176話賢者の修行と捜索
「MP切れ……」
と呟きミラは地面に倒れ込む。
「ふむ、まだまだだな」
気絶したミラを見下ろしながら賢者カラミィ・テーリスが言う。
「は!また気絶してた。あらっ?眼鏡はどこにいったんだ!」
とミラが言いながら起き上がる。視界がぼやけているため自分が眼鏡をかけていないことがわかった。
「起きたか弟子よ。お前の眼鏡なら私が持ってるぞ!」
と言いながら渡してくる。
ミラはすぐさま受け取って眼鏡を装着する。
「ふぅ、やっぱり眼鏡をかけると落ち着くなぁ。ふふっ、もしかして眼鏡の方が本体だったりして?」
「この世界にはない眼鏡のデザインだな。良い形をしている。それにしてもやはり、お前は変わったやつだな」
とカラミィが仲間を見るような視線をぶつけてくる。
「し、師匠程じゃないから!」
とミラが返す。一緒にしないでと言うような反応だ。
「ほう師匠相手に言うじゃないか。さあ、もう一回MPを使い切れ!」
「気絶は嫌だぁぁぁぁ!」
と言いミラが脱走する。
「な!お前」
と言いながらカラミィもミラを追いかけて行くのだった。
「ちくしょう!だせー、ここから出せーー!」
結界に閉じ込められたミラが叫んでいる。ひたすら逃げようとするのでカラミィに捕らえられたのだ。素手で結界を叩くが壊れるはずもない。
「さあ、続けるんだな。じゃないと帰れないぞ」
「クソォ、やってやらぁぁぁ!」
とミラは、MPを解放する。
(なかなか面白いセンスをしているが、どうやる気を出させるかが問題だな……)
とカラミィは思うのだった。
レン達4人は、迷宮化が進んでいる地下を走っていた。
「どうだ?」
「うーん、見当たらないな……」
迷宮化を止めるために核を探しているが、それがなかなか見つからない。核のサイズも迷宮化の進行により大きくなるらしく、まだ見つけるのは難しいかもしれない。
「いっそのこと、魔法でも放ってみるかしら?」
「それは危ないかもしれないわ。ここの上には王都があるから慎重に行動した方が良いわ」
フィレンが提案するが、レミが却下する。普通の迷宮とも扱いが違うためやはり核を探すのが安全なようだ。
「人?誰かいるな……」
立ち止まりながらレンが呟く。気配察知にとうとう反応があったのだ。すぐさま剣を引き抜いて、注意する。
「まさかスティグマ?」
エリアスも注意深く武器を構える。
レンが前の方に出て何があっても迎え打てるようにする。迷宮化で草木が生い茂っているため少し戦い辛いかもしれない。
「はぁぁぁぁぁぁ!」
レンが構えているとすぐさま正面から黒いローブを着た誰かが真っ直ぐ突っ込んでくる。その手には剣が握られておりこちらへの敵意を感じた。
「レン!」
レミが言葉を発するが、レンはその前に動くことが出来ていた。
「お前は、スティグマか!」
と言いながらレンは、相手の剣に自分の剣をぶつけて受け止める。だが、そのまま相手は踏み込むことなく後ろに下がった。
「なんだ、お前達か」
と言いフードを下ろす。今日見たばかりのつり目と灰色の髪が現れる。
「フィーズじゃないか!どうしてこんな所に」
そういえば、いつのまにか武道大会の会場からいなくなっていたなと思いつつ声をかける。
「何やら……感じるものがあってな。調査しているんだ。さすがにクシフォン様は連れてきてないけどな」
剣を収めつつ答える。
「なるほど、あなたがレンが言っていた魔族の」
とフィレンが言う。道中ですでに話してあった。
「英雄に覚えて貰えるとは光栄ですね」
皮肉っぽくフィーズが答える。
「あなたも探しているのかしら?スティグマ……いえ、もしかしてスティグマについた魔族?」
とレミが言ったのにフィーズが反応する。
「大会にいた奴か、なかなか勘が良いじゃないか。裏切り者がいる……思いたくなかったが、そうもいかないらしい」
「裏切り者は、友好的な今の魔王に反発したい奴らとかか?」
とレンが聞いてみる。
「そうだな、クシフォン様の父上である魔王様は、強く人望も厚い。だが、戦を求める者が現れ始めているのだ」
と説明する。
「それをスティグマが……酷い」
とエリアスが言う。何かに付け込んでかき乱すスティグマのやり方は許せないものだ。
「それで、誰か潜んでないか地下を調べていたが、迷宮化しているしようやく見つけたのもお前達だ……」
とフィーズは、残念そうに言う。どうせだったら敵であって欲しかったのだろう。
「時間的に厳しいから切り上げましょう」
とレミが言う。フィーズとの遭遇後もかなり調べたが痕跡などを見つけることは叶わなかった。明日も武道大会は続くので身体を休める必要がある。
「そういえば、後になるだろうが私の相手はお前だな。白い狼」
帰りがけにエリアスにフィーズが声をかける。
「エリアス・ミリーです。そうですね、負けませんからね」
とエリアスがやる気十分に言う。
「ふんっ、つまらない試合にならないことを祈るよ」
「なら、俺の相手はクシフォンってわけか」
「貴様、クシフォン様に何かしたら◯すからな!絶対◯す、◯す!」
「ちょっと、言葉がキツすぎるって」
クシフォン絡みになると自制がない発言になりレンを襲う。
「結界もあるから大丈夫だろ」
とレンは言いつつ、俺に対しての当たり強くね?と心の中で思うのだった。




