197話魔門の攻撃とそれぞれの戦い
「魔門で何を企んでる?」
レンは、飛んでくる矢を切り落としつつバローに聞く。
「スティグマの奴らは、実験と遊びのようだがな……俺達魔族は、魔王の娘を殺す。そのためにもあの結界を破壊する」
バローがそう言った時に、魔門がミシミシと開く。音からして不気味さを感じさせる。
「なんだ、あれは……」
開いた門の中……そこに見えたのは、巨大な目だ。ぎょろぎょろと動き結界に視線を向ける。
「スティグマが魔門の発動の仕方を教えてくれたが、一体どんなものか……」
とバローが呟く。
そして、門から黒い光線の様な物が発射される。狙いの先にあるのは、武道大会会場……結界だ。
「させるか、チェンジボックス!」
と言いレンは黒い光線と結界の中間地点に行き、チェンジボックスで盾を作り出す。両手を前に突き出して光線を迎え撃つ。
だが、光線の威力が強く。盾ごと押し返されて結界までレンは落ちていくのだった。
「今のは!」
サジャードと対峙していたエリアスが上空から降り注ぐ黒い光線を見て、驚く。
「ほーほー、発動しましたね〜。魔門の攻撃が、凄い威力でしょぉ?魔族の命を使っているだけあって凄いですね!」
パチパチと拍手しながらサジャードが笑う。
最初に、光線が止められたような動きをしていたが直後に結界に当たるのが見えた。
「もしかして、レンが……」
と自らの大切な人を気にしたが目の前の相手にも気が抜けない。
「さーて結界は、いつまで持ちますかねぇ?」
ナイフを舐めながらサジャードは、ご機嫌の様だ。
「ライトニング!」
エリアスが魔法も発動して、サジャードに攻撃を仕掛けにいく。レンの心臓すら貫いた一撃をサジャードに放つがそれすら回避され反撃に移られる。
「フフフ、面白い力ですねぇ〜!神か何かが関わってます?」
面白そうにサジャードが聞いてくるがエリアスは無視してさらに攻撃を放つ。だが、それすら受けきるサジャードには、レン相当の実力があるのではないかと考える。
「強い……」
ボソリとエリアスは呟くのだった。
「結構片付けたな。ハルカ!そっちはどうだ?」
目の前のスティグマに剣でトドメを刺してアルファードがハルカに声をかける。
「ええ、こちらも終わりました。上空にいる者達は、攻撃を仕掛けてきませんが、どういうつもりでしょうか?」
「さあな、奴らの考えなんて考えるだけ時間の無駄だ。それより急いでレンの援護に向かってやりたい所だが……」
と言った所で、アルファードは上空から降り注ぐ魔門の攻撃に気づく。アルファードの視力でレンが盾を作り出して攻撃を受け止めているのが見えた。
「レン殿が落ちて行きましたよ。結界の耐久も心配です」
直後にレンが落ちていくのを見たハルカが言う。そして助けに向かおうとした所で、アルファードが別の方向に視線を向けているのに気づく。
「こっちにも相手が来たみたいだぜ?魔の八翼とかいう奴らか?」
「魔王に次ぐ実力を持つっていう?そうですか、面倒ですが倒すしかないですね」
ハルカとアルファードは、武器を構える。そんな2人の前には、屈強な4人の魔族が向かってくるのだった。
「いたたた……光線に押し返されるかよ」
と言いながらレンは立ち上がる。光線を完全に止められなかったレンは、結界を突き抜けて舞台まで落ちた。
「レンのお陰で結界はまだ壊れてないが、後何回受けられるかわからないぞ」
とカラミィが言う。
「結界が壊れれば、空で待機してる魔族も攻めて来るだろうね。魔門の攻撃も観客に当たるね」
とネーヴァンが回復してくれる。
「数発耐えられるなら、光線を無視することも考えるべきですね」
「急ぎで頼むよ」
とネーヴァンに背中を叩かれレンは再び空に飛び上がる。
『マスター、バローの相手は私がしましょうか?その間に魔門を破壊した方が良いでしょう』
とナビゲーターさんが言ってくる。確かにバローの相手をしていては時間が勿体ない。その言葉に甘えることにする。
「メンテナンスは、良いのか?」
『まだ、完璧とは言えないですが、いくしかないでしょう』
と返事が返ってくる。
「また来たか!」
と言いながらバローが攻撃を仕掛けてこようとしたが、それよりも速くレンが動く。バローよりも高く飛び上がり魔門に近づこうとする。
「これでも喰らってろ!」
と言いレンは、下から追いかけてくるバロー目掛けて2メートル位の大きさの箱を投げる。
「なんだそれは!」
と言いながらバローが魔法を込めた矢を放ち箱を破壊しようとするが矢が着弾し煙が晴れた時には、箱はすでに開いていた。
バローは、自分を無視して魔門を目指すレンを追おうとしたが直後、自分とレンの間に人がいるのを見つける。
「全く、物のように投げるとは酷いですね、マスター。さて、気を取り直して私がお相手をします。どこからでもかかってきなさい!」
バローの目の前に現れたのは、金髪の美しい女性だった。漆黒のドレスに身を包みハイヒールを履いている。こんな場所ではなく、パーティ会場が似合いそうな姿に驚く。
「なんだ、お前は!」
「ふふ、初めまして。私はナビゲーターと申します。ここでマスターが魔門を破壊するまで私があなたの足止めをさせてもらいます」
と微笑む。
「ちっ、面倒なのが出てきやがって!」
と言いながら自らが乗っている龍を動かして矢でナビゲーターを狙う。
「マジックバレット」
矢は的確にナビゲーターを狙って飛ぶが、ナビゲーターが放った魔法によりあっさりと壊されバローに迫る。
レンは魔門に向かって飛んでいた。かなり近くまで来たため門がかなりの大きさに感じる。
「ん?」
レンが門に目を向けていると、こちらに向かって魔物が飛んできている。門から出てきているようで、見たことがない種類のものだ。
「まさか、あの門……魔界とかに繋がってたりして?」
悪魔のような形の魔物達を目にしてレンは呟くのだった。




