351話混沌と5つの攻撃
「マジックボックス展開!」
「フェンリル・ライトニング」
「剣神の舞い」
「盾神の防壁」
「フェアリーアロー」
「マキシマムマジック、ファイア!」
「マジックバレット」
「魔拳弾」
「闇魔法、黒鎧」
それぞれが技を発動してベルゼに迫る。ただ目の前の敵、災厄となった者を倒すためだけに。
「ここにいる者だけで、ここら周辺の国の最大戦力クラスじゃろうな。良い準備運動になりそうじゃわい!」
ベルゼが拳に力を入れた瞬間に、圧倒的重圧がレン達にのしかかる。
「そんな、魔法が!」
先に放たれていたレミ達の魔法が、弾き飛ばされていた。ここにいる者の攻撃は生半可なものではない。それすら容易く敵はいなせるのだ。
「ベルゼぇぇ!形状変化、大鎌」
「フハハハハハ!とてつもない力だ。さあ、吹き飛ぶが良い!」
レンの攻撃ですら、ベルゼには受け止められている。何度の大鎌を振い続けてもそれが当たることはない。
「貫け、ライトニング!」
「神獣の力か!じゃが、その程度では貫けぬ!お主に風穴が開くぞ」
細剣でベルゼに攻撃を仕掛けるエリアス。しかし、圧倒的速度と刺突を誇る彼女の攻撃も届かない。
「エリアス、退がれ!」
「私が!盾神の加護……キャァ!」
アイリがベルゼの攻撃を受け止めて後ろに飛ぶ。後ろに飛ばされただけで済んだのも彼女の防御力の高さのお陰だろう。
「アイリ!剣神の演舞」
「吹き飛ぶのじゃな!」
ベルゼが一言言った瞬間にレン達は、1人残らず後ろに吹き飛ばされた。ベルゼを中心に黒い風が吹き荒れ始めた。その場にいるだけで並のものであれば卒倒していたであろう力だ。
「これまでの相手の比じゃない!」
「当然じゃ、最も強力なディザスターの力を取り込んでおるのじゃからな。魔王には感謝せねばのぉ!」
「貴様が父上を殺しておいてぇ!」
クシフォンが地面に拳を叩きつける。手から血が出るのもお構いなしだ。
「身体の調子は良いようじゃの!さて、このような茶番も終わらせるとしようかの。終焉じゃ、お主達のな」
と言いながら、ベルゼが空に浮かび始める。
「なにをするつもり……」
闇が広がる空に巨大な魔法陣が浮かんだ。
「お主らに見せ、そして喰らわせてやろう。まさしく、混沌の魔法じゃ!」
空から声が響き、地上にいる者にもハッキリと聞こえる。
「カオスマジック、フィフスフォールン!」
魔法陣の周囲に五つの闇の塊が現れる。たった1つでも王都をあっさりと吹き飛ばせるのではないかと言えるほどの力を感じさせた。
「不味いだろ、あれは!」
「1発でも危ないというのに、それが5発」
マグノリアが呟く。驚きで杖を手から落としている。
「5発、防ぎ切れるかのぉ?その頃には、全員消し炭じゃろうて。1発耐えるだけでも面白いのぉ」
ベルゼは、楽しんでいる。圧倒的なまでの力を手にした彼に敵はいない。
「あんなのを防げるのは、カラミィの全開の結界魔法くらいよ!」
「賢者であれば、もうこの世におらんよ!あれは、不出来な弟子を庇って死ぬことを選んだ愚か者じゃからのぉ!ワハハハハハ!」
ベルゼの笑い声が響く。別の場所で戦う救国の英雄達にも聞こえたことだろう。
「う、嘘でしょ。そんな……」
勢いのままフィレンが弓を引いて放つが届かない。
賢者カラミィの死は、周囲に衝撃を撒いていた。それだけ予想外の出来事なのだ。
「さあ、喰らうのじゃな!ファーストフォールン」
膨大な闇の力がレン達めがけて滝のごとく降り注ぐ。
「この後なんて、わからない。だけど、目の前ものを防がないと!障壁展開!」
レンがアイテムボックスから取り出した盾を構えて叫ぶのだった。




