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73話レン対シャンとエリアス、ルティア対キメラ

「なんなんだ…あの魔物は」


地下から出てきたと思われる魔物を見て多くの人が同じことを思った。


それはハルカも同様であった。


「まさかこれがスティグマが研究していたキメラ?人型のキメラなんて見たことがありませんね」


魔物の見た目は、人型で身体の部位に様々な魔物の特徴が出ている。スティグマの残した書類にも載っていなかったし、地球のアニメなんかでも見たことがない見た目をしていた。


「みなさん、逃げてください。魔物が出現しました」


ハルカは、すぐに近くの住人に声をかけ避難をさせる。住人は、軽くパニックになりながらも移動を始める。


他の場所でも魔物が出現し、冒険者達が迎え撃とうとしている。


王国は、今まさに悪夢が始まったと言えるだろう。







「陛下!大変です。街に魔物が出現しました。現在、冒険者が対応しようとしています。陛下はすぐにお逃げください」


王城でも騒ぎが広まりつつあった。


「国民を置いて逃げるなど出来ん。兵士はすぐに冒険者の援護に回るように通達しろ」


「陛下…」


命は大切だが、一国の王として恥ずかしくない行動を示さなければならない。






「レン、魔物が街中に現れた」


シャンに向かい合っているレンにエリアスが声をかける。


「街に現れた?そんなことがあるのか…」


「俺たちが作り出した魔物だよ。ようやく完成してな…大変だったんだぜ?人に呪いをかけて魔物を動かすための生命力を奪うのも」


街の人を苦しめていた呪印は魔物のために使われていたという事実が判明した。それに街中に魔物がいたということは、それが原因で王都に魔物が向かってきたのかもしれない…


「そんなことのために、多くの人を苦しめたのか…許せないな」


レンの剣を持つ手に力が入る。


「エリアスとルティアは、魔物の方に行ってくれないか?こいつは、俺が倒す!」


「わかった。レン、絶対に勝ってね」


「負けたら許さないわよ」


2人とも賛成してくれた。



エリアスとルティアが魔物の方に向かい、レンも戦闘態勢に入る。


「まぁ俺の目的は、お前の始末だからな…邪魔な奴らが居なくなって楽になった」


「俺を狙ってる。俺がそんなに厄介か?」


情報も欲しいと思い、警戒しながら質問する。


「ああ、フェレンスでのことも聞いたが、今回の俺たちの仕掛けた呪印を消して妨害してくれたことと、お前の戦闘能力も厄介だと判断した。これからのスティグマに対して十分な脅威になると…」


仮面を付けながらシャンが言う。


「それでここで始末しようってわけか…」


目立つことはするもんじゃないなとレンは思った。


「そうだ。悪いがここで死んでくれ、破黒の英雄」


シャンがナイフを引き抜き言う。


「それも知ってるのか、だが死ぬことは出来ない!」


レンも剣を持つ手に力を込める。


戦闘が始まる。





エリアスとルティアは、魔物の方に向かって走っていた。


「エリアス、一体どれだけの魔物がいるのよ?」


「んー、距離もバラバラだからわかりづらいよ。2,30体くらいかな」


臭いでエリアスには大体の数がわかる。


「多いわね!あれかしら?」


ルティアが指した方にいたのは、人型の魔物だった。


「何あの魔物?人型だけど、色々と混じってるような」


「あれがキメラじゃないかしら?いくつかの魔物の特徴が混じってるように見えるわ」


ルティアは、自分の知っている魔物の特徴があったことから推測した。


数人の冒険者がキメラに攻撃をしているが、押されている。


「なかなか強いみたいだね……私達も全力で行かないと危ないよ」


狼人族の本能が敵の強さを判断した。これは本当に危ない魔物だと、黒龍戦の緊張感を思い出す。


それに、今最も頼れるレンもいない。



エリアスが前衛、ルティアが後衛の形で連携を取ることにする。


「ライトニング…私が相手だ!」


雷をキメラにぶつけエリアスに注意を引く。


「ガァァァァァァァァァァ!」


「タァァァァァァァ!」


エリアスとキメラの武器がぶつかる。


ガキン!


金属音がなり、一撃目の軍配はキメラに上がる。


「なんて力…」


吹っ飛んだエリアスは、一回転して着地する。


「ファイヤドール!」


ルティアの火の人形がキメラを襲う。だが火はあっさりと消えた。


「あんまり、効いてないわね…」


思ったよりも攻撃が効いていないことにルティアは驚く。


「これは、思った以上に辛い戦いになりそう…魔物の強さもAランク…それ以上かな」


と言いエリアスは、武器を構え直すのだった。

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