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182話厄介な敵と目的

「さあ、話してもらおうか。お前達の目的を!」


レンは剣を突きつけながら、ボロボロのフードを被った人物に声をかける。


「チッ…」


と男の舌打ちがした瞬間に、男が黒いモヤになり少し離れた場所に移動する。一瞬転移したのではないか?とすら思ったが、黒いモヤが動いていたことから違うだろうとレンは結論付ける。


「闇魔法か……」


とレンは呟く。特殊な使い方をすることが多いように感じる闇魔法。厄介な相手だろうと警戒する。



「撤退する」


と言いながら、正面の男が屋根から飛び降りながら矢をレンに向かって放ってくる。


「逃すかぁ」


レンは、剣で矢を弾きながらその場所に向かって行く。逃げられてしまうと思いすぐさま男が降りて行った場所に向かう。


「まあ、そう動くわな」


「なに!」


レンが屋根から飛び降りようと向かった所に、男は弓を構えて待っていた。完全にレンを倒そうという考えのフェイントだったようだ。


レンに向かって矢が5本放たれる。転移をしている余裕はなく、受ける攻撃を出来るだけ減らそうとレンは動くが何かがレンの身体を掴んだ感覚があった。


「大丈夫?レン」


「ああ、エリアスか!助かったよ」


雷を纏ったエリアスがレンを抱えていた。別の方向からレン達を発見したエリアスはそれに対応出来たのだ。


「新手か……」


めんどくさそうに男がいう。


レンとエリアスは、揃って剣を構える。


「あの人が魔族?」


「多分な……魔族の特徴は、魔法かなんかで隠してるみたいだが…」


ツノなんかが有れば一発でわかるものなんだがなと思いつつ武器を持つ手に力を込める。


「俺達は単に魔王の娘を殺したいだけだよ。邪魔をするなら容赦はしないぞ」


男が矢を番ながら言ってくる。


「スティグマとは、どんな関係だ?」


「なんだ、もう知ってるのか。ああ、俺達は手を組んだんだよ。平和を望んでいる魔王を倒す為にな!」


向こうが話したためスティグマと関わりがあることが確実になった。


「スティグマと手を組むなんてな……後で後悔することになる」


レンは分かっている、スティグマの陰湿さを。


「なんとでも言え。だがな、俺達にはやらなければならないことがある」


と言い矢を放つ。



「そうか、なら手加減はしない。デリート」


レンの髪が白くなり、レン達に向かっていた矢が消え去った。


「は?消しやがったのか……あの雰囲気どうなってやがる!」


レンの様子に男は流石に驚いたようだ。


「消えたくなかったら、大人しくしてくれ」


とレンは言いながら男に迫る。



「なぁ、さっきお前達が俺の仲間を預けた兵士達がいたろ?そっちにも仲間を仕向けたんだ。早く行かないと死んじまうかもしれないぜ?」


と男が突然言い出す。


「ノックスさん達に!」


レンに一瞬隙が出来たのを見て、男は何やら魔法道具を使って消えてしまった。



「レン、あっちの方向で何か起きてる」


「もしかするとノックスさんが襲われてるかも。急ぐぞエリアス!」


と言い走り出す。まさか、あっちの方にも人を差し向けるだけの余裕があるとは思わなかった。そうなるとかなりの人数が王都に入り込んでいると考えなければならない。





「チッ……厄介な奴がいたもんだな」


レンから逃げることに成功した男は、言葉を吐く。消し去るような力がある相手など戦いたくもないため逃げることを選んだのだ。



「早く到着しねぇのかな。スティグマの奴らも。暗殺が成功すれば俺もスティグマの幹部に迎えられる!楽しみだなぁ」


と路地を歩きながら男が呟くのだった。






「ノックスさん!」


レン達が現場に向かうと、大怪我をしたノックスともう1人の兵士が倒れていた。周囲の人達も恐怖からか動けないでいる。


「すまない……レン君。君から預かった男は、殺されてしまった」


と言葉を出す。近くには、魔族の男が倒れていた。敵は、もともとこの男を始末するためにノックス達の元に差し向けていたのだろう。



「今治しますので……」


と言いながらレンは生命魔法でノックスともう1人の兵士の治療をする。



「ありがとう、レン君」


「感謝します」


ノックスともう1人の兵士にお礼を言われレンは、とりあえずその場を後にすることにした。再び会場に戻らなければならない。


「相手は、結構な腕だったね」


エリアスが隣で言ってくる。


「ああ、かなりの修羅場を潜っているような動きだった気がする」


レンとしても油断できない動きだったので次戦うとしたらもう少し注意しないければならないだろう。



『さあ、次の試合はいよいよ前回チャンピオン!そしてこの国最強の冒険者アルファードの登場だぁぁぁぁぁぁぁ!』


という実況の声と、観客の盛大な歓声が聞こえてくる。


「何試合まで進んだんだろうか?」


「どうだろうね、早く行きましょう!」


と言いながらレンとエリアスは、観客席に向かうのだった。

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