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七夕の奇跡  作者: シアン
3/4

────笹の葉っぱ────

「瑞音。これが今日の主役、でっかい笹だ!」


 とても安直だった。けどわたしの手の平じゃ足りないくらいの葉っぱの大きさで、たしかに大きかった。いったい何をするんだろう。


「ほら、書けよ」


 そう言いながら、ポケットから長方形の紙と鉛筆を取り出してきた。


「え、何を書くの?」

「お前そりゃ、短冊に願い事を書くに決まってんだろう」


 そういう風習があるんだ。知らなかった。そもそもお祭りって魂とかを慰めるものじゃないのかなぁ、なのにみんな騒いでるけど……。神様に何か願って叶うものなのかな? だって騒いだりしたらなんか罰当たりというか、なんというか。


「神様にお願いすることを書けばいいの?」

「おう、そうすりゃきっと叶うんだぜ」

「お願いか……そうだなぁ」


 今日こうやって夕と過ごしているうちに感じたこと────人間と一緒に生活したい。人間と一緒にいると楽しい。人間と一緒にいたい。きっと今のお願いはこれだと思う。自分の自由がそこに在るんだと思える。でもこの願い事を書くときっと変に思われるだろうから、違う言い回しにしないと。…………そもそもわたし、字を書くことが出来ないから夕に書いてもらわないとなぁ。


「ねぇ、夕に書いてもらってもいいかな? わたし字を書くのが苦手でさ」

「お前女なのに、そんなんじゃこれから大変だぞ? まぁ今日の俺は何でもやってやるけどな。貸してみろ。なんて書くんだ?」

「夕と一緒にいたいなって…………それがわたしのお願い」


 うん間違っていない。きっとそれが一番純粋な想いだと思う。たった数時間過ごしただけだけど、夕と一緒にいるのは楽しかった。ずっと一緒にいたいと思えたのは、夕と出会うことができたから。だからこれからも色々な経験を夕と一緒にしたい。そう思った。


「……そうか、まぁ俺も瑞音とは一緒にいたいと思うがな。はっはっは! お前みたいな奴、他にいないしな。それに、結構可愛いし……」


 最後のほうの言葉は小さくなって聞き取りづらかったけど、夕も同じ気持ちみたいで嬉しかった。


「じゃあ書いてもらえるかな?」

「おう、任せろ!」


 それから夕は、わたしと自分の短冊を書いて、大きな笹に吊るしたのだった。


「おい瑞音、これから花火が始まるから見に行こうぜ」

「うん!」


 近くに穴場があるとかで、林の獣道を抜けて暫く進むと高台に出た。下を覗くと村明かりがほんのり見えた。そして花火が上がり始めたのだ。ただそれと同時に私の時間もそろそろ終わりになりそうだった。


「ねぇ夕……」

「なんだ?」


 夕は花火から目を逸らすことなくわたしに声だけよこした。こっちとしても都合が良かった。だって別れは辛いから。


「また会えるかな? それでまた、一緒にこうやって遊べるかな?」


 小さい声だったから、花火に紛れて夕には届いていないかもしれない。それでも今は、口に出来る間に言葉にしないと、きっと後悔する。


「だから、絶対にまた……」


 大きな花火の音色が響いたのと同時に、わたしは夕の傍から離れた。

 振り返った夕はわたしの姿がないことに驚きながら、足元に落ちていた葉っぱを拾ったのだった。 


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