313話突然の撤退と元帥襲来
魔人の足止めに現れたのは、城に向かったはずのメルフィーユだった。
「皇子を保護してもらったからね、このままこっちに来たのさ」
近くには、皇子を抱えたナビゲーターも立っていた。皇子を守るのが彼女の役割であるため、ナビゲーターが皇子を連れて城を出るときに偶々発見してついてきたと言うわけだ。
「城が!」
直後、城が崩落する。そこからディザスターが飛び出してくるのが見えた。だが、こちらも向こうを気にしている余裕がない。
「とりあえず、こいつを倒してしまおうじゃないか、エリーちゃん」
魔人の足を覆っていた氷がさらに広がっていく。そこに、ワイバーンに乗ったフィレンも続く。
「レンの矢、使わせて貰うわよ!」
と言いながら魔人の胴体に数本の矢を放つ。直後に魔人の身体が爆発を起こしダメージを蓄積していく。
「ガァぁぁぁぁぁ!」
魔人が悲鳴を上げて暴れ始める。しかし、氷漬けにされた足ではあっさりと転倒してしまうものだ。
「大剣のスキルチャージ完了、はぁぁぁぁぁぁ!これで終わりだ!」
エリアスが飛び上がって、魔人サジャードにとどめを刺そうとする。これで、1つ乗り越えることが出来ると思った瞬間にエリアスに声が飛ぶ。
「エリアス、避けてェェェェ!」
誰が叫んだだろうか。それを確認する余裕すらなかった。恐ろしい衝撃波の様なものがエリアス目掛けて飛んできていた。
喰らえば一瞬でバラバラになるかもしれない。それだけのものをエリアスは感じ取った。
「エリアスさん!私の後ろに」
前に出たのはアイリだ。ようやくこの場所に追いついたもののとてつもない衝撃がエリアスに向かっていたため前に出る。
「踏ん張るよ!」
アイリの背中をエリアスが支える。
「はい!〈防壁〉」
アイリがスキルを発動させる。
だが、勢いを完全に殺すことは出来ずに2人は、城の方に向かって吹き飛ばされていく。
「嘘……でしょ……」
ルティアがゆっくりと声を出す。遥遠くから地面はえぐれていた。それだけ遠くからこちらに向けて攻撃を放ったのだ。
一同が茫然とする中で、マグノリアの行動は早い
「ミラ、急いで全員を私の所に転移させなさい!」
「わかった!《アーカイバ》」
事前に打ち合わせはしていたため、ミラも声をかけられてすぐに動いた。すぐさまルティアの手を取り、《範囲選択》を使用してここにいる味方全員に転移を発動する。
全員がマグノリアの近くに転移する。MPが少なくなっているミラでは、この距離でもやっとだ。
「これは、撤退よ!状況が悪すぎる〈転移〉」
とマグノリアが言った瞬間に、その場にいた者達は消え去る。
魔人サジャードの元に1人の老人が立つ。
「ほうほう、サジャードが随分とやられたもんじゃのう。どれ?」
と老人が喋りながら何かスキルを使った直後、魔人はボロボロのサジャードに戻る。
まだ生きているのを確認して、
「そこにおるじゃろう?ヒラルテ」
「はい、元帥様。ここにおります」
と言いながら頭を下げる。仮面をつけているため、顔は見えない。性別も見分けがつかない身体つきだ。
「サジャードを持って帰れ」
「はっ!しかし、元帥様は如何なされますか?」
「ワシは、少し遊んで来るかのぉ。この先に生きがいいのがいるでの」
と言い歩き始める。
後ろでは、ヒラルテでサジャードを抱えて消える。
「この感じ、マグノリアかの。記憶を取り戻したか、まぁそのうち会えよう。今は、ディザスターじゃ。食い甲斐のある奴だと嬉しいがの」
と言いながら崩落した城の方に向かって歩き出すのだった。
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