64話地下と予想外
『ルティア・ファン・アルセンティアのステータスに接続します』
いつも通りの無機質な声が頭に響く。
ルティア・ファン・アルセンティア(人間)Lv20
HP910/910
MP4890/4890
ATK95
DEF150
〈スキル〉
中級生命魔法 回復量上昇 礼儀作法
〈称号〉
聖女見習い アルセンティア第3王女
表示されたスキルを見てMPに驚く。
「20レベルでこのMPは多くないか?」
MPが他の数値と比べて段違いの量だ。レンが20レベルの時よりも多い。
「まぁ回復魔法をバンバン使ってたから…いつの間にか増えてたのよ。回復しか出来ないからそれを極めたくてね…」
過去を思い出すかのようにルティアは説明する。本人の努力の成果を感じられる。
「MPはあるだけ便利だからな、さてスキルをインストールしよう」
状態異常耐性もインストールしたいと思う。敵は、毒を使ってきていたしそれに対してこのスキルは無効化に成功している。
そして30分ほど経ちインストールが完了する。
ルティア・ファン・アルセンティア(人間)Lv20
HP910/910
MP4890/4890
ATK150
DEF150
〈スキル〉
中級生命魔法 回復量上昇 礼儀作法 中級魔法(火、水)即死回避 精神強化 使用魔力削減 魔法効果上昇
〈称号〉
聖女見習い アルセンティア第3王女 加護を受けし者
「すごいわね!ここまでの数のスキルを持っている人も世の中にはそうそういないわ」
インストールしたスキルにルティアは、かなり満足したようだ。
「魔法は火と水しか出来なかったの?」
新しい魔法が2種類ということにルティアが質問してきた。
「ああ。さすがに全ての魔法をインストールさせてくれるというわけじゃないみたいだ」
入れられないスキルは検索しても表示されないのだ。人によって、インストール出来るスキルと出来ないスキルがあるようだ。
「エリアスにも精神強化は、インストールしてなかったからインストールするよ。それと他に欲しいスキルはある?」
この際だからエリアスのステータスも強化しておこうと思い声をかける。これからは魔物ではなく人と戦うことになる。魔物よりも注意して準備しておく必要があるだろう。
「そうだね…何個かもらえたら戦闘に役立ちそうだと思ってたのがあるんだよね」
とエリアスが言い、インストールするスキルを話し合うのだった。
そして夕方になり宿でハルカと合流する。
「準備は出来ましたか?」
「はい。ハルカさんも休息が取れたみたいですね」
朝と比べてクマも無くなり、元気そうに見える。
「ええ。ゆっくり休ませてもらいました。さて、それでは向かいましょう」
ハルカが歩き出す。
「地下にはどこから入るのですか?」
「人気が少ない場所のマンホールのようなものがある所から入ります」
特に何かを喋るでもなく歩いているとその場所に到着する。
「それでは入りますよ」
と言いハルカは蓋を開けハシゴで地下に降りていく。
その後にエリアス、ルティア、レンの順で降りるのだった。
地下は予想していたよりもかなりの広さがあった。
「鼻がキツイよ…」
エリアスが辛そうに言う。
人間のレンでもキツイ臭いなのだ。獣人のエリアスが楽なはずがない。
「大変だけど耐えてくれ…」
と言うしかなかった。
「私も、地下がどれくらいあるかを把握できてはいません。地下はもう必要な場所以外は50年は放置されているみたいで、人も入らないらしいです」
ハルカさんの説明を聞きながら地下道を進む。
「きゃあ!」
とルティアの悲鳴が聞こえたため、慌ててルティアを見ると、虫に驚いたようだ。自分の所に出ても驚いたかもしれない。
「驚かしてくれるな…」
いきなり敵でもいたのかと思った。
「速く出たいわ…こんな場所」
少し涙目になりながらルティアが言う。スティグマと戦うといった格好良さはどこにいったのか。
「入ったばっかりじゃないか…」
レンは少し呆れたように言うのだった。
10分ほど歩いただろうか。今の所、何も見つけられてはいない。
「何も見つからないな」
「それは、そうでしょ。こんな暗いんじゃ何も見えないじゃない!」
とルティアが言う。
「「「え?」」」
ルティア以外の3人は見えないの?という反応をした。
レンはスキル夜目、エリアスは種族的なものからハルカは今までの経験で普通に見えていたためルティアが見えないというのは考えていなかったのだ。
「エリアスとハルカはともかく…レンはずるいわね。スキル頼りじゃない!」
レンにヤジが飛んできた。
「わかった、わかった。灯りを出すよ」
レンは光魔法で小さめの灯りを作り出す。
一悶着ありながらも地下道を進む。
1時間ほど進んでいるとレンの索敵に反応があった。
「止まって…この先に生命反応がある」
「スティグマですか?数までわかりますか?」
とハルカの質問がしたため詳しく調べてみる。
レンはおかしいな…と思いながら答える。
「人じゃない?」
スティグマ探しの為に王都では、常に索敵を使っていたからか、感覚的にわかるようになってきたのだが、この反応は人ではないと感じることが出来ていた。
「行ってみるしかないですね。戦闘準備をしてください」
ハルカの言葉と同時にそれぞれが武器を持つ。
そして向かった先にあるものに驚いた。
「どうしてここに魔物が…」
王都の地下に魔物なんているはずがない。みんなが予想外の遭遇に驚く。
レンの疑問の声は地下道に溶けていくのだった。