331話見守る者と敗北の苦しみ
魔王領を遥遠く、別の世界から見守る者達がいた。
「嫌な予感がします。非常に不味いことが起きるかと」
リディエル神聖国の守護神、女神リディエルは地上を見下ろしながら呟く。神聖国に起こった以上の災厄が起きる可能性を感じていた。
「スティグマかね……」
フェンリルものっしのっしと歩いてくる。
「ええ、フェンリル。レン・オリガミに対してスティグマのトップが語りましたが、奴らの狙いはディザスターの力だそうです」
「敵はそれだけのスキルを持っているんだろう?酷いスキルが敵に渡ったものだねぇ」
話には聞いたが、力を奪い取り自らのものにするというもの。一度だけの条件付きとはいえ、それで、最強の力を奪えれば良いのだ。
「ディザスターを出すためには魔族の生贄が必要ですが……確かに魔王の娘を使えば、強力なモノを呼び出せるかもしれませんね」
「じゃあ、そろそろ仕掛けて来そうだね。リディエル神の力で助けたりとかは出来ないのかい?」
フェンリルとしても、現地に力を与えたエリアスがいるためどうにかしてやりたい気持ちもある。
「魔王領と神では相性があまり良くないのです。神聖国ほど長い時間止まれるかわかりませんし……それに、まず私が赴けるかもわかりません」
リディエル神としても助けたいのは山々だ。しかし、自らを信仰する国と別の国では勝手が違う。
神といえども限界がある。
「期待するしかないかね……レン・オリガミや他の英雄達に」
街から帰っていく、レンやエリアス達の姿を見ながらフェンリルが言う。
「レン・オリガミ……彼であれば私の力を貸せるかも」
リディエル神聖国で、彼と合わさった時はディザスターを圧倒するだけの力を発揮できた。今回は条件が悪いが、ある程度の力を貸すことも出来るかもしれない。
「あの子達は勝てるのかねぇ?」
「わかりません、負ければ世界が崩壊する危険もあります。常に世界は危機がついているので、これもその一つの出来事に過ぎないと言えるかもしれませんが」
「神ってのは、ほとんど見てるだけだから良いね〜今のは聞かなかったことにしておいてくれ」
フェンリルがボヤく。神が助けることはそこまで多いといえない。ただ上から不味いねとコメントをするだけだ。
「多くの神がそうですね、しかし、良く見ておかないと喰われるのはこちらになるかもしれない」
世界には、時々であるが神に近づく人間もいる。油断して撃たれた神がいないわけではない。
「ディザスターはヘタすると、神界に来ると?」
「そうですね、あり得ますよ」
と言う。
「それは倒して欲しいね〜、私はあんなのと戦える気がしないよ」
「そうですね、レン・オリガミには特に頑張ってほしい所です。ですが、負ければ1番苦しむことになるのは彼になるでしょうが……」
とリディエルは呟くのだった。




