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僕の命は彼女の心にかかっている  作者: 牧野原 親切
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ゲームオーバーは突然に

私はどこで間違えたの…


火の渦の上に磔にされている彼女は嘆く

彼女は群衆が歓喜する中足先から灰になる


どうして私なの


カルテットの響きの中彼女は叫ぶ

美しい音色とともに腕が焼け爛れる


許さない。こんなことする人たちを


磔にしていた木に火が燃え移る中彼女は吼える

熱に耐えられず肺が焼け焦げる


ユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイ


肺の焦げた彼女には声が出るわけもなくうめき声がその場に響く


この場にいる全員私の手で必ずぶっ殺してやる

一匹だって逃しはしない


叫び続けた彼女の世界が終わる頃に聞こえたのは

その場の全員が足掻き続ける私を見て高笑いする

耳障りな音のみだった





 榊原颯真の朝は早い 朝5時には起き仕込みを始める

 厨房に行き強力粉と卵、オリーブオイル、塩を混ぜ合わせて生パスタの仕込みを済ませる。うちの生パスタはインスタ映えすると有名になってから若い女性にとても人気になり売上も右肩上がり。作る量も増えたのでこの時間から作っても1時間はかかる。正直ちょーめんどい。早起きもめんどくさいし。

 

 仕込みが終わると店の準備だ。床を掃除し机を拭きテーブルクロスをかけ食器を置く。今日はお昼の情報番組マヒルナンデスの取材が来るため念入りにしておく。もしかしたら女子アナとLINE交換してくれるかもだし。

 

そうこうしていると従業員が出社してきた。とは言え雇っているのは一人しかいないが。

 うちの唯一のウェイトレスの七瀬琴葉。マジで可愛い何時間でも見てられる。手を出そうか悩んで…えっ

何?撮ってないよ?撮ってないったら。ちょやめてよ、あっ…


 スマホを奪って僕は彼女に問い詰める。 「この撮影画面はなんだ」黙る彼女を横目に録画されていた動画を再生した。

題名は料理人榊原颯真のモーニングルーティーン

そこにはだらしない男のようにナレーションされた自分が映っていた。

 

 「これをどうするつもりだった。答えないと飯抜きだからな」

そう言うと彼女は渋々「YouTubeのチャンネルにアップするつもりだった」

僕は呆れて彼女、榊原萌香にもうやらないよう言って仕事に戻った。


 萌香は広報担当という名のニートだ。忙しい時たまーにウェイトレスとして働いてもらうが基本裏でパソコンをいじってばっかりいる。インスタでバズったのもYouTubeチャンネルがあるのも全て彼女が原因だ。

そして萌香は僕の妹だ。去年高校は卒業しているのだがなぜか僕のもとに来て居候をしている。萌香が言うには「ふうにいに変な虫がつかないようにしてんの」

とかなんとか。(萌香は僕のことをふうにいと呼ぶ)


 仕事に戻ると琴葉さんがほとんどの準備を終わらせて立っていた。 よく見ると足が小刻みに震えている

 「どうしましたか?もしかして今日来る取材クルーに緊張しているんですか?」


 琴葉さんは答えずただ震えるだけだった。

流石に変だ、いつもはどんな時も返事してくれるのに

熱でもあるのかもしれない。確かめに行こ。


 「大丈夫ですか?」と言って肩を叩いた

 

 「触るな!」手を弾かれる。


 「あ、すみません、でも大丈夫かなと思いまして」

 突然手を振り払われたのに驚いて謝ってしまった。


 「ふふっ、あはははははは、思い出しましたぁ。大事な感情。忘れてはならない言葉。今度はこっちの番ですね。」


 「急に人が変わったみたいに…」


 「あーっ、店長、今までありがとうございました」


 「ほんとにどうしたんですか」

 次の瞬間僕は自分の体を見上げていた。体と頭が離れ僕は意識を手放した。


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