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194話チェンジボックスと決着

「本当は、アルファードさんと戦うために取って置きたかった……だけど、今が使う時だ」


レンに向かってくるエリアスを見据える。


レンも新たな戦法を編み出していたが、出来るだけ見せないようにしたかったのだ。



「まだ力を隠してるのね、レン。私に使ってくれるだなんて嬉しいな」


レンが自分に全力を出してくれる。そう思うとエリアスの心には、喜びが広がる。



「なら、しっかりと見ておけよ!プログラミング起動……ナビゲーター移動!」


レンから光が飛び出してエリアスとレンの間の移動する。それは、徐々に人型になる。


「まさか、ナビゲーターさん!」


エリアスが驚きながら、止まる。透明で実体があるわけではないが近づき難いものを感じた。


「新技お披露目ですね」


とナビゲーターが言いながら光となり散っていく。そして散った光が向かう先……そこには、複数の箱のような物体が浮いていた。


「何?それは」


エリアスは、呟きつつもレンに迫る。


「これか?変幻自在の箱っていったところかな。名前は……安直だけどチェンジボックス」


レンが指をパチンと弾いた瞬間に箱が全て盾の形に変形する。



『レン選手!とんでもないものを出してきた。これは、一体なんなのか、頭が付いていきません!』



複数の箱にナビゲーターを送り込みレンという司令塔を持って操縦することを可能としている。レンだけでも出来ないことはないが、ナビゲーターを挟むことで処理速度が格段に上がっている。


「これは……」


エリアスは、レンに向かおうとする度に無数の盾に邪魔をされ接近することが出来ない。


「形状変化、槍」


再びレンが指を弾くと、盾が槍に変形する。そして、エリアスに向かって発射される。


「凌ぎきれない!」


少しでも致命傷を避けるため自分の正面の槍に懸命に剣を振るうが、エリアスの腕に刺さり剣を落とす。





「レン殿……あの技は、もう一度、もう一度戦いたいぃぃ!」


レンの技を見た瞬間にハルカが舞台の方を楽しそうに見つめだす。




「あーあ、あの目やばいな」


とアルファードは、ハルカを見ながらきた呆れる。きっと後でハルカは、レンに勝負を挑むことだろう。






「さすがに強すぎる……ん?これは……」


落とした剣を拾いながらエリアスは、脳裏にあるものが浮かぶ。



「さあて、これで十分かな。終わりにしょう」


レンの周囲に槍が集まって1つの球体のようになる。



「少し……だけど、私に力がついた……最後の一撃を喰らえ!」


エリアスの剣に力が溜まっていくのがレンに感じられた。


『マスター、この戦闘でエリアスが成長したようです。ですが、体力的にももう限界でしょう』


「ああ、だけど最後の一撃は、最も力の込められたものになりそうだな」




「このエネルギー量……結界が持つかなぁ……」


とカラミィが呟く。



エリアスが剣を構えて言葉を紡ぐ。


「我が加護を持ってここに神なる獣の一撃を……放て、フェンリルの咆哮!」


エリアスの剣から強力な斬撃が放たれ舞台を粉々にしながらレンに迫る。レンと戦ったことで脳裏にこの技が現れたのだ。


「なら、俺も全力で返す!形状変化、大砲」


チェンジボックスが大砲の形に変化する。



「マキシマムマジック、ダークファイヤ!」


大砲から黒い炎が放出され、エリアスの斬撃とぶつかり合う。


「はぁぁぁぁぁぁ!」


「うぉぉぉぉぉぉ!」


お互いの魔法が中央でぶつかり合い、さらに舞台が崩れていく。


『総力戦ダァ!これはどうなる?』


会場の多くの観客が静かに決着を見守っていた。


直後、レンとエリアスの攻撃のぶつかり合いによる大爆発が起きスタジアムが見えなくなる。




徐々に煙が晴れ……観客は、立っているものを確認する。


『見えました、勝ったのはレン選手だあ!とてつもない力を発揮してくれました!負けてしまったエリアス選手も素晴らしい試合で終始ハラハラしました!』


決着がついたことを確認した実況が話し始める。



「負けちゃったなぁ……」


舞台の外で回復して立ち上がったエリアスが残念そうに呟く。


「俺もかなりボロボロだよ。こんなに苦戦することになるとは思わなかった!結局、隠してた切り札まで使うことになったしな」


とレンがエリアスの方を見て言う。フリーズまで効かなかったのはかなり意外だったが、エリアスが強くなっていることに喜びを感じる。


「少しでもレンの力を出させることが出来て良かった。私も強くなれたって思えたから!勝てなかったのは、本当に残念」



『レン選手がここで決勝進出を決めた!そしてエリアス選手の宣言は、惜しくも届きませんでした……』


実況の人も残念そうに話す。


何やら観客や、ルティ達も気難しい表情だ。






エリアスは、先に控え室に戻ろうと歩き始める。最初の宣言さえしなければレンに肩を貸して一緒に戻っていたかもしれない。


「私じゃまだ届かないよね」


と誰にも聞こえないように呟き歩みを進める。告白は、失敗だ。レンに負けてしまったので今は合わせる顔がない。



だが、


『待て!』


と会場中に広がるレンの大きな声に呼び止められエリアスは慌てて後ろを振り向いた。


「来てくれ、エリアス!」


と言われレンがエリアスの手を握り舞台の方に引っ張って歩きだす。


「え?ええ……」


とエリアスも驚きつつレンに手を引かれながら付いていくのだった。

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