377話迫る魔人と決戦
「なんて化け物だ……あんな者が王都にたどり着けば瞬く間に滅んでしまう」
徐々に王都に迫ってくる魔人、その姿を捉えながら国王は息を呑む。あんなものに勝てるはずがない。
「陛下、これはまさしく世界の終わり……」
家臣の声が聞こえる。
数日前に、魔王城での戦いは敗北したという情報が入ってきていた。あの救国の英雄でさえも重症、それに賢者や光明の魔女の死亡も伝えられていた。
「陛下お逃げください。奴らが目指しているのは、王都という場所でしょう。でしたら、まだ」
「アルキア、いや無理だろうな。すでに魔人は三方向からこちらを狙っている。逃げても無駄だろう」
逃げることはほぼ不可能だろう。
「陛下、兄上。何か策はありませんでしょうか?」
「バレルラか、難しい所だな。聡明な君の意見も聞きたい所だが」
「厳しいですね。救国の英雄がいればまた少し違ったかもしれませんが……分が悪いなんてレベルじゃないですね……」
帝国の皇子バレルラであろうともこの状況をどうにかする術は持ち合わせていない。
それは神聖国でも同じであった。
「聖王様、いかがいたしましょう」
「策はないな。これは民を守るために戦うのみだ。皆、命を賭して守るのだ」
勝てるはずもない。それは分かりきっている。この前に、都市を蹂躙したディザスターと同等の化け物が3体も迫っているのだ。これで驚かない方がおかしい。
勝てないとわかっていても守るものが有る者は立ち向かうのだ。
「世界の滅亡へのカウントダウンがスタートじゃな。第一歩として、面倒を取らせてくれた者たちがいた国、王国と神聖国から滅ぼしてくれよう」
王都とから少し離れた場所、その上空でベルゼが笑う。これは勝ちが決まっている戦、すでに勝敗は決しているものだと。
だが、そんなことが許されるはずがない。滅びに抗うために立ち上がるものは常に現れる。
「世界の滅亡か……止めてみせるさ。例え何度折れようとな」
「まさか、お主はレン・オリガミ!なぜ、ここにいるのじゃ。貴様は再起不能にしたはずだ!」
レンが現れたことに驚いた様子だ。
「ああ、折れたよ。母親も兄弟も失って……だけど、立ち上がった。お前の好きにはさせない」
「リータ、あなたを助けに来たわ。一緒に帰りましょ!」
マグノリアも共に現れる。
「揃いも揃って、ならば何度でも地獄を見せるだけじゃな。かかってこい!」
「ああ、終わりにしよう。悲しむのもこれで最後だ。スティグマを今日をもって断ち切る!」
最終決戦の火蓋が切って落とされるのだった。




