399話魔門へ向けて
「させないわよ、レン」
「あなただけを犠牲にするなんて、私には出来ない!」
ルティアとエリアスと向かい合う形で、レンとナビゲーターは立っている。
「そう言われると思ったから、そっと行こうと思ったんだけどな」
頭をかきながらレンは答える。これからやること、母であるレミがやったことはまず命を失うことが確定している。
「ナビゲーターさん、一緒にレンを止めて!」
「それは承諾しかねます。私は、マスターのスキル。マスターの想いに応えなければなりません」
エリアスの言葉にナビゲーターは頷かない。彼女にとってはレンが最優先だ。
「本気なの?」
「ああ、エリアスとルティアを失いたくない。だから、俺が終わらせる」
レンにとってなにより大切な2人だ。彼女達を守るためなら、レンは命すら賭けられる。
「レン、私達を置いていくの?」
レンの足を止める発言。レンとしてもキツいものだ。
「戻ってくるから」
と言い歩き始めると、エリアスとルティアがレンを止めるために向かってくる。
だが、レンもここでエリアス達に捕まるわけにはいかない。
「ナビゲーターさん」
「はい、マスター。ごめんなさい、エリアス、ルティア。《フリーズ》」
ナビゲーターのスキルによってエリアスとルティアは、身体の動きを止められる。
「レン……行かないで」
「待ちなさいよ……」
ナビゲーターの力に抗い、少しずつだが2人が動く。動いたということに驚きだ。
「エリアス、ルティア。おかえりって迎えてくれるか?そしたら俺は絶対に戻ってくるから」
そう言って、レンは魔門に向かって飛び上がった。
「恨むなら私を恨んでください。マスターは、どうしても2人を失うのは嫌だった。自分よりも大切なものが出来たのです」
レンが去った後、ナビゲーターはエリアスとルティアに言う。
「恨めるわけない……だって、レンが戦うのは私達のためなんだから」
「帰ってきたら、沢山文句を付けてあげるから。ナビゲーターさんも一緒よ?」
「ふふっ……そうですね。我儘なマスターに、文句をつけましょう」
レンを、魔門を破壊するために飛んだ英雄をエリアス達は、見上げているのだった。




