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前世がモブなら転生しようとモブにしかなりませんよね?  作者: 蔵前
第三部 第十八章 モブも箒に乗って
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魔女には箒

「ちゃららら~ん。汝、一か月半もの修行によく耐えた。ここに汝の従順さと何のスキルアップもしなかった不思議性を讃え、金の錫杖風な魔女の箒を与えよう。」


 一週間後にはこの国の義務教育の学校が全て開校する。

 つまり、夏休みが終わるってことだ。

 私は編入生としてスーハーバーの特待生クラスに潜り込み、そこでエルヴァイラと戦う日のために怨霊体をこそこそと学校中に仕掛けなければいけない。


 ウンザリしかしない行為だ。


 さて、戦う予定のくせに身体能力が全く上がらなかった私の為にと、アストルフォが軍部で研究中の武器を持ってきた。

 金の錫杖風魔女の箒とふざけながら彼は私にその武器を手渡したが、確かにそれの見た目は金の錫杖的な魔女の箒だった。

 金色っぽい鈍い光り方をするのは、その武器が金属製であるからだ。

 五十センチほどの長さの柄の先に幼児の頭部サイズほどのオブジェが付いており、そのオブジェは何枚ものうろこ状の金属が重なり合ってアーティチョークがカリフラワーの様な変な形となっている。


 確かに、全体的に見れば小型の箒にこそ見えなくはない?


「これは何?」


「魔法波及び魔法弾発射装置。柄の頭部との付け根部分に電池を収納できそうな蓋があるでしょう。そこに普通電池じゃ無くてね、軍部化学部が開発した魔法濃縮電池を入れるんだ。」


「何、その魔法濃縮電池って?」


「魔法使いがいる国ならば、世界中の国で設置されている自動魔法装置。あれは何だと思っているの?あれは死んだ魔法使いのよすがだよ。エネルギーだけが残っちゃった悲しいポイント。」


 私はスーハーバーのバス停にあった自動魔法装置を思い出していた。

 何の気にもしていないどころか、いつもプロペラが回っているという、暑いスーハーバーには最適な扇風機だとしか認識していなかった。


「スーハーバーのバス停のやつも……。」


「そう。怨霊体と違ってね、能力だけがそこに残っちゃった場合のエコで皆に優しい処理方法。適当な機械を設置して、残存する魔法エネルギーで動かすって奴。それでこの魔法電池はね、魔法が残存する仕組みを解明した方々が応用して作ったものだ。この魔法電池入りの魔法の箒を持った君は、それなりな攻撃魔法を持った魔女になれるんだよ。試してみようか?」


「え?」


「ちょっと、ショーン。それって開発中止のやつじゃ無かったか!」


「え!」


 バーンズワースがアストルフォにストップをかけたどころか、私をアストルフォから奪うようにして自分に引き寄せた。


「ちょっと待てよ!うさぎの両手は大事にしてもらわなければ!」


「ええ!両手を大事にって!ねえ、アストルフォ!これって危険なの!」


 私だってバーンズワースのこの興奮ぶりに戦々恐々だ!

 この私が持たされた武器らしきものは、私の手に大怪我をさせる可能性のある危険なものなの?


「君はご飯だけなのか!君は飯でこのうさぎに取り込まれてしまったのか!」


「うさぎのご飯は下手な料理屋よりも美味しいんだ!ついでに言わせてもらえば、今晩のメニューはエビのホワイトソースのグラタンだ!」


 夏休みで寮のスタッフが休暇を取っているからと、バーンズワースは私に三度の食事を作らせているのである。

 私もこんな奴隷奉公にウンザリなので、栄養価も材料費も度外視で自分の食べたいものだけ作っていたら、それがバーンズワースに好評を期しているというのは皮肉でしかない。

 全く!愛するハルトには、私は何にも手料理を作ってあげられないのに!


「うさぎの手が弾け跳んだら、俺が飯を作るから大丈夫だ。」


「ええー!手が弾ける実験なんかやだー!」


「今夜は良くても明日からの僕の飯が無くなるだろ!」


 アストルフォは私の叫び声もバーンズワースの怒鳴り声にも、小馬鹿にしたように鼻を鳴らしただけだった。

 それどころか、彼は何事もなかったようにして私の手首をぐっと掴んでバーンズワースの懐から私を自分の方へと引き寄せた。


 嫌だと叫んだところで、アストルフォが私を放してくれるはずなど無い。

 彼に捕まえられた私は、彼によって引き摺られるようにして連れていかれた。

 毎日毎日、タイムに全くの変動が見られなくとも、その変動が見られないことを自由研究にしているらしきバーンズワースによって、しつこいくらいに走り込まされている私の大嫌いなグラウンドだ。


 アストルフォが来るからって、今日は走り込みを免除されたっていうのに!

 こんな金属棒を持って走れと言うの?


 だが、グラウンドに出てみると、そこが昨日までの様相と変わっていたのだ。

 大きな目隠し壁がグラウンドをぐるっと囲むようにして設置され、その一角には目隠し壁で近所の人の目を隠さねばならないもの、射撃訓練場にあるだろう人型の電動的が数機立っていたのである。


「今朝、というか今日はグラウンドに出なくていいって、この工事があったからだったのね。」


「そうそう。君の為に作ったんだ。さあ、ご近所の目なんか気にしないで、思いっきり的を撃破してみようか。うさぎちゃん。」


 グラウンドの中心に立たされた私は、悪魔なアストルフォに囁かれた。

 この変な機械で?どうやって?

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