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前世がモブなら転生しようとモブにしかなりませんよね?  作者: 蔵前
第二十章 いばらの姫にモブは挑む
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男の子ってちょっと浅はか

 男の子は頭と感情と体にそれぞれ意思があって、大人になり切れていない子は体からの意思が一番強いという、ちぐはぐな内面をもっているのだと聞いた事がある。

 あと、女の子に対して好きと嫌いしかなくて、その間が無いということも。


 誰からだったかしら。

 ああ、きっとセリーヌね、彼女は立派な息子さんをお持ちだもの。


 さて、あたしがこんな諸説を思い出していたのは、クラスで一番静かで紳士的だと思っていたダレンが、今、まさに、そんな体の意思に負けちゃった男の子そのものの振る舞いをしたからよ。

 どう見てもあたしの代わりにはなり得ない女、白髪頭のたれ目のお化けを、自分の恋人宣言しちゃったの。


「ダレン。失恋でおかしくなってしまった気持ちはわかるわ。でもねえ、あなたはもっと素敵な人を見つけられるはずよ?」


 そこであたしは思いっきり髪をかき上げて、自慢の白い襟首を見せつけた。

 ほら、細くて白くて美しい首筋よ。

 その白髪の首はきっと太くてごわごわな肌なはずよ?


「ねえ、ダレン。あたしはあなたに相談があるの。その子には教室に帰って貰ってちょうだい。今すぐあたしは冷静になったあなたと話し合いたいの。」


 ダレンはあたしににっこりと微笑んだ。

 あからさま過ぎたけれど、あたしと二人きりになれるってチャンスを匂わせた事で、ダレンはきっとあたしの首筋にキスが出来ると期待したに違いない。


 まあ!本当にキスされたらどうしましょう。

 ハルトにだって首筋なんかキスさせていないのに!


 そう、そうよ、あの偽物だって、あたしにキスなんかしなかった。

 でも、あたしはあいつをハルトだと思ってかなり油断していたから、何度もそんな雰囲気にもなったのに、どうして何も起こらなかったのだろう。

 ……もしかして、あたしって近寄りがたい高貴なオーラが強いってこと?


 そ、そうよね、ダレンやハルトにはあたしこそ高嶺の花なんだから!

 それで、はっ!あの男こそあたしが高貴な女性だと知って、まあ!もしかしたらあたしに恋をしてしまったかもしれないわね!

 ああ!だからこそハルトを殺して成り代わろうとしている?

 ああ、どうしてあたしはそんなことに気が付かなかったんだろう!


 これでわかったわ!

 ハルトがあたしに助けを求めずに一人で対処しようと去った理由が!


「あたしって本当に罪な女!」


「うぉ!」


 ダレンはあたしの大声にかなり驚いてしまったようだ。

 あたしは意外に素朴な一面のあるダレンの姿に驚くとともに、あたしが今まで見て来たダレンは、あたしに良く見せようと背伸びをしていた姿でもあったのだと気が付いてしまっていた。

 ああ、心のどこかがほんのりと温かくなっていく。


 こんなに一途で純粋な男の子の彼が、手ごろな女との恋で心も体も薄汚れてしまったとしたら、エルヴァイラ、それが自分の責任だとしたら、あなたは耐えられて?

 あたしはすっと右手を伸ばし、ダレンの左胸に手を当てようとした。


「にゃにをするにょう↑」


 横から邪魔してきた者により、むにゅんと触りたくもないその女の頬に手がめり込むこととなった。


「何って、あなたこそ!あたしの手にあなたの涎がついたらどうなさるの?」


「怪我をしたら唾でもつけろって言うじゃない?あなたの頭、ろくな回転をしていないみたいじゃ無いの!自分の額にでもその唾を付けたらいかが?少しは周りが見えて賢くなるかもよ!」


「みゅっ!!!アリスさん、アリス!ちょ、ちょっと?」


 まあ!

 あたしに失礼な物言いをしてきた女にあたしが対処する前に、ダレンこそが無礼な女を揺するなんて折檻をし始めたわ。

 もう、ダレンったら、守りたがり屋さん!


 そして二度三度強く体を揺らされた女は、可哀想に自分を口説いた男に自分への愛が無いと気が付いたのか、は!、という顔をした。

 それから、ええ、これはわかるわ。

 自分を揺らしていたダレンを強く突き飛ばしたのである。


「あなたがぁ!↑あたしをエルヴァイラの盾にするからぁ!↑」


「まあ、ダレンのせいにするおつもり?あなたこそ、あたしとダレンの邪魔をしようと割り込んでいらっしゃったのじゃないの!」


「だ、だからぁ!↑あ、あたしが割り込んだわけじゃないわよ。じゃなかった、よ、よぉ↑こ、このダレンがぁ↑あたしを自分の盾にぃ↑、つかっむぎゅうう。」


 白髪女は煩い口をダレンの腕で封じられた。

 よくやったわ、ダレン。


「あ、アリス、ごめん。痛々しくて見ていられないよ。で、エルヴァイラ、相談だったらさ、あの新任の体育教師はどうかな?アリスはさあ、お兄ちゃんのあの先生にすっごく冷たいの。君が妹キャラで慰めてやったら?で、シスコンなお兄ちゃんに殺されそうな俺も助かると。ああ、君と話が出来て俺も良かったよ。」


 ダレンは一気にあたしに捲し立ててくると、白髪女に片腕をまわしたそのままあたしの前を通り過ぎようとした。


「おい、どうして俺の腕を掴んだ?」


「あたしは相談があるって言ったでしょう。それから、ええ、あなたの気持ちはよくわかった。だから、あなたの為に、そのアリスさんとも話したい。いいでしょう?あたしがお願いしているのよ?」


 ダレンは立ち止まった。

 やっぱりあなたはあたしが大好きだから、あたしのお願いは聞いてくれるのね。

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