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164話のんびりと悪意

エリアスからの取り調べをなんとか無事に終えたレンは、部屋に帰ってきた。


「はぁ……恐ろしかった。まだ、どこかの国の兵士に取り調べされる方がマシだろう…」


と呟く。


『それだけ、エリアスがマスターのことを大切に思っているということでしょう。逆の立場ならマスターもそうなるはずです』


とナビゲーターさんに言われる。


「確かにそうだな!」


そんなことが有れば、レンはエリアスのステータスまで徹底的に調べるかもしれない。


『そういうことです。それにしても賢者カラミィ・テーリスでしたか…戦ってみてどう感じました』


「そうだな……強かったよな。マキシマムミーティアを受けても問題なかったようだし」


強力な結界を使ったのだろうか、彼女は余裕そうに姿を現していたのを思い出す。



「それにしても、大人の姿になったカラミィさんは、凄かったな……」


と呟いてしまう。少女の形態から大人に変化出来るというのはギャップを感じるものだ。


『凄いとはどんな意味でしょうか?』


若干、怒っているような声でナビゲーターさんが言ってくる。


「いやいや、単純に凄いなと思っただけだ!」


慌てて弁明する。


『まぁ、そういうことにしておきましょうか』


とナビゲーターさんが言うので、なんとかなったと思って良いのだろう。




『それでは、マスター。私は、作り物を頑張りますので』


と言いナビゲーターさんが引っ込んだ。


「わかった、おやすみ……」


と言いお風呂に入った後、すぐにレンも眠るのだった。ハルカやカラミィとの戦いで疲れてしまったからか、すぐに眠りに落ちていった。





翌日、スッキリと目覚めることが出来た……はずもなくレンは未だにのんびりと寝ている。


「まだ……出たくない…」


と呟きながら再び夢の世界に旅立とうとする。


「ふふふ、起きないのなら私が襲ってあげるわよ?」


突然の声に、誰だ!と思いすぐさま起きる。


すると、目の前にいたのは昨日会った美しい金髪のエルフ、フィレンだった。


「え!ギルド長、どうしてここに」


なぜ俺の部屋にいるのかわからなかった。


「あらあら、いつまでも起きてこないから起こしにきたのよ」


予想外の人物の訪問に用事でもあるのだろうか、と思ってしまう。


「わざわざありがとうございます。もしかして何かあったんですか?それで俺を訪ねてきたとか?」


厄介ごとは勘弁して欲しいなと思う。昨日だけでもかなり大変だったんだから……


「そんなわけじゃないんだけどね。アリーもみんなに挨拶したいみたいだから連れてきたのよ」


早く行きましょうというふうにレンは促される。


「お腹も空きましたし、そろそろ行きますよ」


と言いレン達は部屋を出るのだった。




「そういえば、あなたカラミィとも戦ったそうね。ハルカと戦った後なのに良く頑張るわね」


もう話が回っているようだ。


「本当、疲れましたよ!さすが救国の英雄の人達ですね。これまで戦ってきた中でダントツです」


そうなると、1番強いという男はどれくらいなのだろうか?と思う。戦って瞬殺されたら嫌だなと思ってしまう。


「やっと起きたの?レン!」


食堂でエリアス達がお茶を飲んでいた。もう食事は済んだようだ。


「お久しぶりです、レンさん。お元気そうで良かったです!」


と言ったのは、アリーだ。


エリアスの親友であり、レンが初めてフェレンスで冒険者登録を行う際に手続きをしてくれた人だ。


「久しぶりだな。アリーも元気そうでなりよりだよ」


とレンは声をかける。



まだご飯が住んでいないレンは先に朝食を食べることにする。ルティアが食べ終わっている辺り、なかなか遅い起床だったなと実感する。




食事が終わった後は、適当に街をぶらつくことにした。なんでも夕方に王国最強の男に会わせてくれるとの事だ。


「楽しみだな!」


「聖女様もいるって!私も楽しみだわ」


ルティアとしても聖女に会えることが楽しみらしい。



「連日、凄い盛り上がりだよな」


武道大会が近いため人が多いのは当然だが、開催前にすでにここまでいるということから人気が伺えた。


「そうだね。どこか寄って行こうよ!」


とエリアスが提案する。今日は、エリアスと2人での行動だ。


「そうだな、エリアスに何かプレゼントでも贈らせてくれよ」


とレンが言う。


「ありがとう!楽しみにしてるね」


とエリアスがうれしそうに言う。



レンは周囲を見回しながらこれから何かトラブルが起きませんようにと祈るのだった。






「あれは……破黒の英雄に断黒の刃。我らに仇をなすもの…」


「待て、今は我らが優先すべき役割に力を注げ!」


街を歩くレンとエリアスを遠くから見つめる者達がいたが、あまりに人が多いためレン達は気づかなかった。


王国に、再び悪意が入り込んできているのだった。

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