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企業選び2

「正直、企業を選べるお前が羨ましいぜ」

 レイモンドのぼやきを半分聞きつつ、GF系列の企業を探す。

「普通、所属企業なんぞ先輩リンクス乗りの紹介かオペレーターの宣伝で決まるもんだ」

 盟主の『GF』は、ゲーム中と同じく実弾兵器と実弾装甲がずば抜けて優秀な代わり、パンドラボックスやシールドなどのエネルギー周りが苦手。おまけにゲーム中では描写されていなかったけれど医療関係は苦手らしい。没。ただ、リンクス技術を盛んにノーマルへ転用しているらしく、ノーマル乗りの傭兵からの評価は非常に高い。ギルドランクが低いうちは彼らとの共闘も多いらしいので、共通の話題を持つためにもこの企業のことは後から詳しく調べよう。

「中にはスカウトなんて例外もいるが、まあこれは特別だな。まずない」

 『D&Cコーポレーション』はセンサーなどの電子機器と長距離実弾兵器が優秀。GF系列のリンクスのパンドラボックスはだいたいここ製らしい。医療技術もそこそこ持っているものの、グループ外への影響力が少なすぎる。ゲーム知識によると、それは『Ⅳ』時代に一度壊滅した結果、GFの傀儡となることで生き延びた影響らしい。ここに入ればお抱えになるだろう。その代わり、私の身体を研究した結果はGF系列内でしか共有されない気がする。それは嫌なので没。

「俺もGF所属になれたのも、先輩のお陰だ。だから、正直言ってお前がGF系列を選ぶ気になってくれたのは凄く嬉しい」

 『Xスペース』はミサイルしか作っておらず、『NT』は電子機器専門。『エブリデイ』は薬剤専門。没。

「お勧めはGFだな。何と言っても特典で弾薬費と修理費が安くなるのが魅力的だ」

 蓮重工。前世で聞き馴染んだ日本語の企業名。まごう事なき日本の企業であり、ゲーム中と変わらず変態企業である。武装はグレネードしか無く、装甲は実弾優先の装甲の筈なのにレーザーなどのエネルギー兵器すら弾く。ゲーム時代は「迷ったら蓮重工」と言われる程の防御力を誇るが、私の苦手なタンク脚しか製造していない。もちろん、それに合わせて他のパーツも重量級。そして何より、しばしの私の乗機になる『アント』と互換性が全く無い。没。

「レイモンドさん」

「どうした? 泣きそうな顔して」

「私の希望に合った企業が皆無です」

「お、おう……」

 私の嘆きに、レイモンドは黙り込んでしまった。

 非常に不味い。何が不味いって、ヘロデ系列の銀行からお金を借りれたのは、どこかの企業の所属になる、という約束のお陰なのだ。

「……ともかく、何を希望にしたのか言ってみろ」

 その優しい言葉に、私は指を折りながら言った。

「まず、私の身体の研究を公開しそうであること」

「ふむ」

「次に、アントのパーツに互換性があること」

「続けて」

「最後に、弾薬費や修理費が安くなること」

「……なる程。条件を絞ったのは偉い」

 レイモンドは膝を打って言った。

「それなら探す条件はひとつだけだ」

「……え?」

 私は、レイモンドの言ったことが理解出来なかった。

「え? 三つなのに?」

「ああ、説明するぞ?」

 どこか嬉しそうに話し出したレイモンドの話を真剣に聞く。

「まず、一つ目の、お前の身体の研究だが、これは無理だ」

 その言葉に呆然とする私に、レイモンドは優しく説明してくれた。

「『企業』ってもんは利益を追求するもんだ。そんな連中が、『ホープ汚染の特効薬』なんて間違いなく儲けになるもん、手放すと思うか?」

 はっとして首を振ると、レイモンドは嬉しそうにうなずき、私の頭を撫でた。

「そういうことだ。で、二つ目の、アントに互換性がある、だが、まあこれも無視していいだろう」

 今度は言っている意味自体が良く分からなかった。

「というのも、アント自体古い機体だ。性能としてはブースト以外はハイエンドノーマルと大差ねえからな。ある程度稼いだところで企業側から機種転換を勧められるだろうし、そうした方がいい。だから、無視だ」

 なるほど、と納得してうなずき、言う。

「ってことは、弾薬費や修理費が安くなるところを探せばいいんだね?」

 「そうだ」と言ったレイモンドはとても嬉しそうだった。

「じゃあ、どこが該当するか分かるか?」

「うん! GF、D&C、蓮重工だね?」

「正解!」

 思わず飛び上がりレイモンドとハイタッチし、その子供臭さに恥ずかしくなって椅子に座り直す。

「なら蓮重工にしなさい」

 そのタイミングで、目頭を押さえながらサラがこっちの部屋にやって来た。

「サラ、どうだった?」

「サラさんお疲れ様です」

 「ええ、ありがと」とサラはレイモンドが座ったまま引いた椅子に座る。

「正直、シーナが企業に入ること自体反対したい気分よ」

「そんなに酷いのか?」

 レイモンドの疑問に、サラは答える。

「ええ。どの企業もシーナをどう扱うか意見がまとまってない。ヘロデなんてあれだけ検体持って行きながら分裂状態よ。断るのも当然ね」

 私は、その答えをゆっくり消化するにつれ、顔が引きつっていくのを感じた。

「GFもD&Cも、分裂まで行かずとも対応が割れてる。担当がいい方に当たればいいけれど、悪い方に当たれば最悪ね」

 そんなに酷いのか。私を研究すればホープ汚染の恐怖から解放されるかもしれないのに。

「うわあ……」

 絶句する私をよそに、レイモンドは尋ねた。

「で、蓮重工が良いのは、何でだ?」

「単純。GF系列でそこだけシーナを欲しがる姿勢で一致してるから」

「なるほど」

 納得した様子でレイモンドは頷いたけれど、私はサラの言葉に引っかかりを覚えて口にした。

「GF系列で? ってことは他の系列には一致して欲しがる所があるのですか?」

 するとサラは出来の良い子を見るような笑みを浮かべながら言った。

「その通り」

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