56話感謝と第3王女
無事に王妃を治せたことをレンは安堵していた。
もし失敗したら打ち首とかじゃないだろうな?と内心、不安に思っていたからだ。
「ナビゲーターさん、呪印ってあったよね。何かわかることはない?」
と聞いてみる。
『はい、マスター。ルミノス・ファン・アルセンティアの呪印は、本人を蝕むものであり、エリアス・ミリーの呪印よりも格下の呪いです』
と返答がきた。
疫病かと思いきや、呪いの類とは…ますますスティグマが暗躍しているのではないかと疑わざるを得ない。
考えごとをしている間に、国王達の話も終わったみたいで、こちらに声をかけてきた。
「貴方が私を救ってくれたそうね。私は、ルミノス・ファン・アルセンティア。貴方に感謝を」
と挨拶をしてきた。
「初めまして、王妃殿下。私は、レン・オリガミと申します。私のスキルが役に立ち、とても嬉しく思います」
と無駄のない仕草でお辞儀をする。
ありがとう!礼儀作法スキルと心の中で感謝する。
「ルミノスは治ったからといっても、しばらくは寝ておくのだぞ」
と国王に言われていた。少し残念そうにしている。俺と話をしたかったようだ。
「それでは、失礼します」
と言いレンは部屋から退室する。
「今度遊びにいらっしゃい!」
と王妃が言う。
少し、近所のおばさんを思い出したレンだった。
「あ!レン、どうだった?」
とエリアスが聞いてくる。
「ああ!ちゃんと治せたよ」
と返事をする。
「さすがレン!」
とエリアスは喜んでいる。
レン達はもう一度、国王と話をすることになった。
「今回は、本当に助かった。私からも礼を言いたい。感謝する」
と国王が言った。
「いえいえ、気にしないでください」
とレンは返す。助け合いは大事だからな…
「ところで、もしかしたらと思うのだが、オリガミ殿は異世界人ではないだろうか?」
と国王が言った。
やはり見た目でバレるのか?とレンは思った。良い人そうでも完全に悪い人ではないとは限らない。
「ええ、俺は異世界から来ましたが、もしかして俺を利用しようとか考えていますか?」
レンは、単刀直入に聞くことにした。周りの兵士が良くない顔をしたが、レンの気迫に動けないでいた。
「いや、そんなつもりはないが、黒目、黒髪だったから気になってな…どこの国に召喚されたのか知りたくてね…」
と言った。
「それは、失礼しました。あの、異世界から来る人は、国によって召喚されるのですか?俺は、自分の部屋にいたら突然召喚されたので…」
とアプリなんて言っても理解されないだろうし、簡単に言っておく。
「もしかしたら、他の方法で来る人もいるかもしれんが、ハルカも我が国が召喚したのだ」
と国王が言う。
「ええ、懐かしいですね…もう10年ほどになりますか」
と懐かしそうにハルカも答える。
「ハルカには、自由にしていいと言っているが、何かと手伝いをしてくれていてな、感謝してもしきれん」
と国王が言う。
異世界人を利用するような人ではないなとレンは思った。
ここで、レンは言わなければならないことがあるのを思い出す。
「急に話が変わって申し訳ないのですが、実は王妃様の病を治した時のことなのですが」
とレンは切り出す。呪いのことを言っておくべきだろうと思った。
「何かあったのかね?確かに怪訝な表情をしていたが」
と国王が続きを言うように進める。
「実は、王妃様のステータスには、病気ではなく呪印と表示されていました」
とレンは答える。
「何?鑑定士は病気と表記されていると言っていたが…レン殿にしか見えてなかったのかもしれんな」
レンにしか見えないというのはエリアスのケースとやや共通するなと思った。
「私のと似てるね」
とエリアスが聞いてくる。
「ああ!エリアスのとは効果は違うやつだけどね。だがステータス表示を誤魔化す性能があるというのはかなり厄介だ…」
とレンは答える。
「レン殿、出来ればであるが、この国で呪われた者の呪いを消してもらうことは出来るか?」
と国王が言ってくる。
「出来ないことはないですが…」
どれだけ呪われた人がいるかわからないため骨が折れそうだ。
「まさか…呪いとは…スティグマの仕業と見て良いんでしょうね」
とハルカが呟く。
ハルカはかなり怒っているように見える。この国を大切に思っているのだろう。
「ここで話していても解決しないでしょうから、これから病院などを回って呪いを解いていきたいと思います。場所を教えて貰っても?」
と聞く。
「わかった。地図を渡しておこう。後でメイドから受け取ってくれ。今日は本当にありがとう。今日という日を私は、絶対に忘れない…」
と王が言った。
「それでは、失礼します」
と言い退室する。
メイドから地図を受け取り、早速病院に向かおうと思う。
「夜だけど、病院に入れるよな…命に関わるし」
とレンは呟く。
「出来るだけ速く治してあげたいよね」
と時間を心配するレンにエリアスが言う。呪いを受けた者としての思いがあるのだろう。
「ちょっと良いですか?」
病院に向かおうとするレンとエリアスに声がかかる。
そこに立っていたのは、王妃の部屋にいた少女だった。
「私は、第3王女ルティア・ファン・アルセンティアです。お2人にお願いがあって来ました」
と言うのだった。