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前世がモブなら転生しようとモブにしかなりませんよね?  作者: 蔵前
第二十章 いばらの姫にモブは挑む
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青い坊やは余計な事しか提案しない

 学校に登校しなければいけないけれど、昨夜の作戦会議で発覚した事によって、私は登校拒否を実行したい気持ちだった。


「あのメモはあなたに渡したものよ?ハルトが授業をさぼって会う機会が無いなら、私達は安全だって思ったから、だから、内緒にしてって。」


「ごめん。でも俺はさ、ハルトの暴走を抑えるにはね、君が生きているって事をあいつに教えるべきだと思ったんだよ。」


「ずっとハルトが傷ついているままよりも、ええ、伝えてくれた方が彼が楽になるなら、ええ、だったら構わないわ。構うのは、私がハルトと密会したそこで、この悪魔な軍人コンビに殺される可能性が高いって事よ!」


 私はダイニングテーブルの真向かいに並ぶ二人組を、朝食の席だろうが、無作法だろうが思いっきり指さした。

 ダレンは私が怒っている意味をようやく理解してゲゲゲと呟いたが、私に指を差された当の二人は私達なんか相手にしないで黙々と朝食を食べている。


 どうして私だけが朝の六時起きでみんなの朝食を作らなければいけないの?

 そんな怒りもついでに加算しての憤りの行動なのに無視なの?


「ねえ、ミュゼ。昨日の夕飯は最高だったけどさ、ベーコンの焼方は下手だよね。ちょっと焦がし過ぎだよ。」


 私は隣に座る、実は私よりも一つ年上だった男に振り返った。

 寝起きで彼は外見こそ溶けたチョコレートみたいな魅力を増していたが、寝ても覚めても行動全部がデリカシーの欠片も無い小学生並みとはどういうことだ!


「そのくらい黙って食べなさいな!」


「いや、でもこの焦げは酷いって。見てよ。」


 ダレンがフォークで持ち上げたベーコンは確かに片面が真っ黒で、そこは私が彼に謝るべきだろうが、フラストレーションが溜まり過ぎた私は逆切れというものをしてしまっていた。


「私こそ見せましょうか?私の背中。もう真っ黒黒の火傷の痕があるのよ!」


「あ、見せて!」


 ダレンは私の方へとにゅっと右腕を伸ばし、私は彼にTシャツの裾を掴まれたと、彼の手をバシバシと叩いた。


「やめて、このスケベ!」


「いいじゃ無いの!俺の傷跡だって見ただろう!」


「あなたのは手でしょう!私は背中よ!乙女の背中を見たいの!」


「君の背中は海辺でしっかり見ているよ。お尻の形だって知っている。」


「ええ!」


 私はダレンの切り返しに吃驚したまま両腕で自分を抱きかかえたが、ダレンはそれ幸いという風に私のシャツを捲り上げ、私はその反動で横に倒れた。


「うわ、危ない!」


「危なくしているのはあなたじゃ無いのぉ!」


 椅子から転げ落ちる私を助けてくれたのは、向かいに座っていたはずのバーンズワースであり、彼は嬉しそうに私の身体に腕をまわして椅子に座らせ直した。


「ありがとう。でも、すぐに手を放して!」


「お兄ちゃんなのに。」


「世の妹は思春期を迎えればお兄ちゃんが嫌いよ!さあ、離れて!」


 バーンズワースは見るからに肩を落とし、嫌味みたいにすごすごという風に席に戻っていった。


「すごいな。もしかして、ミュゼはハルトにもそんな感じ?」


 私は自分をこんな目に遭わせたハルトの親友を睨みつけた。


「ハルトはこんな酷い事なんかしない!」


「嘘だあ。あいつは子供っぽい所があるじゃない。」


「子供っぽくても、人の嫌がることはしない!女の子のシャツを捲るなんて、そんないやらしい事なんてしない!」


 あ、ダレンも見るからにシオシオと落ち込んだ風になり、静かに朝食の皿に向かい始めた。

 もう!最初からそうすればいいのよ?


「じゃ、今日のスケジュールを確認し合おうか?」


 アストルフォの静かな声に、私はハッとして固まった。

 体にしみ込まされた習慣って怖いわ、いえ、調教されたその結果かしら?


「ま、待って!私まだご飯食べていない!あと五分待って!」


「え、食べながら聞けばいいじゃん?」


「ば、ばか、ダレン!そんな失礼な事をしたら、この男に殺されるのよ!あなたはお仲間で無事安泰かもしれないけどね、私は一寸先は闇なぎりぎりの綱渡りして生き延びてきたの!」


 はははっははははは。

 わあ!アストルフォが楽しそうに笑った。

 ああ、絶対に意地悪される。

 凄い意地悪を思いついた笑いだ!これは!


 私がドキドキする中、アストルフォは席を立ち、なんと自分の皿を流しに運んで行ったじゃないか。

 それから、なんてこと!コーヒーメーカーを作動させ始めたのである。


「ミュゼ、食べちゃいなさい。朝のコーヒーを飲みながら話し合おう。」


「うっ。」


「どうした、ミュゼ?」


「やばい。アストルフォが優しすぎる。殺される。後できっと虐められる。」


 ようやくダレンは私の身の上に気が付いたのか、健康そうな肌色を血の気の失ったものに変えて、心から心配しているという風に眉根を寄せた。


「ごめん。色々ごめん。俺が今日からミュゼを守るから。」


「はひ?」


「ハルトにはミュゼがまた隠されたって言っておく。俺はミュゼの居場所を探るためにアダムの妹を誑し込んでいるって事にすればいいんだ。いいかな、俺と君は四六時中一緒に行動しよう。ハルトが来たら俺が追っ払う。それでいいね?」


 いや、良くないよ。

 私はハルトにこそ触れ合いたいもの。

 どうしてダレンはややこしくなることばかりしか言わないのだろうか。

 ほら、ダレンの提案を聞いて、アストルフォが嬉しそうな笑い声を台所中に響かせているではないか!

 バーンズワースはって、なんだ!その仏頂面は!


「お兄さんは妹が異性と交遊するのは許さない!」


「あなたこそ何を頭をとっ散らかしているかな!私はスーハーバー校の敷地内のいたるところに、エルヴァイラとの戦いの為の怨霊体を仕掛けていくって仕事があったでしょうよ!あなた方は私に一瞬で敗戦して死んでほしいの?」


「うわ、頑張り屋さんだ~。」


 アストルフォの間抜けな褒め言葉に、ああ、全員して私に拍手して来るなんて、私を馬鹿にしているわ!

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