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前世がモブなら転生しようとモブにしかなりませんよね?  作者: 蔵前
第二十章 いばらの姫にモブは挑む
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図書館は静かに!

 私は酷い泣き顔の上に、屋上の熱気に当てられていたのでボロボロだった。

 なので、きっとダレンは私が身づくろいが出来る場所、という紳士的な考えで図書館に私を連れ込んだのであろう。


 しかし、悪いことは重なるもので、私はダレンの隠れ家的スペースに怨霊体となり得る存在を見つけてしまった。

 自分が抱えている本を棚に置いたり引き出したり、ダレンの秘密基地の囲いとなる棚の右から左と、ふらふらと動き回っている女性の霊がいたのである。

 その霊は、幽霊で頬を染めるとはおかしな表現だが、そう表現するしかない表情を作って恥ずかしそうにチラチラとダレンを伺ってもいる。


 ダレンが彼の秘密基地に一歩踏み入れた途端に出現したという事も踏まえると、彼はもしかして年上女性キラーなのだろうか。

 ほら、エリザ先生のお気に入りでもあったのだし、ねえ。

 霊の出現にどうしようかと迷っていると、涙も乾いてしまった私の背中を、ダレンがトンと軽く押してきた。


「椅子に座ろうか。」


「ああ、そうね。でね、目の前の棚に中年女性の、う~ん司書さんかな、の霊が見えるの。わかる?」


 ダレンは私が指さした場所を見もせずに、私を振り向かせて私の目を覗き込んで来ただけだった。


「ダレン?」


「おいコラ待てよ。お前、ここが俺の安息の地だって知ってのその所業か?」


「安息の地って。」


 私はどうしようかと霊のいる場所に振り返った。

 すると、先ほどには見えなかったものが見えてしまった。


「あなた。専門書の間に雑誌やら漫画やらお菓子まで置いているわね。だから司書さん幽霊が、どうしようって、棚を行ったり来たりとうろうろしているんじゃないの?」


「うろうろ?うろうろ?」


「まあ、いいわ。とりあえず固定化だけして戦闘に使えるか後で調べる。」


 ダレンを振り払い金の箒を幽霊に対して翳そうとしたのだが、私は振り払ったはずのダレンに羽交い絞めされた。


「やめて、ここにお化け固定すんのやめて。すっごい止めて。」


「ええ~。ここにぃ↑、あたしのぉ↑、必要なものがいたんですぅ↑。」 


 私は本気でお化けを嫌がっているダレンが少しおかしくて、少しだけ揶揄ってもいたのだが、そんな意地悪なことをするから私の運っていつも悪いのだろう。


「ダレンってば!何をなさっているの!」


 会いたくなかった、黒髪金目の美女の出現である。

 今日も彼女は今日も派手な衣装姿であった。

 白地のワンピースは、襟や裾、そして襟元にパイピングしてあるという舞台衣装みたいなもので、そこに漆黒の特待生ジャケットを羽織っているので、どこのゲーム原作のミュージカルなんだと問い詰めたいくらいだ。

 足元だってちゃんとしている。

 靴ベルトをふくらはぎに巻いていって膝でリボン結びをするという仕様の、真っ黒でゴシックな厚底靴なのである。


 それに引きかえ、私は適当だ。

 支給品のシャツにスカートである。


 今度のスカートは私が煩く騒いでやったので膝丈だけどね!

 このスカート丈の攻防に関しては、私がアストルフォにあげることができた唯一の勝ち星なので、このスカートはアストルフォとおさらばした後も大事にするかもしれない。

 そのくらい大事なものになっている。


「お前こそ何をしてんの?授業でしょう。ほら、教室に帰った。」


 あ、そうだ、今対峙すべきはエルヴァイラだった。

 ダレンは幼稚園児にするように手の平をプラプラさせてエルヴァイラを追い払おうとしていたが、以前に似たようなことをハルトにされても帰らなかった鋼の精神を持つ彼女である。

 ダレンの行為にむっとして帰るどころか、このいたずらっ子さん、なんていう風に、お母さん風な言葉をダレンに返して来たのである。


「まああ、あなたこそさぼるつもりなのに?あたしは用事があって来たのよ?」


「俺は無いから教室に戻っていいよ。」


「もう!あなたって冗談ばっかり。わかっているわ、ええ、わかっている。あなたがあたしと二人きりになりたいって事。でも、空気を読めない人がいるから、まずあたしを追い払って見せて、その子に教室に戻るんだよって教えてあげたいって事よね。」


 ダレンはエルヴァイラの物言いに目を白黒させて私にヘルプの視線を送って来たが、私こそアストルフォにエルヴァイラを刺激するなと注意されている。

 頭を軽く掻くと、金の箒を胸に抱き、ちょっとおどおどした感じにしてダレンとエルヴァイラに頭を下げた。


「ええと↑、あたしもぉ↑授業出ないとお兄ちゃんうるさいしぃ↑。」


「あ、ちくしょうコノヤロウ、誰が帰すか。」


 私は一歩も動けなくなった。

 本当の意味で空気が読めない女から逃げたい男が、読んで欲しい私の空気を読むことを放棄して私を後ろから拘束しやがったのだ。


「見たか!エルヴァイラ!俺達は、出会ったその日から恋に落ちたカップルだ。頼むから邪魔をしないでくれるかな!」

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