300話テイムと特等席
ワイバーン達は、レンの威圧を喰らい動くことが出来なかった。蛇に睨まれたカエルのような状況だ。
本来であれば人間と龍種、立場は龍種の方が上なのは当然だ。だが、この場面においては人間であるレンが圧倒的に上だった。
「誰か動こうって奴はいないか?」
レンが言葉を発するが動くワイバーンはいなかった。ワイバーンとしては、動けば殺されてしまうとさえ、感じている。
「別に殺そうとは思ってない。〈テイム〉を受け入れてくれないか?」
と言いながらレンは、スキルを発動する。自分のMPがワイバーン達に向かっていくのを感じた。
その後、ワイバーン達はレンの前に並んで恭しく頭を下げていた。
『成功ですね、マスター。初めから圧倒的な力を示すことが出来ていれば逆らわれることはありません』
無事にはじめてのテイムは成功した。
「エリアス、出てきて大丈夫だぞ!」
と言ったのでエリアスが走ってくる。
「おー!凄いね。私も威圧が強くてびっくりしたよ」
「ああ、悪いな。範囲が広かった!父さんとの修行のお陰か、かなり力が付いてるみたいだ」
驚かせてしまったのを謝る。
「これでフェレンスに戻る?」
「ああ、みんなビックリするだろうけどなぁ」
と面白そうにレンは笑う。
「悪そうな顔してるよ〜」
とエリアスに言われてしまう。そんな顔していたかぁ〜と思う。
「よーし、みんなでフェレンスに行ってみるかぁ!よろしくな」
レンは飛び乗ったワイバーンの頭を撫でる。
「グォーーー!」
と声を上げて飛び立つ。
「ワイバーンに乗って、空を飛ぶの気持ち良さそう」
レンの後ろに乗ったエリアスが腰に手を回しながら言う。レンとしても魔法で空を飛べるとはいえ楽しみだ。
レンが乗っているワイバーンを先頭に、後ろには他のワイバーン達が続く。
見事な隊列を作ってフェレンスまで飛んで行った。
「よし、街に入ると攻撃されるかもだからここら辺で降りるとしようか」
とレンが言うとワイバーンが降下する。街の方では、早速声が聞こえておりワイバーンがきて焦っているのかもしれない。
「あれ?レン殿ではないですか!どうして、ワイバーンに乗ってるんですか」
やってきたのはハルカだ。ワイバーンを討伐するためにきたのだろうが、レンがいたため向かってきたようだ。
「〈テイム〉したんですよ、ワイバーンで帝国の向かったら楽だろうなと思って」
と答える。
「なるほど、しかし、〈テイム〉を……この数をテイムするなんて聞いたことないですよ」
「マジですかぁ……できても1匹とかのパターンかな……」
〈テイム〉について、今度詳しく調べてみるのも面白そうだと思うのだった。
「レンが〈テイム〉した……」
「……ワイバーン!スッゲェ」
ルティアとミラが驚いていた。
「だろ!2人とも乗ってみるか?これで帝国に向かう予定だし」
レンは、ワイバーンに乗りながら2人に声をかける。
「空を飛ぶの楽しいよ!」
エリアスは、かなり楽しめたようだ。レンの後ろで言う。
「レンの後ろに乗ってるのずるいわね!エリアス、変わってよ」
「ここは私の特等席!」
ルティアの言葉にエリアスが返す。ギュッとレンの腰に腕を回してだ。
「むむっ」
何やら何か始まりそうな予感がするレンだった。




