359話悪夢と受け入れがたい現実
最終章スタートです!
「ナビゲーターさん……ルティア……ミラ……」
大切な仲間が倒れているのをボーッと眺めながら呟く。どうしてこうなった?と思っていると、
ドサッと倒れるような音が聞こえる。それを見て、自然と口から言葉が漏れる。
「お母……さん……」
「レ……ン………」
そのまま瞳を閉じて動かなくなる。慌てて駆け寄り母の肩を子供のように懸命に揺らすが、息を吹き返すことはない。
「無様じゃの、レン・オリガミ」
侮蔑の声に視線を向けると、闇を纏ったベルゼが立っていた。
「ベルゼ……」
「周りを良く見てみるのじゃ、お主が不甲斐ないばかりに多くの者が死んでいったぞ?」
アンナもアイリもフィレンも地面に倒れて死んでいる。
「みんな……」
「お主も死ぬが良い!」
ベルゼが闇を刃の形にして振りかぶってくる。斬られる……そう思った瞬間に……
「キャア!」
「エリアス!」
レンの前に立ったエリアスが身代わりになって斬られる。
「また1人死んだの?お主のせいじゃ!」
「エリアス……」
「レン……」
温もりが消えていくのを感じる。自分が守りきれなかったものを抱きしめながら涙を流す。
「次はお前の番じゃ、後悔を残して死ね。あの世で皆に責められるのじゃな!」
刃が振り下ろされて、
「はぁ、はぁ……はぁ……」
荒く息を吐きながらレンは目を覚ました。酷い汗が身体を流れている。先程までの悪夢を思い出した。
「夢……そうだ……お母さん……レイ。つ……」
起き上がろうと思ったが、身体が痛み呻き声を出す。どうにか我慢しながらも、外に出ようと歩く。
レンが寝かされていたのはテントで、外に出てみると崩壊した魔王城が見えた。
「ナビゲーターさん」
相棒を呼ぶが返事がない。すると、声をかけられた。
「レン、目が覚めたのね……」
「エリアス……」
駆け寄ってくる彼女を見てか細く呟くことしかできなかった。
「レン、酷い怪我だったから心配した。ルティアが治してくれたんだ」
「エリアス、お母さんはどこに……」
自分の怪我のことよりも気になることがある。エリアスは、悲しそうな表情でレンの手を引く。
怪我をした人が大勢いるのを見ながら、エリアスについて歩く。大きめのテントがあった。エリアスに続いて入るとすぐに見つけた。
「お母さん……なぁ、エリアス。お母さんは、寝てるだけだよな?もう少ししたら目を覚ますんだろ?」
「レン、あなたも見たでしょ?レミさんは、私達を守るために……」
横に首を振りながらエリアスが答える。そんなことはレンにもわかっていた。地面に崩れ落ちる。この瞬間が夢だったらどれだけ良かったか……時間を巻き戻したい気持ちだ。
「ああ……お母さんも、レイもいない。それにナビゲーターさんも……」
「レン、ナビゲーターさんは……」
とエリアスが言おうとした瞬間に、レンが声を上げる。
「全部ベルゼに喰われたんだ!ナビゲーターさんも、スキルも全部!俺が誰も守れなかったから……」
最後は声が小さくなっていった。
「そんなことない、あなたのお陰で、キャッ!」
エリアスを押し除けて、レンは外に走り出す。エリアスが慌てて、追いかけようとすると魔王城近くの森に向かっているのが見えた。
「守れなかった……俺が弱いせいで……」
ただ1人になりたくてレンは、目的もなく走るのだった。




