85話転移と興奮
蓮のスマホのロックを解除し美羅が見つけたものはゲームアプリの様に見えた。
「最後に折神くんが使ったのはこのアプリね。アプリ名は異世界へか。まさか異世界にでも行っちゃったのかしら?」
蓮のスマホの方のアプリをタップしてみるが、アプリが起動しない。
「どういうこと?私のスマホでも入れてみようかな…」
美羅は自分のスマホを取り出しストアを開く。そしてアプリ名を入力してインストールを始める。
「遅いわね…通信制限きてたのね」
毎月のことだが、すぐに通信量を使い切ってしまうことを後悔する。
30分ほどかかりインストールを完了する。
「まずは、利用規約ね。どうせ同意しないと出来ないから無視で良いよね、読む時間がかなりかかりそうだし」
と言い同意しますのボタンを押す。
今度は、名前の入力画面が表示される。
「ふむふむ、ミラ・タカミヤっと。これでよし」
と言った瞬間、『異世界へようこそ』と画面に表示され美羅の姿は地球から消えたのだった。
ミラは気がつくと道端に立っていた。だがすぐにこの場所が自分の知っている場所ではないと気づく。
「これは…こんな花見たことがない」
眼鏡を人差し指で抑えながらその花を覗き込む。
「そんなに花とか詳しくはないけど…これは日本に咲いてる物とは思えないな」
まるで見たことがない花に興味を持っていると、何かの音が聞こえてきた。
音の正体は荷馬車だった。馬が二頭で荷車を引いて移動しているのだ。
「荷馬車が走ってるっていつの時代よ?まさか本当に異世界に来ちゃった…?」
スマホを取り出そうとしてポケットに入っていなかったので、学校の手提げカバンから取り出そうとしたがなぜかなかった。
「スマホがない…これは折神くんのスマホだし。私のはどこ行ったんだ!」
慌てて周りを見回すが見つかることはなかった。
「いやいや、慌てるな。もう一度バッグを見てみよう。きっとある。すぐ見つける」
結局ポジティブにいっても結果は変わらなかった。だがその代わりにバッグの中に手紙が入っていることに気づく。
「これは……ミラ・タカミヤ様へ」
と宛名の書かれた手紙を開く。
『ミラ・タカミヤ様
このたびは異世界にようこそおいでくださいました。利用規約でご確認されていると思いますが、この世界は魔法や魔物などの地球では非現実的だとされるものが存在します。「ステータス」と唱えることでご自身の能力を知ることが出来ます。魔物と戦うのものんびりスローライフを送るのも自由です。ミラ様の幸福をお祈りいたします。
なお申し訳ありませんが、現在不具合によりチュートリアルが行えずに直接異世界へ召喚する形となりましたことをお詫びし、そのお詫びとして経験値とアイテムボックス(有限)、〈スキル〉異世界言語を送らせていただきたいと思います。
アプリ管理者より』
「本当に来てしまったよ異世界…あー、私も明日とかに行方不明になってるじゃん!色々と申し訳ないな〜」
少し悲しそうに言うが、気持ちがすぐに切り替わる。
「しかし、本当に私は異世界に来たんだな。とりあえず、勉強は忘れよう。ラノベの様に凄いことが起きるのかぁ?もしかして近くで馬車が襲われてたりして」
ミラは、自分のテンションがおかしくなっていることに気づいていない。
「いや、落ち着こう私。アプリで異世界に来れたと言うことは折神くんがいることも確定だろうね。どうやって探すかはノープランだから、もしかしたら寿命が先に尽きるかも」
もう一度手紙を見直しながら今後の方針を考えることにする。
「まずはステータスを確認しようかな。よし!それではいきます。ステーーータス!」
ミラ・タカミヤ(人間)Lv10
HP398/398
魔力800/800
攻撃力65
防御力50
〈スキル〉
異世界言語 初級全魔法 経験値増加
〈称号〉
転移者 賢者の卵
「賢者の卵ってことは、そのうち賢者になれるのね!多分大当たりだよね。楽しい異世界生活ができそう」
魔法も使えるとわかり嬉しくなる。
ずっと何もない場所にいても面白くないため移動することにする。
「さて、街はどこにあるんだろうか?お、あれは馬車だね。声をかけてみよう」
馬車が道のりに沿ってミラの方に向かってくるため近くの街の場所を聞こうと思う。
「すみません!ここから1番近い街の場所を教えてもらえませんか?」
「おや!なかなか見ない格好のお嬢ちゃんだね。1番近い街なら迷宮都市がすぐだよ。それにしても1人で旅でもしてるのかい?」
恰幅の良い女性が返事をする。
「ええ、名前もないような村の出身で…地名とかもあまり知らずに村を出てきたもんで、恥ずかしい限りですが」
ラノベで大体の対応は予習済みだ。
「そりゃ大変だね。私たちは迷宮都市に向かってるから乗って行くかい?」
「ぜひお願いします!」
と言い馬車に乗り込む。
さっきの会話で出たが、この服装は目立つ様だ。さすがに学生服は異世界ではダメだよなと思い街に着いたら服を買うことも考えないとなと思う。
これから向かう迷宮都市という場所でレンに会うことが出来ないだろうかと考え、甘い考えだよなとミラは思い直しどう探すか考えてみるが再会は意外にも近くなりそうだった。