302話分担と帝国領入り
「飛びながら作戦会議でもするかぁ」
「相手は、こちらが来るのがわかっているから数手先を読まないとね」
レンの言葉にフィレンが答える。
「相手は、ディザスターだけならマシって訳ではないけれど、スティグマがいたら厳しいよね」
正直、スティグマがいると考えた方が良いだろうと思う。それくらいを想定しなければ勝つことはできない。
「相手の数にもよるけど、分担しよう。ギルド長は、上空からの遊撃で。マグノリアは、転移での撤退時のために待機だな」
「ええ、それが良いわね。魔物なんかも捌いていくわ」
と頷く。弓が武器であるため出来るだけ安全圏で戦って欲しい。
「わかった。スティグマに見つかると厄介だから、姿を隠しておくわ」
裏切り者である彼女は、見つかれば大変かもしれない。口を塞ぐためどうな手段を取ってくるかわからないのだ。
「状況によっては、それが有利に働くかもだけど」
マグノリアという元スティグマは、良いカードになる。
「ルティアとミラも上空待機が良いかな……魔法での援護と怪我した時の治療を頼む」
「わかったわ、下で戦いたいけど足を引っ張る可能性があるし」
「でも、私とルティアの《ユニークスキル》の組み合わせならどこからでも援護できるよぉ!」
ルティアは、残念そうだったが頷き、ミラは任せとけと言う。期待できそうだ。
「そして、残り……俺とエリアス、アンナとアイリだな。敵がディザスターだけならこの4人で戦っても良いと思う」
「そうだな……レンだけでも勝てそうならば、4人で行けば大丈夫だろう」
「私も頑張ります!」
アンナとアイリが頷く。
「問題は、スティグマがいた場合だね」
「ああ、そうだなエリアス。その場合は戦力を分けることになる」
エリアスの意見に頷いて答える。多分、そうなるだろうとすら思っているが、
「王国に来ていたスティグマが帝国にいるとは思いたくないわね」
シャンやマサトまでいると厄介でしかない。
「さすがにそれはないと思うわ……これまでは、私の転移が移動手段として用いられていたから。距離的にはまだ戻れていないはず」
とマグノリアがいう。
「だったらいいけど……もしも幹部が多ければ撤退も考えよう。後は、サジャードか……」
「私に……私がサジャードを倒す」
とエリアスが言った。
「勝てるのか?」
「勝つよ、そのために前より鍛えたから。全ての思いを力に変えて見せる」
いつもの柔らかさのない表情に気持ちが現れていた。
「ならサジャードは、エリアスに任せる。無理なら逃げてくれよ?アンナ達も手伝ってくれるか?
」
「うん、大丈夫」
とエリアスが頷くのだった。アンナとアイリもうなずいていた。
「スティグマのトップの元帥って奴がいたら厄介だな……その場合は、撤退も視野に入れておこう。逃げる時は、空に火の魔法を打ち上げるからとにかく生き残ることを優先でな」
皇子の身柄も保護したいが、そのために仲間を失うなどしたくはない。出来るだけ早く皇子を発見したいものだなと思う。
「帝国領が見えてくるわよ」
とフィレンが言ったので見ると前方では、空が黒く染まっておりこれまでにも目にしてきた門が空にあった。ディザスターが故意に閉じているため、門は開いてない状態だ。
眼下に見える帝国領は、魔物が蔓延り酷い状況だった。




