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前世がモブなら転生しようとモブにしかなりませんよね?  作者: 蔵前
第二十一章  サイコパスはモブを語る
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夜になればみんなで報連相

「はい、うさぎちゃん。お兄さん達に自由研究の経過発表をお願いします。」


 私に取りつけた魔法インカムで全部聞いていただろ!と、私は心の中でアストルフォを罵倒した後、私に興味津々の目を向けたダレンとバーンズワースの為に、私が考えるエルヴァイラのサイコキネシスについて語った。

 あいつは自分がイメージしたとおりの事が起きるように、自分の近くにいる魔法使いに能力を、あるいは暴力を使わせる事が出来る怖い奴なんだよ、と。


「え、ちょっと待って。俺が君を蹴った?うそ!」


「本当よ。あの紺色の呪いは魔法使い、というか、人を無意識に使役できるっていう呪いなのかも。ほら、一般人は集団催眠みたいになっちゃっていたじゃない?だから、ええと。」


「思い込みで病気はよくあるし、呪いをかけられたって思い込んで心臓が止まってしまう話や鬱になっての自殺はよくあるね。うさぎの言う事が事実ならば、エルヴァイラの能力はバーンズワースに近いと言えるな。君はどう思う?」


「そうだね。感情感応力か。だとしたら、属性は電気か。」


「え、水とか風とか言っておいて、急に電気?電気属性って何?」


 そこで男三人は顔を見合わせ、一斉に私を見返して来た。

 その顔付には、説明するのが面倒だな、という共通のものが浮かんでいた。


「教えてよ!私を勝たせたいのでしょう!」


「いや。だってさ、ミュゼ。君は魔法属性についてバーンズワースにしっかり教えて貰っていたはずだよね。」


「もももももちろんよ!でも、その属性って、光と水と風と炎と土だけだった。電気なんて初耳でした!」


 そして、私を情報不足にした教官を見返せば、彼はメモ帳に何かの絵をさらさらと書き込んでいた。

 私は首を伸ばして覗き見ると、彼はさっと手で隠すじゃないか。


「ちょっと!教えるために書いているんなら見せてよ!」


 思わず絵を隠した左手とその肩を掴んでしまい、この隠す、という行為こそバーンズワースの罠だったと気が付いた。

 私に縋られたバーンズワースは、それこそものすっごく嬉しそうな顔で、美形が台無しになるようなスケベ笑いをニマニマと顔に浮かべたのである。


 だがもう面倒なので良いと流した。


 いや、奴の距離感のない私への思慕を利用してやろうじゃないか、という心持となっていた。

 私はドラマやアニメや映画などで出現する、そんな妹はいないし逆にウザいだろうという妹像、下唇を突き出して、見開いた目は上目遣いで、という表情を作ってバーンズワースに迫ってみたのである。


「お兄ちゃん?見せて?それでアリスにぃ、あのぉ、いろいろとぉ、教えてほしいの。いや、かなぁ?」


 ダレンからは、お前には裏切られたぜ、なんて小声の罵倒も聞こえたが、私なんかあのエルヴァイラに勝たねば未来が無い死刑囚なんだぞ!

 そして私の決死の行為が実を結んだようで、バーンズワースの肩と左手を掴んでいたはずの私の両手がバーンズワースの両手によって包まれており、物凄くキラキラした瞳のバーンズワースが私を真っ直ぐ見つめていた。


「何だって僕が教えよう。お兄ちゃんとして、妹に何だって教えてあげる!僕の事を大好きだって言ってくれたら!」


 好きって言ってあげるのは論外だし、実際にそこまでして彼に教えをお願いしたとして、彼のこの変態的勢いでは、魔法属性以外のろくでもないことを身に教えられそうで怖い。

 だがしかし、電気属性なるものを知らなければエルヴァイラと戦えない。


 ええと、じゃあ、バーンズワースの言葉尻だけを押さえて、私の方こそが彼の上手に立つという戦術はどうだろう?


「じゃあ、大好きと言って欲しければ早く教えて。それから、私に大好きと言わせるぐらいに私が大好きならば、明日の朝ご飯が手抜きになってポリッジだけになっても喜んでくれるのよね。」


「俺が教えてあげるから!ミュゼ!ポリッジは嫌だあああ!」


 ダレンは叫ぶや私の肩を乱暴に引き、私をバーンズワースから引き剥がした。

 バーンズワースこそ脅したかった言葉だったのに、ダレンにこそ直撃して脅えさせてしまったらしい。

 しかし、私の右手は再びバーンズワースに勢いよく引かれて、ダレン寄りの私の身体は再びバーンズワース寄りとなった。


「いや、僕が教えるんだから!だから、アリス!ポリッジは止めてくれ!僕の事を好きって言わなくてもいいからああああ!」


 私はこの世界で、いや、アルカディア連邦合衆国人としていつも思うのだが、どうして大昔から伝えられてきた家庭料理であるはずのポリッジを好きだと言う人がいないのであろうか。


 確かに、私も大嫌いだ。


 味は甘いミルク味で悪くはない。

 しかし食感と見た目が吐いたばかりのゲロにしか思えないのだ。

 コンソメスープなどで煮た場合、オートミールもさらっとして美味しいのに、牛乳で煮るとどうしてあんなぐちょぐちょべとべとになるのだろう。


「これが電気だよ。」


「ショーン!かえって意味が分からなくなるから、あなたが口を挟むのは止めて!」


 アストルフォは私の言い返しにいつものように笑顔になったが、両手の人差し指だけを立てて、わかりやすく私の両脇の煩い男達を指し示した。

 私は何だという風に振り向いて、そこで、あら、と言うしかない。

 ダレンとバーンズワースは私をアストルフォから引き離したいようで、二人同時に私の身体に手を掛けようとしていたが、その二人のポーズが鏡に映したものみたいに左右対称に見えるのである。


「二人の脳の電気信号が同調しているんだよ。バーンズワースの能力のせいでね。」

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