367話受け継がれる聖女と守りたい者
「ルティア、良く来たね」
「師匠、怪我は大丈夫?」
ルティアは、師匠であるネーヴァンの元に訪れていた。ネーヴァンも先の戦いで、負傷していたため休養を取っているところだ。
「悪いね、他の奴らの治療を全部任せちゃって。流石の私でも、動けなくなるとは思わなかったよ」
ルティアが治療を行ったが、相当の傷だった。最も回復が優れているネーヴァンが倒れているのは大変だったが、ポーションを飲みまくり治療を終えたのだった。
「師匠は、休んでて。まだ全然回復出来てないでしょ?」
ルティアでは、ネーヴァンのような完璧な治療は出来ない。そのため、全員を完治させるのは難しかった。
「これからを考えると休んでられないけどねぇ。レンの調子はどうだい?」
「元気そうに見えたけど……」
「そうかい、立ち上がることも出来ないと思ったけどねぇ……」
レンがこの戦いで失ったものは多すぎる。これまでのスティグマとの戦いは何だったのかとも思えるような被害の大きさだ。
「エリアスが励ましたのもあるんじゃないかしら?レンは、エリアスのこと大好きだし」
2人の関係をルティアは、羨ましく思いながらネーヴァンに答えた。
「おやおや、ヤキモチかね?一緒に結婚なんだから仲良くしないとね〜」
「もぉ、師匠!仲良くやれるわよ」
「うん、ならレンを支えられるように力をつけないとだねぇ。思ったよりも早かったけど、これを譲り渡す時が来たみたいだね〜」
と言いながら、ネーヴァンが真っ直ぐにルティアの方を向く。
「師匠?渡すって」
「聖女の称号だねぇ。ルティア、多くの者を治療してきたお前の行いを認めて力を渡すよ」
ネーヴァンが手を差し出してきた。ルティアは、その手を握る。暖かい手だった。
「なれるかな?」
「なれるさ、そのために頑張ってきたんだろう?」
「はい」
ここまでのことを思い返すとあっという間の出来事だった。何事も急だとレンは言っていたが、その通りだと思う。昨日までの普通が今日の普通とは限らない。
「それじゃあ、ここにルティア・ファン・アルセンティアを聖女と認める。どうか多くの者を救う力となりますように……」
力を感じた。これまでとは自分が別人になったような気分になる。これなら自分もレンの力になれるだろうという自信があった。
「ありがとう、師匠。これで大切な人をみんな守れる!」
『称号〈聖女見習い〉変化……〈聖女〉になりました。〈上級生命魔法〉変化……〈幻級生命魔法〉になりました』
ステータスにも変化が現れる。
「まだまだ教えることはたくさんあるからねぇ。頑張るんだよ!」
「はい、師匠!」
とルティアは、答えて仲間の元に向かう。何があっても守り切るという確かな覚悟を浮かべて。




