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129話嫌気と提案

「クラン〜〜〜の者ですが!」


「ぜひうちのクランに入って〜〜」


レンが街を歩いていると、何度も声をかけられる機会があった。みな一様にクランに入って欲しいと言うようなものであった。


もう何度目かの断りの言葉を入れた直後、レンは面倒だなと思い始めた。正直うんざりしている。






エリアス達とご飯を食べる時にも、レンはそのことについて喋っており、それだけ嫌気が差してきているのが感じられた。


「そんなに都市1番のクランになりたいものなのか?」


とレンは口にする。


「そうですね、都市で1番のクランになればギルドなどから様々な援助を受けることもできます。そのおかげでスティグマが力をつけていたわけではありますが……」


と元トップクランのメンバーであったアンナが説明する。洗脳されて戦っていたためあまり思い出したくない内容かもしれないが……


「レンが強いからって勧誘しようとしてるのよ。全く、ふざけてるわね」


ルティアは、勧誘に対して良い印象は持っていない。レンも同じ考えではある。


「俺達もずっと迷宮都市にいるわけじゃないからな…クランに入ってる余裕があるわけじゃないし」


王都の武道大会に出ようと考えてるのだ。当然クランに所属すれば都市に縛られることになるだろう。



「そういえば、2人はこれからどうするんですか?どこかのクランに入るとか?」


ミラがアイリとアンナに質問する。


「確かに!ようやく、2人で過ごせる時間が出来たわけだからな」


とレンも気になった。


「あんまり良く考えてないんですよね。どうしよっか?お姉ちゃん」


「そうだね……正直、どこかのクランに入るとかは当分遠慮したいね」


アンナの反応は当然と言えるだろう。彼女にも心を休める時間が必要だ。





「なんだったら新しいクランを作っちゃえば良いんじゃない?」


とルティアがご飯を沢山頬張りながら答える。レンは、リスかお前は!と言いたいのを必死で堪えた。


「クランを名乗るにはメンバーが10人は必要になるんだ。2人からでは道のりが遠すぎるよ」


とアンナが答える。確かにクランを名乗るくらいだから少しは条件があるよなとは思う。


「ここにいる全員で登録したら6人だから、あと必要な人数は4人よ。適当にやれば集まるわよ」


とルティアは、自分達もクランに加え後は誰かを雇う形を取ろうと考えたようだ。


「待て待て、俺達はずっと迷宮都市にいるわけじゃないんだぞ?」


「別に強制で都市にいなきゃいけないってわけじゃないでしょ?それにこれでレンへのクランの勧誘も無くなるわ」


と言う。


「それ良いかも!」


とミラも同意を示している。



「まぁ、都市を出ててもクランのメンバーから消されることはないんだが、良いのか?」


とアンナが聞いてくる。助けてもらった上にここまでお世話になるのは申し訳ないと思っている。


「いや、別に問題ないよ。俺も勧誘とか無くなれば気分的にも嬉しいからな。それに知ってる人がクランメンバーなら安心だ」


とレンは答える。


「それで、残り4人はどうやって集める?」


とエリアスが言う。


「そうだな……誰か友達とか?」


とレンが提案してみると、シーンと静まり返る。みんな、友達がいないようだ。


「良し、次の案を考えよう」


レンはすぐに切り替えるのだった。




「やっぱりギルドとかで募集するしかないか……」


ああでもない、こうでもないと会話を続けて結局は、その結論になる。


「クランにレンがいるってなると、とんでもないことが起こりそうな気がするなぁ…」


とエリアスが呟いている。


「まぁ、面接とかして良い人に絞るとしようか…」


結局、自分の存在で面倒になるのかと思う。


『マスター、ファイトです!』


とナビゲーターさんの声援に励まされるのだった。



次の日、ギルドにはある紙が貼られていた。内容はクランを作るためのメンバーの募集というものだ。内容自体は、良くある物であり普段なら条件などを見て皆決める物だが、今回は紙を提出したものに問題があった。


4人ほどメンバーを集めたいと思っている。という主旨で、最後の方にレン・オリガミと名前が載っている。


発見したクランに入っていない冒険者がすぐさまギルドの受付に向かったのは言うまでもなかった。



ギルドに今回のメンバー募集の仲介をしてもらったレン達はギルドの端でその様子を眺めていた。かなりの人が受付に向かっており、受付嬢が大変そうだなと思った。


「結構応募がありそうだね」


と隣でエリアスが言う。


「そうだな…これは面接がしんどそうだ」


今回、条件としてクランの本拠地の家事などを頼める人も募集しているため、一般人の応募も見込める。


募集の締め切りは明日にしてあるのでどうなるだろうかと思いながらレンは待つのだった。




そして翌日、ギルドの人に話を聞くと、100人以上の人から応募があったようだ。


倍率は25倍を超えている。


「俺が受験しようと思ってた大学より、とてつもなく倍率が高いな…」


ギルドには、希望者の身辺調査も頼んであるので数日中には面接を行うことになる。お金を払えば色々とやってくれるので便利な機関だなと思う。



「とりあえず、勧誘も消えて楽になりそうだな!」


とレンは、今は喜びを噛みしめるのだった。

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