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185話決着と賭け

フィーズは、勝ちを確信した。だが、結果は違ったのだ。まだエリアスは、負けていなかった。


「いつの間に!」


フィーズが驚きながら後ろの方を振り返ると、雰囲気がガラッと変わったエリアスが立っていた。


美しく真っ白に長い髪……そして、睨まれるだけで恐ろしくなりそうな赤い瞳。少し背も伸びただろう……普段の優しさを感じさせるエリアスとはまた違った様子だった。


「普通にあなたの隣を通りました。あなたが気づかなかっただけ」


とエリアスが言う。


「覚醒と言ってもいいな、だが、その怪我では早々耐えれまい!」


再び黒い拳がエリアスに向かって振り下ろされる。


「まだまだ、この力は扱い切れてませんね。今は、まだほんの少し……ですが、十分です」



「えっ!」


フィーズは、驚きの声を出す。いつの間にか、自らが纏っていた闇魔法の鎧が無くなっており自らが剥き出しになっていたのだ。


エリアスは、大剣を担いで立っていた。


『何が起こったんだ!エリアス選手が何をした?フィーズ選手が元の姿に戻っているぞぉ!』




「とてつもないスピードで攻撃を繰り出して鎧を吹き飛ばした。闇を纏ってる物だから簡単に吹き飛ばせるとも言えるが……」


とレンはエリアスの様子を見て呟いた。


『マスター、あれがフェンリルの加護の力でしょうね』


「ああ、とんでもない力を与えられたのかもな」


迷宮都市でエリアスのステータスに現れたフェンリルの加護……エリアスは、それを鍛えてここまで仕上げてきたのだろう。




「全く……とんでもない物を隠していたものだな」


とフィーズは呟く。自分は、エリアスの動きを目で追うことが出来ないと感じたのだ。


「さあ、決着を着けましょうか!」


とエリアスが言いながらこちらに向かってくる。


「もう一度闇を纏う時間はない……行けっ!」


前方に向かって闇魔法の妨害を放つ。少しでもエリアスの妨害に成功すれば、姿を捉えることが出来るかもしれない。


「確かに手負いの私では、厄介に感じますね。ですが……」


「もうすでに……」


すでにエリアスは、隣に到達している。フィーズは、頭ではわかるのだが身体がまだ反応しない。


フィーズが動くのを待つはずがなく、エリアスの攻撃が繰り出される。


「あなたは強い」


とエリアスが言うのだった。



『勝ったのはエリアス選手だぁ!どちらが勝つかわからないハラハラした戦いをありがとう。すごく盛り上がったぜ!』


と言い、会場からも拍手が上がる。


レンは、舞台の上に出て行ってエリアスに手を貸す。もう結界の外まで歩く力も残っていないかもしれない。


「驚かされたよ、エリアス」


「レンとの戦いで使って驚かせたかったんだけどね!相手が強かった」


すでに元の状態に戻っているエリアスが言う。もし自分が戦う時にあの姿になればきっと驚いたことだろう。


結界から出るとエリアスは、自分で歩けるようになった。やはり賢者の結界は凄いものだ。教えてもらおうかなとすら思う。



「申し訳ありません、クシフォン様」


レン達が控え室に戻るとフィーズがクシフォンに謝罪していた。


「お主が負けるのはなかなか見ないので面白かったのじゃ!後は妾が頑張るのじゃ」


とクシフォンが答えていた。


「む……お前達か」


とフィーズがこちらを向きながら言ってくる。少し悔しそうにエリアスを見る。


「良い勝負をありがとう!」


と言いながらエリアスが手を差し出す。


フィーズは、それを見ながら少し停止して


「ふん、完敗だ」


と言いながらエリアスと握手するのだった。案外良いやつなのかもなとレンは思うのだった。





「次は妾達の番なのじゃ!レン、妾は負けないのじゃよ」


とクシフォンが言ってくる。


「ああ、俺もそう簡単にはやられないからな」


と言う。


「頑張ってね、レン!」


エリアスが応援してくれる。これほどに嬉しいことはないものだ。


「クシフォン様に何かあったら◯すからな」


やっぱりフィーズは、怖いなと思わずにいられない。




『さあ、続いて準々決勝第2試合を始めます!選手の方、舞台にお願いします』


と言われレンとクシフォンが舞台に向かっていく。


「のう、レン。妾と賭けをせぬか?」


「賭け?この試合の結果でか?」


クシフォンに勝負をかけられる。


「そうじゃ、妾が勝ったら……ご飯やスイーツをたらふく食べさせて貰うのじゃ!レンの奢りでじゃぞ」


「なるほどな、ならそっちも何か賭けるんだろ?」


自分だけ賭けてたらさすがに面白くない。


「もちろんじゃ、優柔不断なレンでは決め切れんじゃろうから妾に勝ったら良い物をやるのじゃ!」


と提案してくる。


「飴玉とかじゃないよな?」


クシフォンのチョイスには不安を感じる。


「いや、玉は玉かもしれんが飴玉ではないのじゃ」


「なんだそれは?まさか7つ集める玉とかか?」


もしやあの有名なものがこの世界にあるのか?と思う。


「なんじゃそれは?まあ、勝ってからのお楽しみなのじゃ」


とクシフォンが言うのだった。


「それは勝たないとだな!」


とレンも続く。




『レン選手対ルシファン選手の試合は、そろそろ始まるぞ!準備は、大丈夫かぁ?』


「何を食べるか楽しみなのじゃ!」


「そう簡単には勝たせてやらないからな」


と2人は向かい合うのだった。

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