110話光明の魔女と正体
レンとエリアスが転移で去った後の平原……そこに1人の女性の影があった。
「さっきまでここにいたのは…エリアスとあの子ね。まさかこんなにすぐに遭遇するなんて」
女性は、光明の魔女と言われている人だ。常にスティグマの捜索に時間を費やしている人物でもある。
「エリアス達にも伝えた方が良いわよね。声をかけるしか無いわよね……迷宮都市にスティグマの息がかかった者がいることを!」
光明の魔女は、迷宮都市の方向に目を向ける。スティグマの捜索を続けているうちに発見したのだ。スティグマが迷宮都市で企んでいることが……
「まぁ、今回は、筆頭は出てこないだろうけど、スティグマ絡みを放置しておけないからね」
あくまで息がかかった者がいると言うだけで、スティグマ自体がいるわけでは無いのだ。放置しても大きな被害は今は出ないだろうが、小さな被害はやがて大きな窪みになる。
「彼らに助けを求めよう。エリアスなら手伝ってくれるだろうし、それにもしあの男の子が蓮なら……」
そんなことがありえるだろうかと思いつつも自分の勘を信じる。
「絶対に解決するから……見守っててね」
と言いながら光明の魔女がポケットから取り出したのは、この世界には存在しないもの、スマホだった。そこには、大切な人が待ち受けになっている。
「行きましょうか…迷宮都市に」
と言いながら歩き出すのだった。
レン達は、37階層から攻略を再開する。
アイリも含めての5人での攻略だ。
「なんでも、とうとう真紅の宝剣が50階層のボス部屋を見つけたらしいですよ?」
とアイリが言う。少し不安そうな様子が窺える。
「とうとう、見つかったのね。最近、街でも話題になってたから」
「さすがに今から全力で50階層を目指すのは難しいか…ちくしょう、1番最初にクリアしてみたかったなぁ…」
ルティアの反応に、ミラが続く。50階層をクリアしたかったようだ。
「まぁ、今回は諦めろよ。完全攻略されたわけじゃないんだから」
とレンが言う。
「そうだね。残念だけど諦めも大事だよ」
レンの意見にエリアスが同意する。
「それはまだわからないわ。私の直感では真紅の宝剣の攻略は失敗するわ」
目の前に女性が立っていた。魔法使いと見て取れる格好をしている。
「誰だ」
レンが女性の方を向いて、声を出す。するとレンの肩をエリアスが掴む。
「待って、レン!この人は、私の恩人!」
「まさか!この人が光明の魔女…」
「うん、突然すぎて私も驚いてるけど」
目の前の女性はただ立っているだけだ。だが強い存在感を感じた。
『マスター、彼女は我々と同等以上の力を持っています。注意してください』
「ああ、気をつけるよ」
「久しぶりね。エリアス…ごめんなさいね、私は何も出来なかった」
エリアスを見ながら光明の魔女は、謝る。
「そんなことない。私は、もう救われたんだから!紹介するね、この人が私を救ってくれた人レン・オリガミ」
とエリアスがレンを紹介する。
「ありがとう、レン。エリアスを助けてくれて」
光明の魔女が言ってくる。レンはなぜか親近感を感じる。
「いえ……」
変な感じがするのだ。俺はこの人を知っているかのような……
「ようやく、確信に変わった。どうやってかわからないけどやっぱりあなたは…」
光明の魔女がレンを見つめながら呟く。レンにも感じるものがあった。
「まさか俺やミラと同じなのか……」
感覚的に転移者であるような気がする。
「エリアス……私の名前をレンに教えてあげてくれるかしら?」
「え?うん、わかった。レン、紹介するね。私の恩人でレミ・サトウっていうの。光明の魔女って呼ばれてる凄い人なんだ!」
と紹介してくれる。光明の魔女も久しぶりと言っているがレンは反応できない。
「う……そだよな。本当に……異世界に?」
レンは頭がついて行かなくなっていた。
レンは、この人を知っている。いや、知らないはずがない。名前が偶々知ってる人と同じということはないだろう。
心臓の動きが早まるのを感じた。
「どうしたのレン?………待って、そんなことあるの?…レンの元の名字もサトウって言ったよね」
突然様子が変わったレンに対して、エリアスもあることに気づき、驚く。
「え!まさかこの人って…」
「どういうことかしら?」
ミラは感づいたようだ。ルティアは、わかっていないようだが…
「彼女は、レミ・サトウは……いや、佐藤令美は…」
レンは一旦言葉を区切る。こんなことが起ころうとは思わなかった。あまりにも突然すぎて驚きしかないだがここまで来ると言うしかない。
「この人は俺の本当の母親だ!」
迷宮37階層にレンの言葉が響く。




