323話急な結婚と墓前にて
余りに急なことではあるが、レンはエリアスとルティア、両方と結婚することになったようだ。
「マジか……現実なんだよな……」
『マジです、マスター。これから、マスターはエリアスとルティアを伴侶として人生を生きることとなります。お互いにぶつかることもあると思いますが、協力して生き、子供を育てて生涯を終えると思われます』
いつにも増してナビゲーターさんの発言が長い。そこまで詳しく説明しなくても……とレンは思った。
お母さんに、2人と結婚することになると話した時は、驚いていたが喜んでくれた。それがエリアスとルティアで有れば尚のことだ。
「早く結婚式を見たいわ!」
これまで見たことがない程にはしゃぐ母を見ると、レンとしても驚いてしまう。
第3王女であるルティアの結婚式ともなれば、盛大に行うことなるらしいがそれよりも少ない人数で儀式的な感覚でやっておこうという話が持ち上がった。
そして現在、少しの時間であるが場所を借りた教会で式を行おうとしている。
服装はいつも通りだ。
なぜか神父役は、ミラが買って出ていた。師匠であるカラミィから借りたという衣装を着ており、それっぽい。
レンとエリアス、ルティアが並ぶ。真ん中はレンだ。
レンの母と、ルティアの両親がいるだけの本当にこじんまりとしたものだ。
「汝レン・オリガミは、エリアス・ミリーとルティア・ファン・アルセンティアを妻として迎え一生をかけ愛し抜くと誓いますか?」
「誓います」
「では、エリアス・ミリーとルティア・ファン・アルセンティアは、レン・オリガミを夫として迎え一生をかけ愛し抜くことを誓いますか?」
「「誓います」」
「では、指輪を……」
とやっていった。
「本番の盛大な結婚式もたのしみだなぁ!こりゃあスティグマをぶっ潰さないとね〜」
式が終わった後、ミラが言う。
「息子の結婚まで見られるなんて、生きていて良かった」
とレミが言う。身体もかなり回復したようで今では1人でも歩くことが出来ている。式の途中も父の写真が映ったスマホを持っていた。
「盛大な結婚式とか緊張で大変そうだけど、お母さんも来てくれよ?」
「ええ、平和になった世界でレン達の姿を見守りたいわね」
とどこかうるうるした表情で言う。もう泣いちゃったかぁと思う。
「レン殿、おめでとう。最後の娘が嫁いでしまうと悲しいものだ。幸せにしてやってくれ」
「はい、ルティアの夫であることに恥じないよう努力します」
と答える。
「気楽で良いのよぉ〜、無理をしたらルティアもエリアスちゃんも喜ばないから」
「はい」
「レミさん、行きたい場所があるの」
とエリアスが話していた。なんだろうと思いながら、近づくとエリアスに一緒に来て欲しいと言われレミの転移魔法で跳ぶ。
着いた場所は、野原だった。だが、周囲を見回すとすでに壊れた家の様なものがいくつか見られた。
「ここって……」
レンが呟くとエリアスが答える。
「私の故郷……」
大きな石が2つ並べられており、そこには何かあるんだろうなとレンに感じさせた。レミは、後ろで見ているようだが、レンはエリアスについていく。
「ただいま……やっと帰って来れたよ、遅くなってごめんね」
大きな2つの石に向かってエリアスが言う。
レンは黙っていた。聞かずともエリアスが誰に話しかけているかなどわかっている。
「本当に色々なことがあったんだ……ずっと1人ぼっちだった。迷子になったみたいだった。でももう、それも終わったの」
エリアスの頬を涙が伝う。
「後ろにいる人は、レン・オリガミ。私を救ってくれた人!多くの人を救える素敵な人。そんな人が私を好きって……1番だって」
涙を流しながらもハッキリと話す。
「私を愛してくれる彼と結婚します。だから心配ないよ!2人の娘は、強く生きていくから」
と言い、涙が止まらなくなる。
さっきの結婚式、レンやルティアは親がいた。自分の親はいない……悲しかったのだろう。
『マスター……いえ、必要なかったですね』
ナビゲーターの言葉の前に、レンはエリアスの肩に手を添える。
「レン・オリガミです!お2人に誓います、彼女を愛すことを。娘さんを俺にください!」
と言い頭を下げる。エリアスは、一瞬驚いた後に一緒に頭を下げる。
そんな2人を祝福するかのように暖かい風が野原を揺らすのだった。




