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353話神の神頼みと頑張る息子へ

「ゴホッ……ゴホッ……」


神界に戻ったリディエル神が地面に倒れ込みながら吐血する。それを人型になったフェンリルが抱き起こしていた。


「無茶するね、リディエル神。下手に干渉すると死んでしまうよ」


「ありがとう、フェンリル。ですが、私も干渉した甲斐がありました。まさか、あの様なひと時しか保たないとは思いませんでしたが……」


どうにか呼吸を落ち着けて、リディエルが話す。神聖国から遠く離れた地、魔王領に顕現するのにはかなりの負担を強いられた。信仰のない相性の悪い地に顕現出来たこと自体が奇跡と言ってもいい状況だと言える。


「うっかり死んだらどうするってんだい……アンタみたいな変わり者の神は嫌いじゃないがね」


フェンリルがぶっきらぼうに言う。だが、正直な所エリアスが無事で嬉しく思っているのだが


「放置すればいずれ、世界が滅びます。さすれば、私としても神聖国を民を見つめることすら出来なくなります。それは、嫌なものです」


「良い神様で神聖国は幸せだね〜。それにしても、干渉した甲斐があったってことは、どうにかなりそうなのかい?」


リディエル神の少し前の言葉を振り返りフェンリルが聞く。


「はい、今回に関しては大丈夫です。成り行きを捉えました。しかし……」


「犠牲が出ると?」


「ええ、すでに賢者や魔王が犠牲になっており世界的に損失は大きいですが……」


暗い表情になる。先を捉えてしまうと言うのは辛いものだ。神であろうとも情は湧く。


「これを乗り越えても厳しいってわけだね……」


「ええ、賢者の弟子ミラも辛いでしょうが。それ以上に……レン・オリガミが苦しむことになります。再び立ち上がれるかもわかりません」


エリアスに支えられているレンを眺めながらリディエルが呟いた。レンの存在は大きく、彼なしではベルゼを倒すことも厳しくなることだろう。


「見守るしか出来ないのは歯痒いねぇ」


「ええ、神なのに祈ることしか出来ないのは嫌なものです……」


祈り先のない祈りをリディエルは、持つのだった。







目の前で、子供が転んで倒れた。それでも子供は泣かずに立ち上がる。


「見せてご覧?」


そうレミが声をかけると、前を向いていた子供が振り向いて足を見せる。転んで血が出てしまっている。


「ん……」


「良く頑張った!すぐに消毒しようか」


必死な顔で泣くのを堪えている我が子レンを見つめて優しく微笑む。本当ならば今にも泣いて母に抱きつきたいのだろうが、我慢している様だ。


「抱っこしてあげる。いくよ!」


と言い息子を抱き上げるとそのまま運ぶ。さっきまでの泣きそうな顔は笑顔に変わり愛おしさが溢れてくるのを感じた。


「痛いの痛いの誰に飛ばす?」


「パパ〜」


「俺かよ!」


気を利かせて、救急箱を取りに行ってくれていた父ライが笑いながら戻ってくる。


「母さんにベッタリと甘えちゃってよー。レンの将来が心配だなぁ?」


「大丈夫よ、この子ならちゃんと生きていける。強い子なんだから!」



どこにでもある他愛ない家族の様子……


200年も前の記憶をレミは思い出していた。あの頃の息子と今の息子が重なって見えたのだろう。







「レン!もうやめて、身体が保たない!」


「このままじゃみんな死ぬ!どうにかしないと!」


エリアスの制止を聞かずに再び魔法を使おうとするが、その身体はすでにボロボロだ。目からは血涙が流れ立っているのがやっとの様だ。


「次が降ってくる……」


「お姉ちゃん……」


アイリは、アンナにしがみついていた。これ以上、どう保たせれば良いのか……わかるものは少ない。


空からは4発目の闇が降り注ぐ。



「ちくしょう……」


レンが呟き、無意味だとわかりつつエリアスを庇う様な態勢に入った時……


「よく頑張ったね、レン。後はお母さんに任せて」


静かに覚悟を決めたレミは、息子の頭を撫で前に立つのだった。

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