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355話空想の英雄の終わり

頭の中が真っ白になっていくのを感じた。自分の脳は、目の前で起きたことを受け入れようとしていない。


目の前で起きた出来事、光明の魔女レミ・サトウは、レン達をベルゼの闇から守るために自身を犠牲にした捨て身の一撃で守り切った。彼女以外は、みな無事だ。



「嘘だよ……な……」


わかっているが認めたくない。母は死んだのだということを。


「あの攻撃でも無事だなんて……」


空を見上げてフィレンが呟く。空には、あと一つのとなった闇の塊が浮遊している。あそこにはベルゼもいることだろう。







「驚いたのぉ……じゃが、光明の魔女も死んだ。しかし、良く持ち堪えるものじゃな」


悪くても3発も放てば殺し切れるだろうと思っていた。だが、犠牲はあろうとも4発まで持ち堪えているのだ。ベルゼとしても見誤ったか?と思わずにいられない。


「ベルゼ様、ですが敵ももう限界でしょう。次で終わります」


「そうじゃの、リータよ」


最後の一撃が放たれようとしていた。






「あと一撃、耐えれても相手が他の攻撃をしてきたら勝てない……ベルゼに力を取られた時点で負けていたのかしら……」


マグノリアが悔しがる。息子を取り戻すこともできなかった。


「レンさんのお母さん……」


「ああ、なんて酷いことだろうな」


アイリやアンナは俯いている。


「何か策はないか……負けなのか、ここで」


「妾が父上のように力があればの……」


あれには勝てない……諦めの空気が流れ始めている。


「レン……」


涙で晴れた顔をこちらに向けてエリアスが呟く。



何も言葉をかけてやることが出来ない。格好悪い所は見せられないなと思っていた自分はなんだったのだろうと思う。



再び空から闇が降り注ごうとしていた。


「終わり……か……」


レンがボソリと呟いた。もう身体が動かないためどうとでもなれとも思う。



「らしくないね、レン。気持ちはわかるよ」


「え……」


いつの間にか、目の前に少年が現れている。その姿からすぐに誰かわかった。


「レイ……」


真っ白髪の少年がにこりと笑う。


「うん、ここで君に死んでほしくないからさ。続けてで悪いし、急だけどお別れだよレン」


「待って……くれ、お別れって」


「もう忘れてしまったかもしれないけど、僕は君が生み出した君の英雄だ。まさか異世界で自我を持つことになるとは思わなかったけどね」



子供の時、そんなことを考えたこともあったかもしれないなと思い出す。自分の名前、レンに似た名前にしようと思って付けたレイという名前。今にしてみると単純に考えたもんだなと思う。


「これまで、一緒に旅が出来て楽しかったよ。これからも一緒にいたいってのは本当の気持ちなんだけどね。空想は、いつか終わるものだからね」


子供の頃に考えていたことは、徐々に忘れていく。自らの空想であるレイに対しても同様らしい。確かに、空想本人に言われなければ、存在すら忘れていて思い出せなかっただろう。


「最後に君を守って終われるなら本望だよ!今までありがとう、兄弟」


最後まで笑顔を崩すことなくレンに言葉を投げかける。そしてエリアスの方に視線を移す。


「エリアス、レンをお願いするよ。レンが立ち上がれなかったら殴ってでも立たせてあげて」


エリアスが静かに頷いたのを確認して空を見上げる。闇が迫っているがとうに気持ちは決まっている。




「最後の《デリート》だ。後は頼んだよ、レン!」


レイが眩い光となって、闇にぶつかり消し去ってゆく。5発目の闇を全て消し去ってベルゼ達の元にまで到達した。



「まさか、5度目まで……流石に笑っていられぬのぉ」



「君は、絶対にレンが倒す!そのためにささやかな妨害だ!」


と言いチラッとリータを見てから周囲に漂っている闇を消しとばしていく。正直な所ベルゼに攻撃したかったが、飲み込まれてしまうかもしれないので、周囲の闇を晴らすことにした。



きっとレンがベルゼを倒してくれると信じて……



ここに空想の英雄は、終わりを迎えた。

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