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177話憎悪と失態

昨日は、ファンタジー日間220位、今朝は216位に入りました。

ありがとうございます!

日付時刻不明……



冷たい通路を女性が歩いていた。ヴァイオレットの瞳に長い髪を揺らしている。だが、その者の心境はとても穏やかなものではなかった。



女性の名はマグノリア、スティグマ魔法部隊筆頭と名乗っているものだった。


「随分派手にやられたじゃないか!ハハッ」


と声がしたため、その方向を向くと暗殺部隊筆頭のシャンが気味の悪い笑みを浮かべていた。嫌悪感を抱き普段なら無視する所だが、イライラしていたため突っかかってしまう。


「使えない雑魚どものせいでね!酷い有様よ」


と言い通りすぎる。


「腕が無いなんてなぁ〜もう筆頭なんて名乗れないんじゃねーの?」


「おま、え!」


魔法を放とうとするが、ギリギリの所で踏みとどまる。もし放っていれば本当に居場所をなくす可能性すらあるのだ。



マグノリアは、そのまま先に進む。表情は、とても良いものでは無い。そして左腕が無いのだ。


「おのれ、レン・オリガミ!」


歯をギリっと噛み締めて、ある男を思い出す。もちろん自らの大切な腕を奪った存在だ。



迷宮都市でのマグノリアの目的は、クラン真紅の宝剣を操り迷宮イージスの50階層攻略報酬のユニークスキルを得ることだった。そのため魔法道具を使い、剣神の加護という強力な称号を持つアンナ・フェロルを洗脳までしたのだ。


目的は成功する!そう思っていた……迷宮都市にあの忌々しいレン・オリガミが現れるまでは。


レン・オリガミは、とてつもないスピードで迷宮を攻略し、ついには、50階層まで突破するということを行ったのだ。ユニークスキルは、彼に奪われ考えていたことは失敗した。


だが、諦めることなく次の策に移るもことごとく失敗に終わったのだ。


「王都に現れた時にはそこまでの力はなかったはず……」


王都でシャンを助ける前に見たレンの姿はそこまで強いと言えるものではなかった。自分なら大丈夫だろうと思っていたのだ。しかし、結果としてマグノリア率いる魔法部隊は敗北……マグノリアを逃すために大勢の部下も失った。


スティグマの中でも、勢いを失い侮蔑の視線を向けられるようになってきた。


「どうにかしなければ……チャンスを…」


この場所に呼ばれたのはマグノリアに何かしら言い渡すためだろう。それは引導であるかもしれない。殺されるかもという恐怖を感じる。


自らも罰で多くの部下を葬ったものだが、自分の番になるとなんとも情けなく感じる。



「失礼します」


と言いマグノリアが部屋に入る。


綺麗な部屋だ。宝石などをふんだんに使われている装飾が目を引く。


「来たか、随分と酷い顔をしているな」


顔にシワの入った老人が言ってくる。老人と言っても雰囲気は、とても勇猛な物を感じる。


「申し訳ありません……元帥」


膝をついて頭を下げる。



最近あまり眠れていないのだ。眠ると夢でうなされる。

逃げるマグノリアをひたすらに追いかけてくる白い化け物の夢だ。



「迷宮都市での失敗……どう償う?我らがスティグマの野望を遅延させたのだ。ただではすまんぞ」


冷酷な声で言われる。背中に冷たいものが駆け巡るのを感じた。


「申し訳ありません。どうか命だけは……憎き物を殺すためにも!」


ただ死にたくないと言葉を紡ぐ。


「言葉は取った。次に失敗すればわかってるな?ならば今日はこれで終わりとする。最後に一つ、貴様が戦った者は何者だ?」


「証拠はありません。ですが、異世界からの者かもしれません」


レン・オリガミ、あそこまでの強さと成長速度、勇者と言っても良いのかもしれない。


「話はわかった、下がれ」


「失礼します」


マグノリアは、すぐさま部屋を後にした。





「まさか……いずれ起きる大戦への対抗策か?」


と老人が呟くが誰にも聞こえていない。





「よぉ!無事だったかぁ〜。まだ仲間でいられて嬉しいもんだなぁ」


とシャンが言う。きっとそんなことは心からは思ってないだろうな……とマグノリアは思う。


「ふんっ、あんたも王都での失敗を前に怒られたんじゃないの?」


シャンも王都では、レンにやられている。そう思い言ってみる。


「ハハッ、俺は王都をしっかりと荒らしてきたからなぁ〜。そこまで怒られなかったぜ」


と笑っている。


「チッ…」


マグノリアは軽く舌打ちする。自分も少しでも迷宮都市に被害を与えられたら良かったかもしれないと思ったのだ。



「それにしてもよぉ〜、変なやつだよなレン・オリガミって」


とシャンが言う。


「あんたもやばい奴であることに変わりは無いけどね」


と気にせずマグノリアが言う。


「失礼な奴だなぁ〜。だけど、厄介だぜ?あのなんでも消してくる能力は……」


シャンは、綺麗に何もないマグノリアの腕を見る。


「そうね、あんなの反則よ!腕を持ってかれてるし……あんたらが王都にばら撒いた呪印が消されたのもそれが原因?」


「さーなぁ?呪いを消してた時は、白くなかったからなぁ……無関係じゃないんじゃないか?」


シャンにもそこまでのことはわからなかった。


「もしかすると、ステータスにも干渉できると……とんでもない敵が現れたものね」


「そろそろ、俺も何かしら動かないとな〜じゃあな、マグノリア。敵に消されんなよ」


「次で失敗すれば消される。正直嫌なものね」


自分が持つステータスに何かされるかもしれない……もしかするとすでに何かされている気がしないでもない。




「あっ……」


突然の頭痛にマグノリアは、頭を押さえながら壁に寄りかかるのだった。

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