15話 激闘と決着
隠れていた場所から飛び出してレンはスキルを使用する。
「強奪!」
だが棍棒の位置はゴブリンキングの手から移動していなかった。
『強奪が失敗しました。実力差があるためか相手にダメージを与える等しなければ奪えないようです』
そう簡単には渡してくれないか…と心の中で思いつつレンは、アイテムボックスから杖を取り出す。
「植物よ……動きを妨げよ!」
森に生えている植物に生命魔法を使用し成長させ操る。
「ガァァァ?ガグァァァァァァ」
植物がゴブリンキングに絡まっていくため、鬱陶しそうに引きちぎっていく。
「動きが鈍ってる。今だ!ライトニング」
と言いゴブリンキングに雷を放つ。
「グモォォオオ……」
「効いてはいるけど倒せはしないよな」
レンは杖をアイテムボックスにしまいながら呟く。今回、杖を使ったのは生命魔法に慣れていなかったからだ。杖があるほうが魔法を上手く使えるため使用することにした。
植物の拘束が解けたゴブリンキングは、レンに向かって来るがさらに魔法をくらうことになる。
「フラッシュ!」
「グモォォォォォォォォォ!」
目の良い魔物にとって光魔法の目眩しは効果的だった。
「ここまでやればいけるか?強奪!」
気がついた時にはレンの手にさっきまでゴブリンキングが持っていた棍棒が握られていた。
「よし成功だ!」
「ガァァァァァァァァァ!」
ゴブリンキングは自らの武器が奪われたことに腹を立てたのか咆哮を上げる。
そしてゴブリンキングが棍棒を取り返すためレンに向かって突っ込んでくる。
「取り返してみろよ。おりゃぁぁぁぁぁぁぁ!」
レンが棍棒でゴブリンキングをフルスイングするとゴブリンキングは10メートルほど飛ばされていた。
棍棒の効果なのか先程より身体の動きが良くなり力が上がっているように感じた。
『ゴブリンキングはかなり怒っているようです。これまで以上に注意が必要です、マスター!』
ナビゲーターさんから忠告が入る。
「ああ、そうだね」
確かに油断は禁物だ。これまでの経験で嫌という程実感させられた。
「ん、あれは何だ?ゴブリンキングから黒いモヤみたいなのが……」
『マスターあれは狂化状態です』
ゴブリンキングは怒りで狂化を使用したようだ。赤黒いオーラが出ていて少し恐怖を感じた。
「追いつめた時が1番の危ないってやつか……」
レンは自分自身に集中しなければやられると言い聞かせる。
ゴブリンキングが動き、レンはとてつもない危険を感じた。
「転移!」
先程までレンがいた場所はゴブリンキングのパンチによって穴が空いていた。
「最初より強くなってるじゃないか!」
当たればレンは即死だ。
『マスター、狂化の効果で攻撃力や俊敏性が恐ろしく上がっていますが、ゴブリンキングの体力は徐々にですが減っています。耐えきればマスターの勝ちです』
ようはゴブリンキングが死ぬまで耐えろということだ。時間を稼ぐために少しでもキングから離れる。
だが距離をとってもすぐにキングに詰められる。危うく棍棒を奪い返されそうだったためアイテムボックスにしまう。
「危ない……棍棒を取られたら確実に勝ち目はないな」
正直ゴブリンキングの攻撃を耐えることができる気がしない。
『ファイヤボールを使用します』
ナビゲーターさんの声がした後ゴブリンキングに火球が当たった。
『私が魔法を使用させていただき攻撃します。マスターは回避に専念してください』
ナビゲーターさんが発動した魔法が炸裂する。
ナビゲーターさんが攻撃してくれるおかげで着実にゴブリンキングにダメージを与えることができた。
なかなかのコンビネーションだ!(ナビゲーターさんはスキルだが……)
だがそれも長く続かなかった。
『これ以上はマスターのMPが保ちそうにありません!攻撃を中断します』
集中が切れたためか回避を失敗し、ゴブリンキングに殴り飛ばされる。
頭から血が流れ、視界がぼやけ始める。
「ぐっっ!なんて頑丈なんだよ……」
レンも満身創痍だった。
転移もできてあと1回ほどのMPしかない。
ふとゴブリンキングのステータスが見えた。
ゴブリンキング
HP30/1500
MP5/250
ATK550
DEF10
〈スキル〉
腕力上昇 王の威圧 打撃強化 狂化
ステータスがほとんど落ちているのだ。
『あと一撃、決定的な攻撃を叩き込めば勝てます。マスター』
「どう決める?……弓じゃ駄目だ……決定的なダメージが入らない。魔法も使って外せばすぐに気絶する。……これは!」
レンの足元には先程壊れた剣が落ちていた。だがそれは傷1つない綺麗な状態で落ちていたのだ。
「これだ!転移、うぉぉぉぉぉぉぉ!」
そして転移したレンはゴブリンキングの懐に飛び込み力いっぱい剣を振るった。
ゴブリンキングが生き絶えるのと同時にレンも倒れるのだった。