196話対スティグマ・魔族と仇
「会場の周辺にも魔族やスティグマが散っています。観客を守りつつ戦うしかないですね」
とハルカが言う。
「そうだね。カラミィには、結界を維持してもらうからここにいてもらおう。後は、フィレンが上から弓で援護して貰うとして……」
とネーヴァンが戦いの配置を決めていく。
敵が待ってくれる訳ではないため、急がなければならない。
会場の方を、カラミィ、ネーヴァン、フィレンで守り、後は外に出て敵と戦うことになった。
「魔門の方はどうするんだ?」
「そうだね……カラミィの結界がどれだけ持つかにもよるけどね。出来るだけすぐに破壊しないといけない」
アルファードに聞かれネーヴァンが考え込む。
「それなら、俺に任せて貰えませんか?魔門に近づくことが出来れば消すことが出来ると思います」
とレンが提案する。デリートを使えばどんな物でも消すことが出来る。魔門であっても大丈夫だろうと思う。
「任せても良いか?」
「レン殿であれば大丈夫でしょう。我々で援護すればどうにか出来ます」
「そうね、レンなら大丈夫だわ」
ハルカとフィレンがレンの考えに賛成してくれる。それだけ、レンの力を認めてくれている。
「レン、気をつけてね。私も頑張るから!」
とエリアスが言ってくる。
「ああ、大丈夫だ!すぐに戻ってくる」
と言いレンは、魔門に向かって飛び上がるのだった。
『スティグマが予定を早めて襲撃してきたが、大丈夫だ。救国の英雄や強力な冒険者がこの場を守る。だから少しの間我慢してくれ!』
と国王が観客達に呼びかける。カラミィの結界で観客達は外に出られないようになっているのだ。結界のお陰でパニックは避けられている。
「魔門に魔力が集まって行ってないかしら?」
とルティアが空を見ながら言う。
「そうだな、まもなく攻撃が来るかもしれない。そうなればどこまで持つだろうな?」
とフィーズが言う。
「全く……どこからこんなにスティグマや魔族が入ってきたのでしょうか?龍も飛んでいますし、何やら面倒なことになってきてますね」
ハルカが会場の外を歩きながら呟く。アイテムボックスからは、日本刀を取り出す。
「いけ!救国の英雄だー!討ちとれ」
と言いながら魔族やスティグマがハルカに向かって突撃してくる。
「なるほど、かかってきなさい!」
ハルカも走り出して、向かってくる敵を1人1人切り裂いていく。国を守るために躊躇など全くない。
「良くこんな人数を集めたもんだな、スティグマも」
龍を倒しながらアルファードが言う。スティグマに魔族となると人数がかなり多いのだ。
「ライトニング!」
エリアスもスティグマと戦っていた。明確な殺意を持って攻撃してくるため、迷ってなどいられない。
「近づいてみると随分不気味なものだな」
空を飛びながら魔門に迫るレンは、呟く。黒々とした門は地獄への入り口のようでもある。
「ダークアロー!」
レンに向かって矢が複数放たれた。
「来たか!」
と言いながらレンは矢を剣で叩き落とす。
目の前にいたのは龍に乗ったボロボロのフードの男だ。
「お前を魔門に辿り着かせるわけにはいかない!」
と言いながらボロボロの服を脱ぐ。すると、そこには、立派な2本のツノが生えた強面の魔族がいた。
「姿を隠す気はなくなったのか?」
とレンは呟く。
「全力をお前を倒すのみだ。魔の八翼が1人、バロー。その命もらうぞ!」
と言いレンに矢を放ってくる。
「暇は無いんだかな……やってやる!」
とレンも前に出る。
「ヒャハハ、面白そうなのがいるのでやっぱり戦おうかな〜と思って出てきちゃったぁ〜」
周囲の敵を倒していたエリアスの前にサジャードが現れる。
「あなたは……」
エリアスは、剣をサジャードに向けて警戒する。相手にかなりの余裕を感じたため気を抜かない。
「ハヒャヒャ、狼人族ってねぇ。思い出があるんですよぉ〜。もう10年は前かなぁ、狼人族の村をね滅ぼしたんです。それはそれは、気持ちの良いものでしたよ」
とサジャードが喋りだす。
「狼人族の村を滅ぼした?」
エリアスの剣を持つ手に力が入る。まさか?という思いがエリアスに湧く。
「ええ、病気を撒いたり1人の少女に呪いを与えたりしましたよぉ?あれぇ?知ってますぅ?」
エリアスを助けた時にレミが言っていたのを思い出した。1人に逃げられたと……
「あの時、逃げたのはまさか……」
「いや〜ハハ〜、光明の魔女が来たからそこで残念ながら逃げたんですけどね。あれは、本当に楽しかったなぁ〜」
過去を思い出すように気持ちの悪い笑みを浮かべているサジャードに対してエリアスに怒りが込み上げる。
「そういうことか……お前が、お父さんとお母さんを……フェンリル!」
エリアスがとてつもない速さで動き、サジャードの首を狙う。
取った!とエリアスは思ったが、剣は、ガキンっと音を立ててサジャードに防がれていた。
「面白いですね〜!シャハハ、あの時のガキが生きていたなんて!とっくに呪いでのたれ死んだと思ったのにぃ」
ニタニタとエリアスを見ながら言葉を発してくるのに、エリアスはイライラするのを感じた。
「お前を殺す!」
仇との戦いが幕を開けようとしていた。




