383話移動と神獣化
「これは、レンさんの!」
魔人の攻撃を盾で阻み続けているアイリは、自らの背中に翼が現れたことに気づいた。レンのユニークスキルが1つは戻ったということだ。
神聖国の魔人も、アイリの挑発スキルによって1箇所に集められていた。
「向こうはもう1体は倒したみたいね」
矢を放ちながら、フィレンは呟く。こちらも負けてはいられないなと火がつく。
「あなたは、安全な所にいなさい」
そうワイバーンに告げてから魔人に向かって飛ぶ。そして、弓を構えて連射した。
「さっさと終わらせてあちらに向かうとしようか!《剣神の加護》」
アンナも同じくワイバーンから飛び降りて、2本目の剣を抜く。
「借りるぞ、レン。〈二刀流剣術〉、剣神の舞!」
アイリに攻撃することに夢中になっている魔人に剣戟が襲いかかった。
「なるほどのぉ、お主の仲間達も魔人を倒せるほど強くなったか!」
「残りの魔人ももう少しの時間俺が耐えれば倒せる!全部のユニークスキルを取り返して、俺達が勝つ」
感心した顔のベルゼに対してレンは武器を構える。
「そうか、やはりお主が最後まで邪魔をする存在だったか……ふふふ、どこまであがけるかのぉ?」
ベルゼが右腕を空に掲げる。直後に空に門が現れる。
「魔門……、それすら自由に操れるってわけか」
「魔人と戦う仲間、そっちと遊ぶのも楽しそうじゃのう!」
「待てよ、お前の相手は俺だ!まずい!」
闇が柱の様に空から降ってきた。魔門の中からだ。レンを狙っている様で、飛行して回避したのを追尾してくる。
「2体ほどディザスターを出しておくかのぉ!お主は、ここでこいつらと遊んでおれ」
「待て!逃げるのか、ベルゼ」
「ほほほ、追いついてみるのじゃな?仲間が死ぬかもしれんのぉ?」
ベルゼが王国の方に向かって飛び去った。レンもすぐに追おうとしたが、それをディザスターが阻む。
蛇と鳥型のディザスターだ。だが、そのサイズは圧倒的に巨大なものであり、蛇にかかればレンほどの人間も余裕で一飲みできるサイズだ。
『マスター、エリアス達に知らせましょう!』
「ああ、〈テレパシー〉をインストール!とっ、危ない!」
蛇のディザスターが口を開いて、闇の攻撃を放ってくる。それを回避しながらインストールを行う。
『〈テレパシー〉インストール完了しました!』
鳥のディザスターが真っ直ぐにこちらに飛んでくるのを、迎え撃ちながら声を上げる。
「よし、みんな聞こえるか?そっちにベルゼが向かった!ディザスターに足止めされててすぐに迎えそうにない。少しでも耐えれるか?」
『嘘!こっちに向かってんの?』
『私が魔法でぶっ飛ばしてやる!』
ルティアの驚きの声にミラが続く。
『私がどうにか食い止めるから、レンも出来るだけ急いで来て!長い時間は持たせられないから』
とエリアスが言う。
「ああ、すぐに向かう!」
とレンは言いながら、ディザスターと対峙する。
『マスター、私も出ましょう!』
「いや、ナビゲーターさんは後でやってもらわないといけないから温存したい。ここは俺だけで切り抜ける。エリアスが持ち堪えてる間に」
エリアスにも切り札がある。その間にディザスターを仕留めたい。このまま放置すると、王国の結界を壊しかねないのだ。
「厄介なことになったわね……」
「ルティアとミラは、魔人の相手をお願い。私がレンが来るまでベルゼを止めるから」
「私達も魔人を倒したら援護するよ!無茶はダメだよ、エリアス」
とミラが声をかける。
「ちょっと無茶しないとキツイかな?レンも切り札になるって言ってたけどまだ使いこなせてないから」
と言いながらエリアスは、ベルゼが向かってくる方向に目を向ける。
「絶対に私が止める。フェンリル様、力を貸してください!《神獣化》」
エリアスの手の爪が凶器の様に伸びる。目もさらに赤くなり獲物を狙う獣の様だ。
牙が伸びて靴が破け、伸びた足の爪が出る。
ベルゼを迎え撃つためエリアスは、力を解放した。




