168話本選開始とエリアス初戦
「勝者25番!本戦進出です!」
審判がレンの勝利をコールする。
『おおおーーーー!』
周囲からも歓声が上がっているのが聞こえた。大抵の場合、互角の戦いを繰り広げるものであるがレンは余裕を持って相手を倒したので驚きの声があるのだ。
「あっさりと決めたね!まぁ予想通りだけど」
とミラが当然だと言うように言ってくる。
「ちくしょう、こんなにも差があんのかよ……」
キリードが悔しそうに言葉を口にしている。あそこまでレンにあっさりと負けるとは思わなかったのだろう。
「いや、十分強かったぞ。俺が君くらいの歳の時はそこまでの強さなんて持ってなかった。その真っ直ぐな拳を極めてくれよ?」
とレンが手を差し出して言う。レンは、最近強くなったばかりなので間違ったことは言っていない。
「あんなに強くて、性格もいい奴だなんて……完全に俺の負けだ」
と言いキリードは、差し出されたレンの手を握り返すのだった。
そのまま本戦の会場に向かうことになった。ギルドの職員に本戦出場の選手は、舞台に上がってもらうと言う話を聞いたため指示に従う。
本戦を勝ち上がったことを伝えるとすぐに控え室に案内される。時間まで待つことになるのだろう。
「あ!やっぱりレンは大丈夫だったね!」
控室に先に来ていたのは、エリアスだった。ここにいるということはエリアスも無事に予選を勝ち抜いたということだろう。
「余裕で勝ち上がったわよ!」
とルティアが我がことのように言っている。彼女も首にタオルを下げており、ミラと同じことを考えているのだろうかと思う。
「エリアスも勝ち上がったんだな!とりあえず、お互い上がれたから良かったな」
とレンが言う。
「そうだね!」
「申し訳ありませんが、舞台に上がってもらいますので集合をお願いします!」
しばらく話をしているとギルド職員が控室に呼びに来たため部屋を出て外に向かう。
そしてレン達が出た場所は、まさにコロッセオとでも言えるような場所だった。戦うのにふさわしい場所に感じた。
『さぁ!勝ち上がった選手達が舞台に集結し始めています』
とアナウンスが流れている。実況がついているようだ。
レンとエリアスが舞台に向かうとすでに舞台に上がっている人が何人かいた。ルティアとミラはすでに観客席に向かっている。
この大会のために作られた会場で、なかなか気合の入った作りだなと周囲を見ながらレンは思う。
「よお!お二人さん。2人とも本戦進出だなんてやるじゃないか!」
とアルファードが声をかけてくる。
「ええ、アルファードさんと戦えるまで負けるわけにはいきませんからね」
とレンは答える。
「そうか!嬉しいな。楽しみにしているぞ、君との戦いを」
とアルファードが言う。
『さあ、ここで本戦に出場の16人が揃いました!今年は、圧倒的な強さで勝ち上がって来た人が多いとか!楽しみですね』
本戦会場の真ん中に16人が集まっている。
筋肉隆々のドワーフや、細身のエルフなんかもいる。フードを被った2人組は顔が見えないため種族なんかは良く分からない。
『屈強な戦士達による本戦!これは盛り上がりそうだ。そして特に注目なのは、大会連覇を成し遂げている王国最強の男、アルファード・シルフォンだぁぁぁぁ!』
『うぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!』
アルファードの名前が呼ばれた瞬間に周囲からはとてつもない歓声が上がる。
「凄い人気だね」
「ああ、アルファードさんの戦いはさらに盛り上がるだろうな」
エリアスとレンが会話する。
『そして、ここでアルセンティア国王にご挨拶をお願いします!』
『王都の者達よ。2ヶ月ほど前、王都には魔物の軍勢が現れ大切な者の命、思い出の残る物を壊し奪っていった。この武道大会すら開催できないであろう状況だった』
国王は、前のスティグマの襲撃を振り返る。
『だが、2ヶ月で王都はここまで立ち直った!これは、王国に住む皆の者全ての力があってこそのものだ。皆の力を結集出来たからこそ今の王国がある』
強力な魔物の襲撃を受けながらも王国は壊れなかった。建物も復旧し、人々は前を向いている。
『これから始まる武道大会で、いかに我が国が立ち上がったかを証明する。皆は精一杯楽しんで盛り上がってくれ!ここに王都武道大会の開会を宣言する!』
と国王が言った瞬間に、空に盛大な花火が打ち上がる。そして国民の熱狂的な声が王都を駆け巡り盛り上がるスタートを切るのだった。
『ここで、本戦のルールについて説明したいと思います!本戦の舞台には救国の英雄の1人、賢者カラミィ・テーリス様が特殊な結界を張ってくださいます。この結界の中では死に至る攻撃を喰らったとしても死ぬことはなくそのまま結界の外に出される仕組みになっております。また結界は、中と外と行き来出来るため場外に注意してください』
と説明があり、凄いなと思いながらレンがカラミィの方を見るとレンに気付いてピースを送ってくる。
『それでは、第1試合目の対戦者の発表を行いたいと思います!』
本戦では、最初は誰と当たるかわからないのでかなり緊張する。
『第1試合目、エリアス・ミリー選手対ファイド・マナラ選手の対決となります!』
いきなりエリアスの戦いが発表される。
「最初か、緊張するなぁ……」
「頑張れよ!」
とレンは、エリアスの肩を軽く叩く。
舞台の上にいたレン達は、1試合目の人を残して下に降りる。
『さあ、早速やって参りましょうか!どちらも優秀な冒険者の戦いです!第1試合スタート!』
審判のコールがなされ、エリアスは、腰の剣に手を伸ばす。
「私は、接近戦は得意じゃないからね。近づかせないよ」
と言い対戦相手のファイドが多くの矢をエリアスに向かって放って来る。
『先手を打ったのはファイド選手だ!この矢の雨をエリアス選手はどうする?』
多くの視線が矢とエリアスに集まる中、
「ライトニング!」
エリアスは静かに呟くのだった。
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2日前に日間PVが過去最高記録となりました。
明日も更新しますのでお楽しみに!




