158話路地戦とフィーズ
「くたばれェェェェ!」
魔族の男達が、屋根に乗っているレンとクシフォンに向かって刃を振おうとする。
「クシフォン、俺の後ろにいるようにな。絶対に離れるなよ」
レンは、アイテムボックスから剣を取り出して鞘から抜く。
「わ、わかったのじゃ」
クシフォンは、すぐにレンの後ろに移動してレンの脚に掴まる。
「おりゃァァァァァァ!」
男が剣を振り下ろしてくるが、攻撃は単調なためレンにとってはとても捌きやすいものだ。
(パワーは、あるみたいだけどな……)
攻撃をいなしつつ考える。魔族と言うのでどれくらいの実力かと思ったが、この2人はそこまで強くないことがわかる。
2人の攻撃を軽くいなしていると相手も実力を悟ったのか後退した。
「ちっ!厄介な人間を仲間に引き入れやがって」
「俺達じゃ勝てねぇな」
反対側の屋根に着地しながら男達が言う。レンを相手に分の悪さを感じたのだ。
「どうした?来いよ」
とレンはかかって来いと挑発を発動しながら指を動かす。
「舐めてやがるな…」
と男達は再び剣を構えているが、そこで一つの声が入ってくる。
「何をしている!」
と力強い女性の声が乱入する。
そこにいたのは、灰色のセミロングの髪、そしてつり目の女性だ。
レンは、警戒するが後ろにいたクシフォンが女性に声をかけた。
「あ!フィーズなのじゃ。レン、あの女は妾の味方なのじゃ」
と言う。彼女がクシフォンの言っていたはぐれた人だったようだ。
「クシフォン様!勝手に離れないで下さいよ。何かあったらどうするんですか?何かが起きてしまっているようですが」
と言い女性は、すっと屋根に上がってくる。軽やかな動きをするものだなとレンは思う。
「フィーズ・ファル!貴様もクシフォンもろとも死んでしまえ」
と言い男が狙いをフィーズに変えて攻撃しようとする。
「まずいか?」
レンは、間に割って入るべきかと思ったがクシフォンが止める。
「問題ないのじゃ、フィーズは強いのじゃ」
とても強い信頼を感じ取ることが出来た。そのためレンは周囲を警戒するのみに留まるのだった。
「がはぁ………」
すぐに男は、フィーズによって挿し貫かれる。武器はレイピアだ。フィーズと男にも大きな実力差があるのだ。
「あなたも貫かれるか?」
とフィーズが冷たい声でもう1人の男に言うと男は、すぐさま逃げの態勢に入り屋根をつたって距離をとっていく。
「逃すか!」
レンはすぐさま武器を弓に持ち替えて千里眼を使い逃げた男の足を貫く。男が動けなくなったのを確認する。
「とりあえず、何が狙いか聞きましょうか」
と言いつつフィーズが男の首を掴んで持ち上げる。細い身体つきに見えて力は結構あるようだ。
「我々の目的は、クシフォンを殺すことだ。今の魔王は甘すぎる!魔族と人族は争うべきなんだぁぁ!………がはぁぁぁ!」
男の発言の直後に男の頭に上空から降ってきた矢が刺さり命を奪う。
「な!」
目に見えない敵からの強襲にレンは驚く。
「人族の貴様!クシフォン様を守れぇぇ!」
レンの方を向いてフィーズが慌てながら言ってくる。
レンが上を見上げると、すでにレン達の上から大量の矢が降り注いでいた。
「どうなってんだよ!アクアウォール」
矢に対して強い流れの水をぶつけてこちらに当たらないようにする。
先程レンが矢を撃った男の方にも、謎の矢は飛んで行ったためすでに殺されてしまったかもしれないと思った。
案外すぐに降ってくる矢が収まったため魔法を解く。
「フィーズ!しっかりするのじゃ!」
クシフォンがすぐに下に降りてフィーズの元に駆け寄って行った。フィーズは、何ヶ所か矢に撃たれており命に別状は無さそうだが怪我を負っていた。
「悪いが、矢を引き抜くぞ。我慢しろよ」
下に降りたレンは、フィーズの矢を引き抜き回復魔法をかけていく。
「ちっ……人族に助けられるとは…」
あまり人族に良い印象を持っていないみたいな反応をされた。
「レン、助けてくれたこと感謝するのじゃ……こやつ、フィーズは、素直じゃないのじゃ」
とクシフォンが言う。
「くっ……クシフォン様を守ってくれて助かった……」
とフィーズはしぶしぶ頭を下げた。案外根は良い人なのかもしれない。
「気にしないでくれ。俺の手が届くなら助けたい」
とレンが言う。
魔族の男は殺されてしまったため、情報を引き出すことも出来なかった。目に見えない距離から矢を撃ってくるというのは中々の手だれがいるのだとレンは思う。
「これは一体何が起こったのでしょうか?」
と声が入ってくる。フィーズは、すぐに武器を構えるがレンはその相手のことを知っていた。
「ハルカさん!」
銃を持ちながら路地に入ってきたのは、王都に着いた時にも会ったハルカだった。
「レン殿、それに貴方方はこの感じ……魔族ですね?」
とハルカが言うのだった。
クシフォン達は、ツノなどを出していないためすぐに気づいたハルカが凄いとレンは思いつつ話がややこしくなりそうだと思うのだった。




