45話 チートと良い天気
現在、病室にはレンとギルド長のフィレンしかいない。
ようやくエリアスが話せるようになったので、アリーとのんびり話してこいとレンとフィレンが言ったためだ。
「身体の調子はどうかしら?」
フィレンが聞いてきた。
「少し痛い所があるくらいです」
と答えた。
レンは、密かに回復速度向上をインストールして速く治るようにしている。
「悪い所が無くて何よりだわ。…それは置いといて、あなたに聞きたいことがあるのだけど、あなたは本当に何者なの?」
レンは、さすがに何者かについては聞かれることになるだろうとは予想していた。今回の戦いでは明らかに異常な動きをした。
「さすがに聞かれるとは思ってましたよ…ギルド長を信じて打ち明けます」
レンは、今回の戦いなどを通してフィレンを信頼できる人だと思った。
「俺は、別の世界からきた人間です。本に載っている勇者とかではありませんが、色々なスキルを使うことが出来ます」
例えばと言いレンは転移を使う。
そしてギルド長の後ろに移動する。
「これは転移魔法?確かに別の世界から来たと言うのも嘘ではないようね…」
とギルド長はそこまで驚いてないようだ。
「そこまで驚かないのですね?」
とレンは質問する。
「まぁ、会ったことがないわけじゃないわ。元パーティメンバーにもいたのよ。異世界から来たって子が」
とレンにとって気になる情報が出た。
「その人は今どこにいるのですか?」
同じとこから来た人なら会ってみたいと思った。
「彼女は今は、王都にいると思うわ。今も冒険者をしてる。結構戦うのが好きでね…」
と苦笑いで答える。
「変わった方なんですね…?」
とレンは返答しておく。
「あなたは、命がけで戦ってくれた。悪い人ではないだろうし、この事は私の胸にしまっておくわ」
「そう言ってもらえると、助かります」
やはり信頼できる人だ。
「そうだ!試したいスキルがあるのですが、手を出してもらえます?」
と聞いてみる。
「しょうがないわね……エルフは、男に体を触らせないのだけれど、あなたは特別よ」
とニヤニヤしながら手を出してくる。
遊ばれてる気分になりながら手を握る。しかし、かなりの好意を持ち、認めてないと女のエルフは本当に触らせないということをレンはこの時知らない。
「ハッキング!」
とスキルを使用する。
『フィレン・アーミラのステータスに接続します』
とアナウンスが流れる。
実験してみたいのは、アンインストールは出来たがインストールは、できるのかと言う事だ。
試しにレンは、状態異常耐性、使用魔力削減、魔法効果上昇をフィレンにインストールしてみる。
「インストール!」
するとフィレンが違和感を感じたように言った。
「私のMPが減っている感覚があるんだけど、あなた何かした?」
「なるほど、スキルをインストールする時は、その人のMPが消費されるのか…」
インストールは出来るようだ。
レンのMPから消費されると思ったが、そこは違ったようだ。
「ギルド長、ステータスを確認してください。新しいスキルがあるはずです」
と教える。
フィレンは、ステータスを見て驚いた表情をした。
「これは…私のステータスよね?こんなに一気にステータスが増えることがあったかしら…」
といった。
ちなみに、この世界では何かの拍子にステータスが発現することもあるらしいが珍しいようだ。
「俺のインストールというユニークスキルは、MPを消費してスキルを手に入れることができるんです。ハッキングというスキルでギルド長のステータスに干渉してそれを行いました」
「なるほど、さっきMPが減った感覚がしたのはそのためか…スキルを入れることができるという事は逆に消すこともできるのかしら?」
と質問してきた。
さすがはギルド長、鋭いとレンは思いつつ答える。
「ええ!可能です。エリアスの呪いは、この力で消しました」
「とてつもないスキルね。確かに他の人にバレたら大変なことになりそうね…改めてあなたの情報は漏らさないと誓うわ」
「ええ!助かります。まあ、相手に触れてないとできないみたいなので万能でもないかもしれませんが…」
とかしこまりつつ答える。
「そんな事はないわ。その能力は、かなりズルいわよ。別の世界から来た人達は何ていってたかしら…」
えーととフィレンは思い出そうとしている。
そしてレンとフィレンは同時に答える。
「チートですか?」
「チートだったかしら?」
看護師がお茶を持ってきてくれたため、一息ついてフィレンが話を再開する。
「実は、レンに言わなければならないのだけれど、フェレンスの領主からあなたに会いたいという話が来ているのよ」
と言った。
「一体、何の御用なのでしょうか?」
とレンは聞く。
面倒なことになるのではないかと思ったからだ。正直今回の戦いでレンは、己の力を盛大に使ってしまった。目をつけられてもおかしくないかもしれない。
「そんなに緊張しなくて良いわ。ただお礼が言いたいだけよ。街を救った英雄にね」
と微笑みながら答える。
「それなら良いのですが…」
とレンは了承することにした。
「まぁ、今は身体を治すことに集中しなさい。街の人たちも感謝していたわよ」
レンは苦笑いを浮かべ、
「わかりました。そんなに目立ちたくなかったのになぁ」
と答える。ギルド長は、微笑んでいた。
エリアスとアリーが戻ってきて、アリーがレンにお礼を言い2人は帰っていった。
現在病室には、レンとエリアスの2人だけとなった。
レンは、エリアスに自分が別の世界から来たことを改めて詳しく語ったがそんなに驚いた様子はなく、気にしないよと言ってくれた。
スキルの力で怪我もすぐに治ったため、レンは退院することができた。本当にユニークスキル様々だ。
「さーて、俺は色々とやらないといけないことがあるからギルドに向かうんだけどエリアスは、どうする?」
と聞いてみる。
「もちろん付いていくよ…ずっ…」
と答えた。
レンには、ずっとと言ったのは聞こえなかったようだ。
「良い天気だな…」
なんてベタなコメントだろうと思いつつも空を見上げレンは言った。
暖かな太陽の光が気持ちよく、黒龍との戦いが嘘だったかのように感じるレンだった。