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195話束の間の告白とスティグマ襲撃

「来てくれ、エリアス」


「え?ええ……」


レンは、控え室に帰ろうとしていたエリアスを引っ張って舞台にまで戻る。


そして、舞台の中央まで行って手を離しエリアスに少し背を向けて二歩ほど歩く。


(勢いでここまで連れてきたけど……どう話したら良いか全然思いつかない!)


とりあえず、エリアスをそのまま帰すのだけは避けたかった。


『マスター、飾っている場合ではありません。もう正直に自分が思っていることだけを言うだけです!』


ナビゲーターさんに背中を無理矢理押されるような感覚を感じた気がした。


『ごめんなエリアス。今回勝ったのは俺だ』


レンは、魔法を使って自分の声が周囲にも聞こえるようにした。


『そうだね……今回は私の負け。またチャンスをくれる?私はあなたを諦められない』


エリアスは、また強くなってレンに戦いを挑む考えのようだ。普通に言葉にするのが出来ないのがエリアスらしいとは思う。



『いや、もう二度とそれは受けない』


とレンが言った瞬間に会場中が凍りつくような感覚に陥るのを感じた。


『そう……じゃあ、終わりだね……』


とエリアスが再び戻ろうとする。


『いや、今のは誤解されやすい言い方だよな。ごめん!俺もエリアスが好きだ。これまでずっとその内って思って先延ばしにしてたからな……』


とレンが言う。


『私が待てなかった……レンが誰かの方を見るかもって思うとね』



自分がいけなかったなとレンは思い、覚悟を決める。


『せっかくのエリアスの頑張りを無駄にしてごめんな。でも俺から言わせてくれ!エリアス、君が好きだ。フェレンスで出会った時から、いつも隣にいてくれた』



そして、レンはアイテムボックスからあるものを取り出す。それは、小さな箱だった。


『それは?』


エリアスが聞く。エリアスと同様に会場の観客も気になっているようだ。


『まず俺から一言言わせて欲しい。エリアス、俺と結婚を前提に付き合ってください』



『はい』


簡潔にだがはっきりとエリアスからの返事が返ってきた。これまでで最もレンが可愛いと感じる笑顔と共にだ。


『まだ、早いかもだけど』


とレンは言いながら、箱を開ける。中に入っていたのは指輪だった。


『それって、私が見ていた指輪!』


エリアスが驚いた。レンとエリアスが買い物に行った時にエリアスが眺めていたお店にあったものだ。エリアスが眺めていたものをレンは手に入れていた。


『受け取ってくれ、エリアス』


と言いながらレンはエリアスの指に指輪をはめる。エリアスが見ていた指輪で合ってて良かったと安心した。


『あなたには、貰ってばっかりだよレン。失う物ばかりの人生だと思ってたのに』


少しずつ頬に涙を伝うのをエリアスは、感じつつ呟く。


『失った分、それ以上に俺がエリアスにあげる。格好つけすぎかもしれないけどな』


と言いながらレンは微笑む。


会場からは、拍手が上がりだす。レンとエリアスのことを祝福しているのだ。


『私は今、これまでで1番幸せだよ』



徐々にエリアスとレンとの距離が縮まっていく。唇がレンに迫ってくるのを感じた時、レンは何かが自分とエリアスを狙って放たれたのを感じた。


「チェンジボックス!」


周囲にチェンジボックスの盾を展開して攻撃を防ぐ。舞台には、2本の短剣が落ちていた。これは、紛れもなくレンとエリアスを殺すために放った物だろう。




『いや〜ヒャハハ、良いですねぇ?幸せ、幸せ』


パチパチと拍手をしながら降りてくる者がいた。誰かはすぐにわかった。スティグマのサジャードだ。


「いつの間に!」


と言いながらすぐさまハルカが攻撃を仕掛けるが、それをサジャードは剣で防ぎつつ宙を移動する。


『幸せねぇ、反吐が出るんですよ!』


サジャードがかなり口調を荒らげて言葉を発した。



レンは、エリアスを庇いつつサジャードに目を向けた。


「お前、決勝で仕掛けるって言わなかったか?」


「ヒャャ、ちょっと準備が早く出来たので来ちゃった!10分前行動しないとね〜」


と言ってくる。当然ながら何やら企んでいるようだ。



「結界よ、民を守りたまえ!」


大人の姿になったカラミィが観客席に結界を張って舞台の所に降りてくる。


「ヒャハハ、結界なんて持ちますかねぇ?全て粉々にしてしまいますよぉ」


とサジャードが指をさらに上空にかざす。


サジャードが指す上空には、徐々にヒビが入っていくのが見えた。


「何……あれ!」


それを見たエリアスが言う。


ヒビが広がり空間が割れ門のような物が見えてくる。



「あれは……魔門」


いつのまにか隣に来ていたレミが呟く。





「あれがじゃと!魔門は、禁術なのじゃ」


とクシフォンが口を開く。


「クシフォン様、では……」


「ああ、魔族とスティグマの繋がりは決定的……あれは魔族しか発動出来んのじゃから」


歯をギリっと噛みながらクシフォンが言う。


「魔門……本当にあったのね。魔族ですら使い方を忘れたはずだけど?」


とルティアが聞く。


「そうじゃ、じゃが今空にあるのは明らかに……スティグマの入れ知恵じゃろうな」


「禁術、魔門……格好良い名前だけどヤバいんだよね?」


とミラが言う。名前に反応したが、勘が良くないものを告げている。


「とんでもないさ、英雄の結界も持つか不安なレベルの攻撃が来るぞ」


とフィーズが言い、ミラは顔が青くなるのだった。





「さあーて、私はどこかで見物でもしましょうかぁ?さよなら〜」


と言いサジャードが姿をくらます。


「転移かなんかか?」


とアルファードが周囲を見回した時、みな気配に気づく。




いつの間にか完全に武道大会の会場は敵に囲まれていた。龍が飛んでいる様子も見受けられる。一体どんな手段を使ったのかもわからない。


「それぞれ迎え撃つしかないね」


とネーヴァンが言い、みながうなずく。




レンとエリアスの戦いから一転、急にスティグマとの戦いが始まるのだった。

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