36話 戦う覚悟と迫る時間
レンとエリアスは、現在ギルド長の部屋にいた。封龍の森で見た状態を報告するためである。
「その報告は、本当なのね?」
間違いであってほしいと言うようにフィレンは聞いてきた。
「ええ!俺がこの目で見たものです。間違いありません」
とレンは言う。
「これは、間違いなくモンスターパレードが起こるでしょうね。対策が必要だわ!」
フィレンは、さっきまでの様子とは変わり、やるしかないというような表情だ。
現在、封龍の森に1番近い門では、多くの人たちによりバリケード代わりの壁が作られていた。
「おい!お前ら、魔物は待ってくれねぇぞー!」
ある男が大声を出して、周りを鼓舞する。
「おー!」
と元気の良い返事が返っていた。
レン達は、少し離れたところで壁が作られる様子を見ていた。
「短時間でこんなに進むとは…」
あっさりとバリケードを作った人たちに感服していた。
「確かに1人の能力は低いかもしれないけど、それを補うだけの団結力が備わっているのよ」
とフィレンが答える。
確かに1人ではどうにもならないことでもみんなで協力することで解決できることも世の中多いものだ。
みんなで力を合わせて勝ちたいなと思うレンだった。
レンは、人気がない場所でエリアスと話をしていた。
「聞こえた話だとまだ封龍の森に変化は起きてないみたいだよ」
とエリアスが言った。
「なら良かった!今は出来るだけ時間が欲しいもんな」
とレンが返す。
正直、時間はあればあるだけ助かる。住民の避難をしなければならないからだ。
だが、街の人たちは、少しでも役に立とうと働き逃げようとする様子がない。
「レンは、どうするの?」
とエリアスが聞く。
「逃げたいと言いたいけどさ、違うと思うんだよね」
異世界で初めて訪れた街だ。見捨てたくはない。
「それに、エリアスも戦うんだろう?」
とレンは聞いた。
ギルドには、大切な友人のアリーもいる。ギルド職員は、街に残って働く必要がある。それをエリアスが見捨てるはずはないとレンは思った。
「うん!そうだよ」
エリアスは、力強く答えた。
ならばレンの答えも決まっている。ここで戦うのだ。
そして現在レン達はギルドに待機していた。いつモンスターパレードが起こっても対策できるようにだ。
どのように戦うかを話し合っていた。
指揮は、ギルド長のフィレンがとっている。
「作戦といっても単純なものしかないわ!バリケードを使って街への侵入を防ぎながら敵を倒すわ」
レンも、その方が良いだろうと思った。この街の戦力を考える限り、守りながらの方が良い。
レン達が、どう戦うかを話し合っていた頃、封龍の森では、黒いフードを被った集団が怪しいマジックアイテムを使用していた。
「準備は、どうだ?」
無機質な声で男が聞いた。
「まもなく終わりそうだ」
マジックアイテムを使用している男が言った。
「フェレンスを見たがバリケードを作っていたな。だが我々はワイバーンの洗脳に成功したのだ。無駄なことを」
クククと男は笑った。
「さすがに黒いドラゴンを操ることはできなかったようだが…」
少し残念そうに呟く。
「だか王都ならともかく、強い冒険者のいない街相手ならば十分だろう」
黒いフードの集団の近くには多くの魔物がまだかまだか、と興奮したように存在していた。
フェレンスに、刻一刻と恐怖が迫っているのだった。
戦いの始まりは近い。