだが(ほんとのところはブルマーとセーラ服だけどね、自重!)、無いはずの言葉を使った事はスルーして貰えただろうか。
あ、私こそ完全にスルーされていた。
私のブルセラ親父の言葉で胸を押さえてしまった変態はどうでもいいが、アストルフォとダレンが完全に私を無視しているのだ。
もちろんのこと、アストルフォが私の話を聞く事などめったにないので、こんなことに傷つく必要は無いはずなのに、ダレンと仲が良い素振りを見せつけられる事にはイラっときたどころではない。
アストルフォはさも教師らしい振る舞いで、企画者の私ではなく、実行委員となったダレンに企画書を手渡しているではないか!
アドバイス、なあんて、教師らしい行為も一緒に、だ。
「君の立案は素晴らしいね。時間がない上でよくやった。これならば、月曜日には一斉に投票を始めて、決戦日の十四日には花火を打ち上げられるだろう。」
「ありがとうございます。で、ステージに呼ぶバンドですが、時間もなく演者を探すことも出来ないのでレコードになります。その場合のアンプとか機材が、」
「ああ、ダンパでの機材は俺が手配したんだった。いいよ、そこは俺がやっとく。君は生徒の盛り上げを頑張って。」
「も~う!駄目よ!駄目!女の子を性の対象にしている催しになってる!私がやりたかったのは、歌ったり踊ったりで、自分の出来る事をアピールして、顔だけじゃなくて全体で素敵って思われるコンテストよ!せっかく楽しいお祭りをするんだったらね、私はエルヴァイラとの戦いだけど、他の子には楽しんでもらいたい。ダンスが得意な子には、全校生徒の前で思いっ切り踊って貰いたいって、そんな気持ちなのよ!」
すると、ダレンが疲れたような大きなため息を吐いた。
「十日しかない中で、どうやってそんな中身で実行するの?」
「分かっているわよ!絵に描いた餅だって。でも、純粋にいやなの!だって考えても見て?私とエルヴァイラが戦い合うステージ。そこには私とエルヴァイラがTシャツエッチ姿でキャットファイトするって絵になるじゃない!そんなのが見たいの?あなたは本当は私の水着姿が見たいの?」
ハハハハっとダレンが大きく笑い声をあげた。
からっとした年相応のものだ。
それで、私に片目を瞑って見せたのだ。
「どうしたの?」
「いや。俺は君の水着姿は見たいよ?ハルトの言っていた、あのお婆ちゃんしか着ない水着姿を一度は見てみたい。」
アストルフォはダレンの言葉に同調して笑い出し、それを着るのがノルマだ、とまで私に言って見せた。
「もう!誰も私の話も聞かないで!揶揄ってばっかり!」
「いや、僕も君の水着姿は普通の方が良いと思っているよ!」
私達は一斉にバーンズワースを見返し、アストルフォもダレンも私を仲間外れにしたくせに、今は私と一緒にバーンズワースを無視してくれた。
私の水着だったら競泳水着が良いと、いつの間に買っていたのか、濃紺のワンピース水着を両手で持ってぴらぴらさせている変態なのだ。
誰もが突っ込みたく無いのはわかる。
「で、アリス。これを見といて。参加者リストだけどね、自薦他薦も受けいれたらこんな感じになった。」
私はダレンから紙を受け取り、それに目を通したら、なんとまあ、リストになぜかハルト君がいたのである。
「どうして!」
「昨日さ、ナースの格好でぶらぶら寮に帰って来たんだよ。面白いからその姿で出演しろって揶揄ったらね、いいよって。あいつ変なノリはあるよね。」
「うそ!」
私は無視していたバーンズワースに振り返っていた。
そして、彼の手だって握って見せたのだ。
「お兄ちゃん!絶対に絶対、カメラを持ってきてね!ハルト君のナース姿を撮ってくれたら、ぜったいにぜったい、ほっぺにキスする!」
バーンズワースは喜んで請け負ってくれたが、ダレンから変態兄妹と罵られるとは思ってもみなかった。
あなたがハルトを誘ったくせに!




