表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
前世がモブなら転生しようとモブにしかなりませんよね?  作者: 蔵前
第十七章 モブよ、失敗したなら言えばいい、これが運命、と
110/208

気さくな看守

 私はクローバータウン校のレイナ・シェフィールドと名乗っている。

 クローバータウン校はアストルフォの言い分では、開始してすぐに全員がギブアップしたという事だったが、事実は全く違っていた。


「いや~、君が替え玉になってくれて助かったよ。これさ、生徒を一人も出場させていないと僕がペナルティになっちゃうからね。」


 昨日から私の担当で看守ともなっている男は、サファイヤみたいなダークブルーの瞳を輝かせて嘘くさい笑顔を私に向けた。


「僕の可愛い教え子達は、ここに連れて来れなかったからね。」


 ここで、生徒想いの優しい先生だこと、なんて彼に思い込むのは禁止だろう。

 奴がアストルフォの同僚で親しいお友達であるならば、能力者の高校生が社会に害をなすとジャッジすれば処分出来るお方であるのだ。


――うさぎちゃん、アダムを怒らせたら駄目だよ。彼は俺よりも人間味が薄いからさ、ハハハ、怒らせたら首ちょんぱ、ぐらいわけないかもよ。


 アストルフォの言葉が脳裏に蘇った私は、作り笑いを浮かべた顔を、アダム・バーンズワース様に、敢えて、びくびくしながら、向けた。


「どうしたの?さあ、君の勝利の為に罠の構築について話し合おうか。開始時間までまだあるから、君の希望の罠を追加することができるよ。」


 バーンズワースは気さくそうな笑顔のまま軽く頭を振り、それからさあやるぞ、という風に肩ぐらいある髪を両手で後ろに持って行って縛り始めた。

 彼のつやつや輝くアンティックゴールドの髪は手入れがされている見事なものだが、ポニーテールに結いあげられても彼が女々しく見えることは一切ない。

 女々しいどころか侍みたいに見えるのだ。


 それは、彼が軍人らしい筋肉質の体であるからだろう。

 しかし、その美丈夫の首から下は単なるおっさんだ。

 クローバータウン校で体育教師をしていると言っている通り、ポロシャツとジャージズボン、ついでに足元は便所サンダル?、という適当な格好なのである。


 美形の無駄遣い、は、この男の為にある言葉だろう。

 それとも、くだけた格好でも、いつもどこかがスタイリッシュ(笑)に決めることができるアストルフォが、ナルシストで自意識過剰すぎるのであろうか。


 さて、一見も二見でも、子殺しの怖い男どころか子供が心を開きそうな運動のお兄さんにしか見えない男は、私の目の前に刑務所内の地図を開いて見せた。


「地下室は君の構築した順路で正解だと思う。ただし、君は華々しく戦果をあげすぎた。よって、君に脅えている子供達が地下に君を追ってくるという事は無いからね、君が獲物を追う立場となった。そこで、獲物が多い場所として、人気がある監獄舎にしようか?」


「監獄舎が人気があるの?」


 私は見取り図を見て純粋に驚きの声をあげていた。

 私達のバトルフィールドとなる刑務所は、体育館のような建物に独居房を三段積み重ねている監獄舎と、そこに三階建ての学校みたいな造りの建物がくっつけられている、という作りなのだ。


 学校みたいな建物の方は、地下二階がボイラーや倉庫に死体安置所など一人では生きたくない場所であり、地下一階は、独居房や囚人を監獄舎に迎えるための検査室や面会室などがある。

 地上部分は一階の食堂やシャワールーム等で説明できるように、囚人達の生活のアメニティ部分を担っている。


 それで私は、戦いたくない子供達が逃げ込む先と言えば、建物三階の図書館やスタディルームかと思っていたのだが、バーンズワースは監視室を中心に三階建ての独居房が円形に展開しているだけの監獄舎だと指さすのだ。


「監獄は監視室から監獄内を一望できるパノプティコン式だ。監視室にいるのが一番安全に思えるでしょう?」


「あるいは、ここに怨霊体の仕掛けを一つも感じないからなのか。」


「ふふ。あるのにねえ。九つも!眠っているだけで、あるのにねえ。君が活性化させたら楽しそうだねえ。」


 私は気さくそうに演じる男の真の姿を見た様な気がしたが、当のバーンズワースは私にウィンクして見せた。


「ローンリバー校の女の子達がね、スーハーバー校のイケメン狙いでふらふらしているって知っている。君はスーハーバーの子達を傷つけたくないんでしょう?あの男の子達は女の子に手をあげられそうもない紳士ばっかりだし、ねえ、君がローンリバーを排除してあげようか?」


 ハルトの目の前で?

 私に人でなしの行為をしろと?

 これは食堂で私が勝手に目立つ行為をして、尚且つ、ハルト達と繋ぎを取ろうとした行為に対してのペナルティなのだろうか。


「せっかくだ。彼らと共闘しちゃいなさい。」


 バーンズワースは私に片目を瞑って見せたが、その何でも知っているよの行為がとても怖い。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ