58話病院巡りと尾行
「息子を救っていただいて本当にありがとうございます!」
と母親は、泣きながらレンにお礼を言ってきた。向こうからするとレンは神様にすら見えたことだろう。
「気にしないで下さい!息子さんが元気になって良かったです」
とレンは返す。
「お兄さん、ありがとう!僕もお兄さんみたいになりたいな〜」
と子供が言った。無邪気な笑顔だ。
レンは笑顔で子供の頭を撫でるのだった。
「やっぱり貴方についてきて正解だったわ。私も何かを得られる気がしてきた」
とルティアが言った。
「未来の聖女様に褒められて光栄です」
と返しておく。まだ患者はいるだろうし、そこまでルティアに構ってる暇はない。
「むー、後でしっかり話を聞かせてもらいますね」
とルティアは言うのだった。
それから1時間程で最初の病院の患者全ての呪印を消すことが出来た。
「さて、次の病院に向かいましょうか!」
とルティアは地図を持って先導する気満々だ。
「ああ…そうだな。おっと…」
と言ってレンは身体のバランスを崩しエリアスに支えられる。
「レン、無理してるでしょ?王女様、レンの身体が保ちません。休憩をさせて下さい」
とエリアスがルティアに言った。
「さすがに大人数にハッキングするのは疲れるな…」
こんなに疲れたのは久しぶりだ。他人のステータスへの干渉とアンインストールでMPはかなり減る。
「キツイならそうと早く言いなさいよ」
とルティアはプリプリと怒っている。心配はしてくれているようだ。
「悪いけど少し休む…」
と言いながらMPポーションを飲む。
MPポーションは、MPを回復することは出来るが疲れが取れると言うことはない。やはり自然回復が1番なのだ。
どんなにレン1人が頑張ったところで全てを救うことは出来ない。だが少しでも多くの人を助けるためにやれることをやらなければならない。
少し時間が経ちレンは立ち上がった。
「良しっ!回復出来てきた気がする」
と出発の準備を始める。
「レン、体調は悪くない?」
とエリアスはまだ心配そうだ。それだけエリアスはレンのことを思っている。
「ああ!心配かけっぱなしで悪いな」
と頭を撫でておく。
「2人ともイチャついてないでさっさと行くわよ」
とルティアが声をかけてくる。
「へいへい」
とレンは返事をして次の病院に向かうのだった。
その後も、呪印を消して回復のため休憩をしてを繰り返し一晩をかけて病院を回った。
「ふぅー、めぼしい病院はあらかた回ることが出来たな…」
とレンは呟く。
「お疲れ様、レン。宿に帰って寝たほうが良いよ」
とエリアスが言ってくれる。
「そうだな…さすがに徹夜はきつい」
元の世界では、母にしっかり寝るように言われていたのでそこまで遅くまで起きていたことがない。
「お疲れ様、レン。私が褒めてあげるわ」
とルティアが言った。
王女様は、多くの人が助かったからか、かなりご機嫌だ。
「それにしても王都1日目にしてかなり忙しかったな…」
とレンは呟く。
もう何日も王都にいる気分だが、まだ昨日来たばかりなのだ。いきなり忙しすぎだろとレンは思うのだった。
「ゴリスさんに教えてもらった宿に行こう!」
とエリアスが言ったため向かうことにした。
歩いていると当然のようにルティアもついてきていた。
「王女様は、城に帰らないのですか?」
と聞いてみる。
「当然、貴方達についていくわよ。自分の分くらいしっかりと払うわ」
とルティアが言った。
「承知しました…」
と諦めてレンは言うのだった。
そして3人は宿に入っていった。
その3人を近くの建物の屋根から見ているものがいたが3人は気がつかなかった。
ある程度部屋で休み、3人は宿の食堂でご飯を食べていた。
「美味しいわね!どんどん進むわ」
と言いながらルティアがおかわりを食べている。王女や聖女にあるまじき食欲な気がする。ちなみにお金は、ルティアが自分で払っているから良いのだが。
「良く食べるな…太るんじゃないか?」
とレンが呟いた時、エリアスがビクッとしていた。
「どうしたんだ、エリアス?」
エリアスの様子が気になったため見る。
エリアスのその手には、おかわりの皿があった。
皿を持ちながらプルプルとしている。
「いや…やっぱご飯美味しいからなー、俺も5杯くらい食べちゃおうかな」
とおかわりに向かう。これまでで1番の俊敏さを発揮した気がする。
なんとか誤魔化せたかな……と冷や汗をかいた。完全に地雷を踏んでしまったがなんとか不発に持っていった。
そんなこんながあったが、無事食事を終え街に出る。レンは、無理して食べ過ぎたためそこまで無事とは言えないが…
ギルドにでも向かうかと考えていた所、そのような状態ではなくなった。
『索敵に反応がありました、マスター。尾行されているようです』
とナビゲーターさんが言ったからだ。