396話称号とウイルス
「行け、レン!」
アルファードの声が響く。彼らにはマサトの死を悲しんでいる暇がない。
「はい、すぐにいきます!」
レンはすぐさま空に、ベルゼがいる方に向かって飛び出す。マサトが切り開いた道を無駄にするわけにはいかない。
『させるものか!ディザスター、奴を撃ち落とせ!』
ベルゼを目指すレンに、ディザスターを差し向けようとする。
「させません。フィレン、私達で止めますよ!」
「ええ。マサト、カラミィ見ていて」
ハルカが銃を、フィレンが弓矢を構えてそれぞれ放つ。
レンを狙うディザスターを撃ち抜き、援護する。その隙をレンは、飛行して潜り向ける。
「ありがたい、よし行くぞ!」
そのまま、一気に空を駆け抜けた。
「追いついたな、文字通り命をかけてくれた人がいるからここにやって来れた。いい加減に終わりにしよう」
「ああ、終わるのはお前じゃがのレン・オリガミ!我の中に入り込んだ不届き者も先程、混み込んだわ。無様に落ちろ」
レンの剣とベルゼが纏う闇がぶつかり合う。
「我と互角の力、この短期間でどのようにして力をつけた!」
「ただただ鍛えただけだよ。限界を超えて来ただけだ!」
レンが自らの周囲に魔法を展開して、ベルゼに向けて掃射する。
「貴様の魔法、我の力としよう!」
ベルゼがレンの魔法を飲み込もうとした瞬間、魔法が直撃する。
「当たったな!」
「まさか……」
『ベルゼのユニークスキル、アンインストール完了です。二度と魔法などの攻撃を吸収されることはありません!』
ナビゲーターの声だ。
「我の身体に飲み込んだはず。なぜ、生きておる」
『残念ながら飲み込めなかったですね。マスターが考えなしに魔法を撃つと思いますか?』
「どういうことじゃ……」
ベルゼが困惑しているようだ。
「ユニークスキル《プログラミング》、この力で作ったウイルスを魔法に合わせてお前に送り込んだ」
『ええ、お陰で闇に飲まれることもなく仕事を成し遂げられました。それに、ウイルスを大量につけてますからね。調子が出ないはずですよ』
ベルゼの身体から光がいくつか飛び出してレンの身体に入ってくる。
『称号〈転移者〉 〈スレイヤー〉〈逃走者〉 〈破黒の英雄〉 〈加護を授けし者〉 〈救世主〉が戻りました』
「称号も戻ってくれたのか」
『ええ、消えずにベルゼの中に戻っていました。ディザスターの力までは消せませんでしたが、今のマスターなら勝機があります!』
「ああ、勝とう。ナビゲーターさん」
レンが剣を構え、マジックボックスを展開する。
「好き勝手してくれたな、ディザスターの力さえ有れば貴様らを殺せるわ!」
ベルゼがレンに向かってくる。だが、レンはそれをひらりと交わす。そして、ナビゲーターが操るマジックボックスがハンマーの形を取りベルゼを地上に向かって叩き落とした。
「マキシマムマジック、ファイヤ!」
「カオスマジック、シャドーウインド!」
レンとベルゼの魔法がぶつかるが、押し勝ったのはレンだ。ベルゼを炎が飲み込む。
「まさか、我が追い込まれている……そんなことがあって良いはずがない!」
『HP MP ATK DFE最大値減少、ステータスダウン発生』
ベルゼの脳内に声が流れる。自らの力が落ちていることをベルゼは感じた。ナビゲーターが仕掛けたウイルスが猛威を振るい始めた。
「終わりだ、ベルゼ!」
レンが剣を突きつけて言うのだった。




