307話サジャード戦開始と提案
「イヒヒ、この前ボロボロになって助けられてた獣風情がどこまでやれますかねぇ!ハハハ」
地面に着地したサジャードが、空から降ってくるエリアスに言葉を投げかける。
「私があなたを倒す、そうレンに約束した。あなたには、絶対に負けない!」
エリアスの手には、二丁の銃が握られている。ハルカから借りてきたものだ。サジャードに向けてすぐさま引き金を引く。
乾いた音が2つ鳴り、サジャードはそれを回避していた。
「そんな武器まで使いこなすとは、キャハハハ!」
「私、どんな武器でも使いこなせるようになれるから」
と言いながら剣を抜き取り、サジャードに突きつける。
「イヒヒ、楽しめそうですねぇ〜」
「ここでお前を終わらせる、フェンリル!」
エリアスが力を解放する。因縁の対決が幕を開けようとしていた。
「エリアス……大丈夫かしら?」
上空から下の様子を見ているルティアが呟く。相手は、スティグマの中でもトップクラスの実力をもつ者……不安にもなる。
「もしもの時は、私達も全力で助ける。そうすれば良いよ」
「本当に気楽なことを言うわね」
ミラの言葉にルティアが答える。
「エリアスを信じてる。彼女は、あの時のままじゃない。私達が強くなったように彼女もさらに強くなっている。私はそう確信しているんだよ、ルティア」
いつになく真面目な表情で語るミラにルティアは、驚きつつも頷く。いつでも支えられるようにと。
「デーモンも出てきたわね、迎撃やるわよ!」
と言うフィレンの言葉が飛び、エリアスに注意しつつルティアとミラも魔法を放つのだった。
「うぉぉぉぉぉ!」
「はぁぁぁぁぁ!」
城の中、行手を塞ぐデーモンをレンとメルフィーユの2人は斬り裂く。
メルフィーユは、魔法剣士という戦闘スタイルだ。剣に魔法を付与し状況に合わせて変えるなどして戦っている。
「どこかに皇子が居るんだろうね……」
「ええ、それもディザスターの近くかもしれませんね……」
本当は、デリートで魔門すらも消滅させてしまいたい所だが、それを行うと人質である皇子が殺されるかもしれない。保護対象であるためそれは避けたいのだ。
だが、エリアス達に危害が及ぶなら皇子を見捨てることもやぶさかではないのだ。
正直、依頼をした国王達も結果は絶望的であるものと予想できているだろう。せめてディザスターを討ちとれればという所だ。しかし、それと何もしないで諦めるとは違うため最後まで戦わなければならない。
「とにかく探すしかないですね!」
「ああ!そうだね」
と2人が話していると、城が大きく揺れる。レンがいる場所とメルフィーユがいる場所が分断されてしまう。
「まさか、見られているのか?」
今のはディザスターの仕業ではないかと思ってしまう。
「ちっ、これは大変だね……レン、先に行ってくれるかい?私も後で追いつくから」
「わかりました!」
レンは移動を始める。外では、エリアスがサジャードと戦っているので、出来るだけ急いで彼女のもとに駆け付けたい気持ちもあるが、彼女は、倒すと言った。それを信じてレンは、城を走る。
「ナビゲーターさん、みんなの様子はどうだ?」
『善戦してます。しかし、数も多いため余裕があるとは言えませんね』
と答えが返ってくる。確かに、ディザスターの手駒やスティグマは厄介なものだ。
「ナビゲーターさんも出した方が良いかな?」
『それもありですが、実験も込みで別の方法を試してみましょう』
ナビゲーターさんも戦力になるため、投入しようかと思うが別の案があるようだ。
「それって?」
『マスター、新たなユニークスキル《インポート》の解析が終わりました。マスターの仲間が大勢いる現状に置いて良いものです』
「なるほど、ユニークスキルか!なら使ってみようかな」
とレンは答えるのだった。




