342話馬鹿な師弟と最愛の子
「間に合え!」
転移でカラミィの前に飛び出すミラ。その時、すでにマサトは剣を振り上げていた。すぐさまカラミィを突き飛ばして自らも回避する。
「ミラ!」
「ぐうっ……」
地面に倒れ込んだミラにカラミィが声をかける。直後、目に入ったのは左目を斬られたミラだった。
「回復を!」
ルティアがミラの治療をするため、向かおうとする。しかし、
ルティアの前に立ち塞がったのはマサトだった。今度はルティアに狙いを定めたようだ。
「近づかせないつもりね!ぶっ飛ばしてでも通らせてもらうわ!」
ルティアとマサトがぶつかる。
「私が馬鹿だった……マサトが呟いた言葉を信じるだなんて……あいつはもういないのに……」
「諦めるなよ馬鹿師匠!呟いてたならチャンスは、あるだろ。大切な人なら諦めるな……」
ミラがそう言いながら立ち上がる。血がついて前がよく見えないため、眼鏡を外す。
「こんなに怪我をして……師匠が馬鹿なら弟子も馬鹿じゃないか!」
カラミィが言いながら、マサトを追いかける。
「本当そうだよね、馬鹿師弟だ!」
とミラも続くのだった。
「聖拳!からの……ファイアドール!」
炎の人形がマサトに襲いかかる。少しでも手数を増やせばそれだけ時間が稼げるのだ。
「レンの力が切れたら、マサトととはやり合えない。出来るだけ押さないと!」
「マジックバレット!」
「ファイアウォール」
マサトの周りに魔法が展開される。ルティアが振り向くと、そこにはカラミィとミラがいた。さらに魔法が放たれマサトを攻撃し続ける。
「ミラ、目を!」
「後でで良い、今は、こいつに集中する」
目を治そうとするルティアにミラが言う。今のうちに少しでもダメージを与えておきたい考えだ。
魔法の嵐の中、立ち上がる。まだ、マサトは倒れない。
「城の一部が壊れた!」
ドーン!と音がなり、壁に穴が空いたのが見える。下手をすればそこからスティグマの魔物が入り込んでくることだろう。
「城の中にいるのも時間の問題か……」
と魔王が告げる。
「ホッホッホ、おや、魔王にレン・オリガミ。元気そうじゃのう?」
目の前に、いつの間にか老人と仮面の者が立っていた。
「転移ね、城に穴を開けたから容易く入ってきたってわけね」
「おお、マグノリア。久しぶりじゃのう!お主が裏切るとはのぉ残念じゃな」
ベルゼがマグノリアに向けて言う。
「人を洗脳しておいて、最低ね。私は、徹底的に邪魔をするわよ!」
と言いながら杖を構える。
「ふむふむ、まあ良い。まずは自己紹介じゃ!ワシはベルゼ。スティグマのトップじゃよ。そしてこいつがな」
と言うと、仮面の者が前に進み出る。そして、仮面を取る。
「まさか、嘘でしょ……」
マグノリアが息を飲んだ。あらわになった顔は知っている者。
「ヒラルテや、本当の名前をマグノリアに教えてやってくれるかのぉ?」
とベルゼに言われて、ヒラルテの口が開く。
「リータ」
たった3文字、それだけでマグノリアには、衝撃が走る。
「どうじゃ、最愛の息子との再会は?じゃが、敵どうしとはのぉ!」
魔王城にベルゼの笑い声が響くのだった。




