299話ワイバーンとテイムの試み
帝国に向けての出発を数日後に控えて、レンとエリアスは封龍の森を訪れていた。のんびりと散歩でもしようという軽い感覚で来ている。
「レンは、ここら辺から出てきたんだよね?」
「ああ、別の空間から封龍の森に現れたみたいでな、また戻ることは出来ないかもしれない」
周囲を見渡しながら、歩みは止めない。
「魔物は、来てないみたいだな。これなら問題なく迎えるかなぁ」
「出来るだけ体力温存で行きたいもんね」
相手が相手だけに出来るだけノーダメージで行きたい。今のうちに目につく魔物は間引くのも良いのかもしれない。
『正直、封龍の森の突破のためには馬なども使えないため徒歩となると厄介ですね』
その通りなのだ。気の生え方的にも、馬が通るには厳しいものがある。森を吹き飛ばすわけにはいかないだろう。
「もう少し先の方に魔物の匂いがするよ」
エリアスが嗅覚で魔物を察知する。
「向かってみよう」
2人は、素早く森を駆け抜けていく。
少し開けた場所に出ると、その先で数匹のワイバーンが休んでいた。封龍の森だけにドラゴン系も住んでいる。
「まだ気づかれてないな……」
「倒しちゃう?」
とエリアスが聞いてきたので、考えてみる。
「ナビゲーターさん、テイムとか出来ないよね?」
『出来ないこともないですが、きちんとエサやりとか出来ますか?』
ペットが欲しいと親に頼んだときのような反応をされてしまう。
「大丈夫だと思う。街に入れてもらえるかは不安だけどなぁ」
「ワイバーンを飼い慣らしたら、魔物の駆除とかしてくれるんじゃない?」
とエリアスが提案する。
「それも便利だな、それに、あれに乗っていけば帝国なんてすぐに着くと思わないか?」
「それ良いね!森の上を通れれば無駄に戦わなくて済むし!」
エリアスが喜ぶ。
ワイバーンがいる所に向かってレンが歩き始める。
『スキル〈テイム〉をインストールしました。後は、マスターのセンス次第ですね。頑張ってください』
テイムを成功させるには、魔物に実力を認めさせなければならない。うっかり倒してしまわないよう気をつけたいと思う。
「頑張れー!」
岩陰でエリアスが応援してくる。これは、力が入るなぁと思いサムズアップを返す。
『エリアスの応援では、喜ぶのに私のでは喜びませんか』
ナビゲーターさんは、ご不満のようだ。
「頑張るよ、ナビゲーターさん」
と答えた。
「さーてと、この世界で初のテイムやっていきますかぁ」
ワイバーンがレンに気付いて唸り始める。
レンは、特に驚くこともなく堂々と歩いていく。王都ですでにワイバーンを倒したこともあるのでビビることはない。
そして、ワイバーンがレンに襲い掛かろうと飛び上がった瞬間にレンは、全力で威圧を放つ。
その瞬間、森が大きく揺らいだ感覚があった。
「すごっ……い」
離れているエリアスでさえもこれには驚いている。
レンの圧倒的な気によってワイバーン達は、1匹たりとも動くことは出来ないのだった。




