98話クランと感覚
レンとレンが付与を施した服を眺めるエリアス…そしてそんなエリアスを眺めるレン。
まるで時間が止まっているかの様な状態だった。
「いい加減に動きなさーーーーい!いつまで見惚れあってんのよ」
2人の近くでルティアが叫んだことでレンとエリアスは、正気に戻る。
「あっ…わるい」
「ん…ごめん」
と謝る。2人とも顔が少し赤くなっている。
「本当…お互いに大好きね。その甘い空気を分けて欲しいものだわ」
とルティアは、少しご機嫌ななめだ。
「ルティア!何言ってんだよ」
「そうだよルティア、冗談はやめてよ」
と2人して大慌てだ。
ちなみにミラは、未だに落ち込んでいる様で端っこに丸まってブツブツと何かしら呟いていたので放置されている。
「気を取り直して、装備の強化をしていくぞ!」
とレンが言い、今度はルティアの服を受け取る。ルティアの服は、王女なだけあってなかなか高級感を感じる。
レンは、今更だが慎重に扱いながらも付与していく。
夜になってしまったが、ミラの分までしっかりと付与を施すことができた。
「着るだけで強くなった気がするわね」
とルティアは、喜んでいる。
「これで迷宮も余裕で攻略出来そう!」
ミラは、まだ無謀そうなことを呟いていた。でも防御力に関してはかなり上までいけるかもしれない。
夕食まで、時間があるため部屋で1人になったレンは、他にも付与をしてみることにする。
付与した効果が発動するのは、少量ではあるが使用者のMPを流しておく必要があるらしい。なのでただ付与されてれば安心というわけではなく、MPが切れていたりすると発揮されないこともあるのだ。
「試しにこの石に付与をっと」
ただの石ころに付与をかける。
石
付与 水生成
「で……これを手に持つと水が出るな…」
手から少量であるが水滴が落ちる。だが魔力を完全に送り込まないようにすることで水は出なくなった。
「まぁ、あらかじめ多くの魔力を送っておけば大丈夫みたいだから、そこまで問題はないかな?」
と結論づけることにする。
「それにしても付与するだけでここまで疲れが来るとは思わなかったな……」
かなり時間がかかったことに正直驚きを感じていたのだ。
『マスターは、たくさんのスキルを所持していますが、練度という点でみると素人と言えます。なので幾度となく使用し、極めるしかありません』
とナビゲーターさんが説明してくれる。チートと言っても使いこなせるか、そこが重要になるのだろう。
夕食の時間となり、エリアス達が呼びに来たので一緒に食事を楽しんだ後、レンは一度部屋に戻り迷宮へと向かう。夜の修行の時間だ。
迷宮からは、大勢の人が出てくるのが見えてきた。あれがエリアスの言っていたクランというものなのだろうと予想する。
「赤を基調とした装備で揃えてるな……統一感があって強そうに見える」
と集団を見てレンが呟く。
「おい、あれは真紅の宝剣だな。今、迷宮から帰ってきたのか…」
「相変わらず、クランリーダーは、愛想のない顔をしてやがるな」
と近くの冒険者が呟く。
確かに、冒険者が言った通り戦闘を歩くリーダーと思われる少女は人形と言ってもいい様ななにも感じさせない表情をしていた。
「今回も49階層の探索だろうな…」
「ああ、50階層を攻略するのは、真紅の宝剣だろうな…羨ましいぜ」
と話している。彼女が率いているクランは、この迷宮都市でもトップクラスの実力があるのだろうと感じた。
誰も辿りついてないような階層に先に辿りつくのも面白そうだとレンは、思いながらクランの近くを通り過ぎる。
パチパチッ……
とレンに謎の感覚が感じられすぐにクランの方を振り向くがすでに彼女の姿は、多くのクランメンバーに隠れ見えなくなっていた。
「気のせいかな……何か嫌なものを感じた気がしたんだけどな」
とレンは、気を取り直して迷宮に向かうのだった。




