322話1回だけとレンの決断
王妃の発言に対してのレンの驚きは、後ろからの声に掻き消されることになった。
「ちょっと!どう言うことよ!」
のしのしとルティアがこちらのテーブルに向かって歩いてくる。その顔は衝撃の発言を食らったためか赤くなっている。
「あら、ルティアちゃんは喜んでくれるかなぁと思ったんだけど〜」
ふふふっと微笑みを浮かべながらルティアに言う。
「ぐぬぬ……」
ルティアは、返す言葉が思い浮かばないようで唸っている。
『王女を嫁に差し出すとは、相当な報酬ですね。どうするんですか?マスター』
ナビゲーターさんは、楽しんでいるような様子がある。そろそろこの話は来そうな気はしていたが……
「レン殿はどう思ってるだろうか?これ以上にない宝物だと私達は思っている」
国王がおずおずと聞いてくる。
王女を報酬とは、やはり異世界なのかぁと思いながら口を開く。
「俺には、エリアスがいます。彼女が俺にとっての1番です!だから、俺がルティアを大切に出来るかわかりません。それでもルティアを渡しますか?」
「そんなこと心配しないわよ。レン君は、全く得もないのに帝国まで戦いに行ってくれたんだもの」
「ルティアを幸せに出来るのはレン殿だけだな。君でなければ誰もいない。どうかルティアをもらってくれないか?」
信じている、否、確信している。そんな表情だ。
「ルティアは、どうなんだ?俺なんかで良いのか?」
言葉が出ない様子のルティアに話を振る。彼女が1番大きく関わっているのだ。聞かないわけにはいかないだろう。
一同の注目が集まるルティアは、顔を赤くしていた。
「1回しか言わないわよ、レン!私は、あんたが好きよ!貰えるものはなんでも貰っておきなさい!この鈍感……」
と言い放って走っていってしまった。私が行くから〜と言ってミラが追いかけていった。
「あらあら、あの子は良いみたいだけどね。レン君どうかしら?それにエリアスちゃんも」
これは、ほぼ確定で追い込まれてしまっただろう。
「エリアス、どうだ?」
「レンは、ルティアのことどれくらい好き?私を省いて考えるとしたら」
エリアスに振ってみるが返ってきた。
『人に任せてはいけませんよ、マスター。あなたが決めないと』
ナビゲーターさんの言葉が痛い。
「エリアスを省いたらルティアが1番好きだよ。王女らしくない所も、聖女になるために頑張っている所もな」
何気にエリアスの次に長い付き合いかもしれない。会った時からずっと付いてきている。
「だったらルティアにも答えてあげたら良いと思うな、ルティアも待ってる」
とエリアスに言われる。
「エリアスは、良いのか?」
「ルティアだから、それに私は、レンの1番なんでしょ?そこは絶対に譲らない!」
楽しそうに言っている。エリアスにとってもルティアは、大切な人なのだ。
結論は出たようだ。
レンは、国王と王妃……ルティアの両親に顔を向ける。
「ルティアを頂きます。俺が幸せにしてみせると約束します!」
と伝える。
廊下では、ヒュ〜と口笛を吹くミラの隣でルティアは、恥ずかしそうにしているのだった。




